ユニクロ、期待の新商材で「ありえない」失態 | ニコニコニュース

ユニクロが12/11(金)付の新聞に折り込んだ広告チラシ
東洋経済オンライン

年の瀬が徐々に迫ってきた12月11日(金)。私が愛読している新聞の朝刊と一緒に、年末商戦をにらんだチラシが束のように挟み込まれてきました。その中には、ファーストリテイリングが運営するカジュアル衣料品店「ユニクロ」のそれもありました。新聞を購読している読者の皆さまのご自宅にも、同じ内容のチラシが届いたでしょう。

「今週もやっぱり記載されていない。状況は変わっていないな」

毎週末、休むことなく新聞に挟み込まれるユニクロのチラシ。今週は「Xmas(クリスマス)ギフト特別号!」と銘打って、セーターやコートなどの冬物衣料を中心としたお買い得品の数々が掲載されています。ただ、今週入ったユニクロのチラシに私が着目したのは、衣料品とは別の商材。ユニクロギフトカードについての記載です。

■「ユニクロがギフトカードを投入」のはずが

2週間前の11月27日(金)。各家庭に届けられたユニクロのチラシには、目立つ赤字や金文字を使って次のフレーズが入っていました。

「ギフト始めました!」

「もらった人が自由に選べるギフトカード誕生!」

「本日11/27(金)販売開始!」

これはユニクロがこの年末商戦をにらんで打ち出した新しい商材です。ユニクロのお店やインターネット通販での利用を前提とした1000円、3000円、5000円の3種類で構成する、主には贈答需要をにらんだプリペイドカードの一種です。

これからのクリスマスから年末年始シーズンにかけては贈答品やプレゼントを手にする機会が多くなります。そのラッピングの中に入っているのは、どんなものなのか誰もが胸躍らせるでしょう。

一方で、自分で好きな商品を好きなタイミングで選べる需要も小さくありません。中元・歳暮や結婚式の引き出物など、多くのシーンで「カタログギフト」の利用が喜ばれている事実がそれを証明しています。小売り系ではイオンやセブン&アイ・ホールディングスなどが、自社系の店舗のみで使える商品券を販売していますが、ユニクロとしてはこうした専用ギフトカードの展開は初めてで、関係者もファンも待ち望んでいたはずです。

11月末から販売開始というタイミングはクリスマス・年末商戦に一歩先んじただけでなく、12月上旬に支給が始まる冬のボーナスで消費者の財布の紐が緩んでくるのを狙ったであろうことは、言うまでもありません。

店頭に並ばなかったギフトカード

ところが、このユニクロのギフトカードは今になっても販売開始されていません。翌週12月4日(金)のチラシではギフトカードについての記載が消えてしまい、12月11日(金)もその状況は変わっていませんでした。ギフト関連で記載されていたのは、「ギフトラッピング承ります」の部分ぐらいでした。

このユニクロギフトカードの存在が明るみになったのは、まず新聞報道でした。日本経済新聞が11月23日(月)付で「ユニクロ、ギフトカード初導入 1000~5000円の3種」と報じます。記事内容を読むかぎり、ユニクロが公式に発表したものではなく、日経新聞が独自にすっぱ抜いた「特ダネ」のようでした。

■チラシに記載しているのに「店頭にない!」

その後、11月27日(金)の新聞折り込みチラシによって、一般ユーザーの知るところとなります。かねてからユニクロヘビーユーザーの私は、11月27日(金)にチラシを確認した後、それならばとユニクロギフトカードを買い求めるため、その日の午前中に東京都内のユニクロ店頭へ行ってみました。ところが、どの店もギフトカードを売っておらず、「無期限の発売延期」になっていたことを知りました。

新宿西口店やビックロ店、銀座店、六本木ミッドタウン店などを回ってみたところ、店舗スタッフから、「取引先の不手際によって販売できなくなり、発売がいつになるかわからない」という趣旨のことを説明されたのです。

後で調べてみてわかったことですが、ユニクロはこれに先んじて11月25日(木)に自社サイト上で「ユニクロギフトカード 販売延期のお知らせ」というお知らせを公開していました。

そこには「ユニクロギフトカードは11月27日(金)に発売するはずだったが、11月24日(火)にギフトカードの運営会社から製造上の不備があることを知らされ、急きょ販売を延期することになった」「11月27日付の折り込みチラシにギフトカードの販売情報が掲載されている」という趣旨のことが記され、謝罪の言葉がつづられていました。

ただ、ネット検索をしてみたところ、この件については一部の専門メディアが報じているぐらいで、大手新聞や通信社、東洋経済を含む経済メディアなどで目立った記事になっていません。

柳井会長の逆鱗に触れる

この一件で、問題を起こしたギフトカードの運営委託会社であるJCBは、ファーストリテイリング柳井正会長兼社長の逆鱗に触れたのではないかという話がまことしやかに話されているようです。「今後の運営がJCBとは切り替えられたうえで、再度、発売を探るシナリオもある」とユニクロ関係者はささやいています。

とはいえ、私と同じように11月27日(金)のチラシを見てユニクロの店頭に行った人は少なくなかったでしょう。ちょうど給料日直後の週末だったということもあります。実は先にホームページ上でお詫びが出ていたことに気づいた人なんて、ほとんどいないはず。チラシで大々的に発売を宣言しておきながら、その新商材が店頭に行ってみて買えなかったのです。

事情はどうあれ、これはチラシを見て、ユニクロギフトカードに期待して店頭に訪れた消費者からみると「ありえない」失態です。筆者の知人で、とある小売業のクレーム対応部署に籍を置く人物から言わせると、「チラシ広告を見て店頭まで足を運んでいただいたのに、『発売中止』とあっては、交通費の負担を迫られても仕方のない事故」という参考意見もあるくらいです。

■ユニクロに落ち度はなかったか

ユニクロ本部としては、満を持してこのギフトカードの投入計画を練り上げたはずです。発売直前のタイミングになって日経新聞にすっぱ抜かれこそしたものの、基本的には秘密裏にコトを進めて一気に実行しようと動いていたように見えます。

ただ、ギフトカードの運営会社から製造上の不備を知らされたタイミングでは、もうチラシが刷り上がっていたのですから、発売に向けた段取りとして、勇み足の部分はなかったでしょうか。不手際を起こした運営カード会社との間での情報交換やスケジュール調整などの部分で詰めの甘さ、落ち度がユニクロ側に一切無かったとも言い切れないと思うのは、筆者だけではないはずです。