韓国には“トルボミ”という職業がある。日本語に置き換えると、ヘルパーや、家政婦、ベビーシッターなど幅広い職業を意味する言葉で、家事の手伝いや身の回りの世話をする人たちのことを指す。韓国では最近、このトルボミたちの労働環境が問題視されつつある。というのも、高齢者の身の回りの世話するトルボミ女性たちの多くが、勤務先でセクハラやストーキング被害に遭っているという事実が明らかになったからだ。
京畿道家族女性研究院がこのたび発表した、トルボミサービスに従事する女性800人を対象に行ったアンケート調査によると、高齢者の世話をするトルボミ女性のうち、実に13.3%が、過去1年の間にセクハラまたはストーキング被害に遭ったことがあると回答している。
今回のアンケート調査には、彼女たちの経験談も寄せられており、「キッチンで仕事していると体をまさぐられた」「おじいさんがベッドに横になって『横で寝てごらん』と言われた」などと告白している。
ちなみに、赤ちゃんや、産後間もない女性の身の回りの世話をするトルボミ女性たちが、この手の被害を受けていないのは言うまでもない。同アンケート内の「勤務先で(人権を)尊重されているか」という質問に対し、平均80%以上が「尊重されている」と答えている。一方、高齢者宅で働くトルボミ女性のうち約40%が「尊重されていない」と回答した。今後、この高齢者の世話をするトルボミ女性たちの労働環境は、高齢化社会の新たな課題として浮上しそうな気配だ。
韓国では高齢化が本格的に進み、ちまたでは「100歳時代に突入した」とささやかれ始めいる。今回のトルボミへのセクハラは、そんな社会的背景の中で起きているひとつの負の側面なのかもしれない。なお、韓国では、高齢者の性犯罪件数がここ数年で急増。2000年にはわずか128件だったが、10年後の2011年の段階で約8倍、991件が摘発されており、決して珍しいものではなくなってきた。
一方、100歳時代を前向きに捉え、国民の意識変化を積極的に報じるメディアも増えている。例えば、バラエティ番組『DonWorld』では、コメンテーターが高齢の親を持つ子どもたちの意識の変化に言及、次のように話している。
「最近、伴侶を失った高齢の親同士が新たに異性と恋をすることについて、寛容に受け入れる子どもたちが増えてきた。中には、子ども同士で率先して話し合い、一緒に暮らすことを奨励したり、サポート体制を相談し合うケースもある」
また同番組では、専門家たちが「恋をすると健康にもよい」「70歳以上の高齢者の多くが、健康であれば週2回以上はSEXしたいとアンケートに答えている」「ゲートボールを楽しむ高齢者の男女比率は1対40で、女性が圧倒的に多い。モテたい男性はゲートボールを始めよう!」など、100歳時代の実態や楽しみ方を積極的に助言する姿が目立った。
何かと問題視される高齢化現象だが、韓国では新たな犯罪への対処や、時代に合った人生の豊かさを追求する営みが徐々に試められているようだ。
(取材・文=河鐘基)