VAIOが12月9日に発表したノートパソコン、「VAIO S11」。11.6インチ型ディスプレーや、VGA出力、有線LAN、USB3.0×2、SDカードスロットなどインターフェースの充実、150kgf加圧振動や、90cm落下、本体ひねり、ペン挟みなどをクリアした高耐久性など、出張や出先で使うPCとして使うのに最適なモデルといえます。
しかし最大の特徴はLTE&3G対応のSIMフリーモデルが用意されている点。つまり格安SIMが使える点のはず。
microSIMが搭載可能。SIMスロットは背面にそなえています。
まず、格安SIMについておさらいしておきましょう。格安SIMを提供している会社はMVNOといい、ドコモやKDDIといった携帯キャリアから回線を安く一括で借り、それをユーザーに小分けすることでサービスを提供しています。
なぜMVNOが安く通信サービスを提供できるのかというと、提供する機能を絞り、サービス内容をシンプルにしているからです。高速でつかえるデータ通信量を絞り、端末代や音声通話、メールサービスなどをオプションとすることで、低価格での提供が可能なのです。
実際に利用する端末の対応周波数にもよりますが、ドコモの回線を借りてモバイルのサービスを提供している、いわゆる「ドコモMVNO」の場合、サービスエリアはドコモと同等となります。
「SIMフリー」についても解説しておきましょう。日本国内では、通常ドコモが販売している端末ならドコモのSIM、auならauのSIMしか動作しません。いわゆる「SIMロック」がかかっているのが一般的でした。一方、どのキャリアのSIMも使えるのがSIMフリーの端末です。VAIO S11は、後者に該当します。
ただし、注意点もあります。キャリアごとに利用している電波の周波数が異なるので、SIMを挿入する端末側で送受信できる周波数帯がこれに対応しないといけません。VAIO S11が対応している通信バンドは、LTEがバンド1、3、19、21(3Gが1、19)。ドコモが使用するメインのLTE帯、いわゆるプラチナバンドのバンド19(800MHz)を始めとする4つの周波数帯に対応しているため、SIMフリーとはいえドコモのMVNOが提供するサービスの格安SIMが向いているでしょう。
さて、格安SIMサービスでは通常、月ごとや日ごとにデータ通信容量に上限をつけた契約が主となります。ここでは例として、月額1000円前後の人気格安データ通信サービスの料金を見てみましょう。さらに、090/080/070番号の音声通話が使えるSIMもありますが、ここでは除外しています。
月1000円前後の人気格安データ通信サービスOCN
モバイル ONE 110MB/日コース
BIGLOBE
LTE・3G エントリープラン
ワイヤレスゲート
Wi-Fi+LTE SIM
(ヨドバシ)
IIJmio
ミニマムスタートプラン
BIC SIM
ミニマムスタートプラン
480円
プラン
920円
プラン
通信網
Xi/FOMA
高速通信
通信量
1日110MB
月3GB
無し
月3GB
月3GB
月3GB
制限時の
通信速度
200kbps
200kbps
250kbps
250kbps
200kbps
200kbps
月額料金
972円
972円
480円
920円
972円
972円
初期費用
3240円
3240円
3240円
3240円
3240円
3229円
SIMサイズ
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
制限解除
オプション
540円
/1日
(当日中)
324円
/100MB
540円
/200MB
540円
/200MB
216円
/100MB
216円
/100MB
通信制御
―
3日/
600MB
条件
非公表
条件
非公表
3日/
366MB
(低速時)
3日/
366MB
(低速時)
SMS
オプション
○
(129円)
○
(129円)
○
(150円)
○
(150円)
○
(151円)
○
(151円)
公衆Wi-Fi
~3月
○
○
○
×
○
最低利用期間
なし
なし
なし
なし
2ヵ月
2ヵ月
楽天モバイル データSIM 3.1GBプラン
U-
mobile
データ専用 ダブルフィックス
DMM
mobile
データSIMプラン 3GB
ニフティ
NifMo
3GBプラン
DTI SIM 1GBデータプラン
FREETEL SIM 使った分だけ安心プラン
通信網
Xi/FOMA
高速通信
通信量
月3.1GB
月1/3GB
月3GB
月3GB
月1GB
月100MB
/1GB等
制限時の
通信速度
200kbps
128kbps
200kbps
200kbps
200kbps
200kbps
月額料金
972円
734円
~972円
918円
972円
648円
322円/
538円等
初期費用
3240円
3240円
3240円
3240円
3240円
3240円
SIMサイズ
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
制限解除
オプション
324円
/100MB
324円
/100MB
540円
/500MB
864円
/1GB
216円
/100MB
664円
/500MB
518円
/1GB※1
972円
/500MB
410円
/500MB
648円
/1GB
100MB、1GB、3GBなどと使用量に応じた料金
通信制御
3日/
540MB
条件
非公表
3日/
366MB
(低速時)
3日/
650MB
3日/
366MB
―
SMS
オプション
○
(129円)
○
(162円)
○
(162円)
○
(162円)
○
(162円)
○
(151円)
公衆Wi-Fi
×
×
×
○
×
×
最低利用期間
なし
なし
1ヵ月
なし
なし
なし
BB.
