銭形は一生ルパンを捕まえられない!? インターポールが悪党を逮捕できない理由とは | ニコニコニュース

マイナビスチューデント

アニメルパン三世。宿敵ともいえるインターポールの銭形警部が手錠を振りかざすシーンがお約束になっていますが、手錠どころかタイホもできないのはご存じでしょうか?

インターポールはいわば「協定」のようなもので、おもな役目は国際犯罪者の「情報」の収集や交換。インターポールという「警察組織」が存在するわけではありませんし、世界を飛び回る捜査官もいません。アゴの割れた警部が「今日こそタイホする!」と騒いでも、残念ながら永遠に叶わぬ夢なのです。

■タイホできないインターポール

インターポールやICPOで知られる「国際刑事警察機構」が誕生したのは1923年、現在は190カ国によって構成される巨大な組織です。「ルパン三世」では、世界中どこへもインターポールの銭形警部が追いかけてきて、手錠をかけても逃げられ……ただ悔し涙、がお約束になっていますが、これは物語のなかのできごと。実際は捜査どころか逮捕する「権利」もないのです。

「警察機構」の名から、世界最強の警察をイメージするかも知れませんが、ICPOの基本はあくまで「協力」で、おもな仕事は、

 ・国際犯罪(者)の情報の収集や交換

 ・犯罪対策のための国際会議の主催

 ・指名手配書の発行、逃亡犯の発見

 ・行方不明者の発見

 ・盗品の発見

など地道な作業が中心です。「国際」の名でありながら、世界中どこでも活動できる捜査員はいませんし、そもそも「捜査権」もないので、犯罪者を見つける「支援」と考えるべきでしょう。

同様に「逮捕権」もないので、たとえば、

 ・A国のひとがB国で犯罪を起こす

 ・B国から国際指名手配を受ける

 ・A国で暮らしている

の場合、見つけたらB国に連絡するなど「協力」はおこないますが、A国の法に触れない限り、「国際指名手配」を理由にA国の警察が逮捕することはありません。ましてC国でドロボウしたからといって、B国の警察がC国に乗り込みタイホ! は現実的には見られない光景なのです。

あばよ! とっつぁん!

■「引き渡し」を待つのが仕事?

それでは海外に逃亡した犯罪者は「逃げ得」なのでしょうか? インターポールの警部が逮捕しに行くことはできませんが、代わりに犯人を引き渡してもらったり、犯罪者のいる国が「代わりに処罰」することができます。

国際指名手配された場合、

 ・A国の犯罪者をB国で発見

 ・B国が身柄を確保 → A国に送る

が基本で、とくに「犯罪人引き渡し条約」を締結した国同士ではスムーズにおこなわれやすくなります。

また、「B国の犯罪者」として扱う「代理処罰」という制度もあり、B国の警察が逮捕、裁判や刑罰もすべてB国のルールに従う方法ですが、法も文化も違い、手続きもタイヘンなため、重罪のときにおこなわれる特別ルールと呼ぶべきでしょう。

もし、銭形平次を先祖に持つアゴの割れた警部が実在したら、「神妙にお縄を頂戴しろ!」と世界を飛び回る必要はまったくありませんし、したくてもできません。日本に送還されるのを待つか、代理処罰の申請をするか、いずれにせよ「吉報を待つ」になりそうです。

拳(こぶし)で拭く涙、明日こそ乾け!

■まとめ

 ・インターポールで知られる「国際刑事警察機構」は、一種の「協力体制」

 ・世界中を飛び回って犯罪者を捕まえる「捜査官」は存在しない

 ・逮捕権もないので、タイホする!と手錠を振り回しても効果はない

(関口 寿/ガリレオワークス)