「ED(Erectile Dysfunction)」という言葉、男性なら一度は耳にしたことがあるのではないか。日本語で「勃起機能の低下」を意味し、日本の成人男性の4人に1人はこの症状に悩まされているといわれる。1999年に日本で認可されたファイザーの「バイアグラ」はED治療薬として世界中で服用されている。一方で不正入手・不適切服用による死亡事故がしばしばニュースになった。発売開始から15年が経過し、服用者は正しい知識をもっているだろうか――。
EDに関する調査実行委員会は、勃起機能の低下に悩む男性500人に対してアンケートを実施し、その結果を2015年12月10日に発表した。ED治療薬を服用した人の70%以上が、「いつもより良い効果を感じた」と回答していることが分かった。一方で、半数以上は「薬の特性」をきちんと理解せずに服用している危険な実態も明らかになった。
「薬の特性は全然知らないけど使っている」が4.8%も調査はインターネットを通して行われた。EDの自覚がある、全国の30歳から59歳までの男性500人が参加した。
最初の質問は「あなたはED治療薬を服用して体感できる効果を実感しましたか?」というもの。「いつもより良い効果を感じた」と回答した人は71.4%もいた。以下、「特に実感がない」が19.6%、「EDとは関係のない効果を感じた」が5.0%、「いつもより悪い効果を感じた」が4.0%と続く。本来の効用を感じられない人は合計で28.6%もいた。
実行委員会は次に「あなたは、以下の『ED治療薬』の特性を理解していますか」と尋ねた。服用のタイミングや発現時間は薬によって当然異なり、最大の効果を得るにはその特性と自らの体質をよく理解しておく必要がある。
ところが選択肢の中でも最も得票率が高かったのは、「なんとなく理解している」で41.0%だった。また「ほとんど理解していない」が7.4%、「まったく理解していない」が4.8%で、これら3つの選択肢の合計は53.2%に達した。
現在発売されている治療薬は3種類。先述のバイアグラは、この分野でのパイオニアだ。服用から15分ほどで効果が出始め4時間ほど効果が持続する。欠点は食事をすると効果が出にくくなること。日本で認められている用量は25・50ミリグラムの2種類で、海外で売られている100ミリグラムは日本国内では認可されていない。
ドイツのバイエル薬品が開発した「レビトラ」は2004年に発売された。食事の影響を受けにくく、用量は5・10・20ミリグラムの3種類ある。効果持続時間はあまり長くない。
アメリカのイーライリリーの「シアリス」は最新の治療薬だ。食事の影響を受けず、日常的に継続服用することができ、効果は約36時間持続する。用量は5・10・20ミリグラムの3種類と選択の幅も広い。副次的な効果として、血管の健康全般を促進する点も注目されている。
ちなみにレビトラの20ミリグラムはバイアグラの50ミリグラム、シアリスの10ミリグラムはバイアグラの50ミリグラムにそれぞれ相当する。用量が一緒だからといって同じ効果が得られるわけではまったくない。
ネットに出回る怪しげなED治療薬に潜む怖い話インターネット通販の隆盛は目覚ましい。薬事法の規定を抜きにすれば、国内外の医薬品が誰でも簡単に入手できる。今回の調査協力者の58.4%も「インターネットでED治療薬を購入したことがある」と答えている。
同じ医薬品なら通信販売の方が安くて得――そう考える人もいるだろう。それは危険な考えだ。ネット通販で流通しているED治療薬の約6割が偽造品ともいわれている。正規の商品に似せるため着色した疑似錠剤を使っていたり、製造工程や品質管理がいい加減だったり......。信頼性は極めて低い。
ED治療薬は精力剤や媚薬(びやく)、サプリメントではない。あくまでも勃起を正常化させる薬だ。患者の体質によっては別の薬を同時服用する必要がある。また亜硝酸薬(ニトログリセリン)などの心臓病の薬を服用している人は、血管が拡張しすぎて血圧が低下する恐れがある。
きちんとした医師の診断を受けたうえで処方を受けないと、体に悪影響を及ぼすことは言うまでもない。<J-CASTトレンド>