excite
モバイルLTE 2GB(SIM1枚)
So-net PLAY SIM
mineo
シングルタイプ 3GB
UQ mobile データ高速プラン
プラン
2G/
month
プラン
4G/
month
ドコモ
プラン
au
プラン
通信網
Xi/FOMA
au 4G LTE
高速通信
通信量
月2GB
月2GB
月4GB
月3GB
月3GB
月3GB
制限時の
通信速度
200kbps
200kbps
200kbps
200kbps
200kbps
200kbps
月額料金
831円
842円
950円
972円
972円
1058円
初期費用
3240円
3240円
3240円
3240円
3240円
3240円
SIMサイズ
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
標準
microSIM
nanoSIM
microSIM
nanoSIM
microSIM
nanoSIM
制限解除
オプション
270円
/100MB
540円/100MB
2268円/500MB
4104円/1GB
162円/100MB
なし
通信制御
3日/
366MB
(低速時)
3日/
240MB
3日/
500MB
ー
3日/
3GB
3日/
1GB
SMS
オプション
○
(151円)
○
(151円)
×
○
(129円)
◎
(標準)
◎
(標準)
公衆Wi-Fi
×
×
×
×
×
×
最低利用期間
2ヵ月
なし
なし
なし
なし
なし
このように、「高速で使える通信量」が月3GB、月額料金が1000円前後というのが一般的といえます。
「制限時の通信速度」は、「高速で使える通信量」を使い切った場合の速度です。200kbpsというと、かなり遅いようにも感じますが、VAIO S11で考えるとメールチェック程度や、簡単なブラウジング程度なら可能でしょう。
“VAIO SIM”のメリットを考えるVAIO S11で忘れてはならないのが「VAIOオリジナル LTEデータ通信SIM」。VAIOがNTTコミュニケーションズと協業し、PCでの利用に特化したものとして提供するサービスです。利用期間が1年間/2年間/3年間と、年単位なのがめずらしいところ。
VAIOオリジナル LTEデータ通信SIM
プラン名
利用期間
高速通信利用可能容量
単品購入価格
S11同時購入価格
手間なし1年間プラン
1年間
32GB
1万4094円
1万2744円
手間なし2年間プラン
2年間
64GB
2万4624円
2万2464円
手間なし3年間プラン
3年間
128GB
3万5424円
3万2184円
このプリペイドプランのメリットはどこにあるといえるでしょうか。まず、利用期間が年単位の買い切りのため、ビジネスユーザーには経費として計上しやすい点が挙げられます。毎月のカード支払いなどだと会社で支払うのが面倒ですが、プリペイドなら見積もりを一回取って、支払えばいいわけです。
出張に行く1〜2週間だけ画像をダウンロードしたり動画を見たりしたいが、月に3GBだと引っかかってしまうようなケースにも有効です。不定期に、LTEで高速通信する機会(国内出張など)があるというユーザーならば、VAIOのオリジナルプランは有効です。
逆に、月々、決まった量だけ通信することが多いというユーザーならば、既存の格安データ通信サービスから選択するというのも手ですね。いずれにしても、利用法にあったサービスを選ぶことが肝心でしょう。
格安SIMが使えるPCは今後の必然となるかも仕事でクラウドの利用も当たり前になってきた今日、スマホやタブレットでできることも増えていますが、効率を考えるとやはりパソコンが最強の道具でしょう。いまやネットが不可欠となったパソコンなのに、LTE通信が手軽に利用できるノートパソコンというのは思いのほか少ないもの。常時接続が可能、料金プランを自分で選べるとなれば、そのメリットは大きいでしょう。格安SIMを使えるパソコンはますます需要が高まってくると思います。
VAIO S11のような格安SIMが使えるノートパソコンが、今後のスタンダードになっていくかもしれません。
VAIO S11のようなSIMフリーノートパソコンが増えれば、新しいプランの格安データ通信サービスが出てくるかもしれません。ビジネスユーザーはもちろん、筆者のような外出先で作業をすることの多い編集/ライター業の人にも、選択肢が増えるのはうれしいところ。
VAIO S11は、格安SIMが使えるノートPCを先導する存在になってほしいと思います。
「VAIO S11」の主なスペック
OS
Windows 10 Pro/Home/7 Professional
CPU
Core i3(2.3GHz)/i5(2.3GHz)/i7(2.5GHz)
グラフィックス
Intel HD Graphics 520(CPU内蔵)
ディスプレー
11.6型液晶(1920×1080ドット)
ストレージ(SSD)
128/256/512GB
メモリー
4/8GB
Wi-Fi
802.11a/b/g/n/ac
カメラ
92万画素 インカメラ
インターフェース
USB 3.0×2、USB Type-C/Thunderbolt 3兼用×1、Ethernet、VGA、3.5mm音声出力ジャック、SDスロット
無線WAN
3G対応(バンド1、19)
LTE対応(バンド1、3、19、21)
※Wi-Fi+LTEモデルのみ
駆動時間
最大14〜15.2時間(LTE通信時は8時間)
サイズ
284×190.4×19.1mm
重量
920〜940g
価格
12万3984円から
■関連サイト
VAIO S11