上野動物園では月に10~20頭の遺体が出るそうです。いつも元気な動物たちの姿しか見ていないだけにちょっと驚き! と思った人もいると思いますが、これは、カエルや魚などもともと寿命の短い仲間も含めての話。
ところで、亡くなったそれら動物たちはどうなってしまうのでしょう?
通常、動物園の動物が亡くなると、ほぼすべてが検死解剖されます。死因を特定することで、今後、同じ原因で亡くなるのを防ぐためです。
上野動物園の場合は園内に動物病院があり、そこで解剖が行われています。もちろん、カエルや魚もです。
解剖後は、必要に応じて剥製や骨格標本といった学習素材になります。希少種の場合は、未来での「復活」を期待し、生殖組織が冷凍保存されることもあるそうです。
後世に残される展示物等以外は焼却されます。ちなみに、上野動物園では専門の業者に依頼しているそうです。
「政教分離の原則」の観点から特定の宗教による供養は行わず、遺灰も廃棄物として処理されるのだとか。
ただし、園内には「動物よ安らかに」の碑文が刻まれた慰霊碑があり、秋彼岸の時期になると動物慰霊祭(無宗教献花式)が行われています。
ジャイアントパンダなど人気者が亡くなったときは例外で、臨時の献花台が設けられこともあります。
動物園の動物の多くは、人間のように容体悪化の前兆もなく、突然死するパターンが多いのだそうです。これは、弱っているそぶりを見せるとやられてしまうため、いまわの際までピンピンしている(フリをする)、野生動物の本能からくるもののようです。
かつて上野動物園では、サイが開園中に突然死したことがあったそうです。巨体のサイのこと、運搬困難のため、急きょビニールシートでオリをおおい、閉園後にその場で解剖を実施したそうです。
ところで、葛西臨海水族園のクロマグロが大量死したというニュースがありましたが、「あのマグロたちはどうなるの?」と、疑問に思った人も多いのではないでしょうか?
同水族園の担当者の方にお話を伺ったところ、これもやはり、クロマグロに限らず、死因を特定すべくすべてが解剖されるようです。つまり、大量死したクロマグロは一匹残らず死因解剖されたわけです。
ただ、クロマグロの場合は死因が特定できなかったため、一部は冷凍保存され、あるいは専門機関に送られ今も特定が続けられているのだとか。
それ以外のクロマグロも含め、検死解剖を終えたものは、焼却ではなく、コンポスト化されて、園内の樹木の肥料として活用されているそうです。
虎は死して皮を留め、と言いますが、動物園の動物たちは、ある意味それ以上とも言えるいろいろなことを世の中に与えてくれていたのです。
文・鈴木ゆかり
※参考
恩賜上野動物園(東京都台東区上野公園9-83)葛西臨海水族園(東京都江戸川区臨海町6-2-3)「愛するワンコは庭に埋めるな」(小泉顕雄 著/日経BPコンサルティング)