近年もフョードル・ドストエフスキーの『罪と罰』(新潮社)を独自の解釈で描いたり、“ババア”グッズが発売されるなど、唯一無二の“クソマンガ家”漫☆画太郎氏(『罪と罰』=漫F画太郎名義)。同氏を一躍有名にした『珍遊記 太郎とゆかいな仲間たち』(以下、『珍遊記』/集英社)が実写映画化され、来年2月27日に公開となることがわかった。ドラマも映画もマンガの実写化が乱立する昨今、伝説的ギャグマンガ『珍遊記』にもさまざまな反応が上がっている。
『ドラゴンボール』『ろくでなしBLUES』『ジョジョの奇妙な冒険』『SLAM DUNK』『幽遊白書』などが連載されていた1990年代前半「週刊少年ジャンプ」(すべて集英社)。この時期の同誌はいわゆる“黄金期”だったわけだが、その中でもパワフルさにおいて、まるで他の掲載作品に負けていなかったのが、ほかでもない『珍遊記』だ。
線が多く乱暴にも思える絵、『ドラゴンボール』など人気作のパロディの多用、放屁や脱糞といった終始見られる下ネタ……一言で言えば“クソマンガ”という形容がピッタリな作品。しかし、同誌を読んでいたちびっ子にとってセンセーショナルだったのは間違いなく、“クソマンガ”を褒め言葉に浄化させるまでに成功した、今なお語り継がれる革命的なギャグマンガだ。
その『珍遊記』が、マンガ実写化にとどめを刺すかのごとく実写映画化。監督は画太郎氏の『地獄甲子園』(集英社)をはじめ、多くのギャグマンガを映画化してきた山口雄大氏。脚本は画太郎作品とは相性が良さそうな、ホラーコントを得意とする人力舎のお笑いトリオ・鬼ヶ島のリーダーであるおおかわらと、『おそ松さん』(テレビ東京系)が高く評価される元ハガキ職人の松原秀氏が担当する。
そして、スキンヘッドにパンツ一丁のメインキャラクター・山田太郎には、実写映画『デスノート』のLや、TVドラマ『ど根性ガエル』(日本テレビ系)など、多くのマンガキャラクターを演じてきた松山ケンイチを抜擢。松山は「しばらくの間、僕を裸にしてくれる作品がなかったので受けさせていただきました」と受けた理由を明かし、「自分としては良く脱げたほう」と、太郎のチ○チンのように自信を丸出しにしている。
とはいえ、マンガだからこそ成立した『珍遊記』。さらに、当時だからこそ「週刊少年ジャンプ」での連載が許されたようなものの、今だったら絶対に無理な作風だろう。それだけに、ファンからの「映画は無理だろ」「無謀すぎる」「ババアの乳とか出せるのか」といった声が当たり前に聞かれる。もっというと、「監督が終わってる」「『地獄甲子園』で失敗しただろ」「こいつで笑ったことないな」など、監督の山口氏に嫌悪感を抱くファンも多い。
しかし、さっそく試写を観た映画ライターからは「へぼくないし、真っ当な作品」という声も届いている。それに作者・画太郎氏すらも「史上最低のクソ映画にしろって言ったのに、なんでこんなにおもしろくしたんだバカヤローッ!! 『◯◯の巨人』の監督に撮り直させろーーッ!!!」と太鼓判を押すではないか。あえて『◯◯の巨人』に言及はしないが、画太郎氏のこの言葉は強くファンに響いたようで、「漫☆画太郎のコメントw」「観るしかないな」「画太郎先生が言うなら」「逆にクソ映画であってほしい」など、惹かれる声が上がっている。
観る前に ブツブツブツブツ……と、言っていても何も始まらない。原作が「週刊少年ジャンプ」に風穴を開けたように、実写映画『珍遊記』も映画界に風穴を開けることに期待したい。
「ウ○コの乾燥だーー!!」(『家・なき子』より)