中国・安徽省メディアの安徽網によると、同省合肥市蜀山区内で9日午前、建築工事現場で働く農民工9人が、未払いの給料の支払えと雇用側に要求して紛糾した。うち8人がビル6階にのぼり「支払わないなら飛び降りる」と言い出した。警察の説得に応じて思いとどまったが、警察は同8人を含む9人に「公共の秩序と安全を脅かした」として、最大で7日間の行政拘留の処罰を科した。
中国は戸籍の移動の自由を認めていない。特に問題になるのは「城市戸口」と「農村戸籍」の差別だ。農村部出身者を地元に固定し、食料生産を確保するための政策だったが、1990年に経済成長が本格化すると、都市部で労働力不足が発生した。そのため当局は「臨時戸籍」の条件を緩和し、農村部出身者が都市部で職に就くことを用意にした。
現金収入を求めて長期間にわたって都市部に滞在する農村出身者も増えたが、ほとんどの場合、仕事は建設工事現場や清掃、小さな飲食店や商店、都市部住民の家事手伝いなどで、日本風に言えば3K(きたない・きつい・危険)の職場だ。
農村部出身で臨時戸籍を取得して都市部で働く者を農民工などと呼んでいる。雇用側が彼らの知識の無さや立場の弱さを悪用して、約束通りに賃金を支払わない例も、問題になっている。
合肥市蜀山区内で発生した紛糾では、マンション建設業者が工事を建築会社に請け負わせ、建築会社がさらに、「作業員頭」に作業を請け負わせた。中国でよくある方式で、作業員である農民工の賃金は建築会社から「作業員頭」に渡され、「作業員頭」が作業員に賃金を配る。
農民工らは、長期間にわたり賃金が未払いと主張。「争いが発生しえている」と9日朝に通報を受けた警察は、建築会社の代表者を出させて話し合わせたが、「過激な行為」が発生したので双方に現場を離れるよう命じた。
すると午前11時16分になり、建築中のマンションの6階に、農民工と農民工の妻の計8人がのぼり、「賃金を払わないと飛び降りる」と言っていると通報があった。
現場には多くの見物人が集まった。消防も到着して、万一の事態に備えた。警察は、8人の別の家族も呼び寄せるなどで説得をした。相当に時間がかかったが、8人はあきらめてマンションをおりた。
警察は8人と、騒ぎを扇動したとみなした1人の計9人の行為を「公共の安全に危害を加え、公共の管理秩序を妨害した」と判断。治安管理処罰法の適用対象になるとして、5日から7日間の行政拘留の処罰を科した。
行政拘留とは、比較的軽微な法律違反について、裁判を経ることなく警察など行政の判断で科すことのできる処罰のひとつ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)