『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』(堀江貴文著、SB新書、税別800円)
ホリエモンは、本書タイトルのテーマを依頼された際、「正直、何もピンとこなかった」そうだ。むしろ、なぜ「本音で生きる」ことができないのか、の方がわからなかった。それは、自身が本音で生きている、という自負の裏返しだろう。実際、著者に対して「本音で生きている人」という印象を持っている人は多そうだ。
一方で、本音が言えない、本音で行動できない、という悩みや相談をネット上などで吐露する人は多い。そんな人達へ向け、著者はバンジージャンプの例を挙げながら、「本音で生きる」世界へ跳ぶための(バンジージャンプの)「ひもを渡す」としている。本書を読み、跳ぶかどうかは読者次第というわけだ。著者が「ひも」と表現した、読者へのメッセージとは何か。
「行動すること」の重要性序章から5章まで、章ごとにシンプルなキーワードで、著者のアドバイスをまとめている。たとえば、「やりたいことは、『今』やれ!」(4章)など。特に「5章」のキーワードは、著書が語ってきたことは「突き詰めればたったこれだけのこと」と言い切るほど重要なメッセージとつながっている。ここでは触れずにおく。
著者自身の経験や行動を交えた具体的なエピソードも、多数盛られている。「とにかく行動すること」の重要性を語る場面では、タレントで長距離走が得意だった猫ひろしさんが、マラソンのカンボジア代表として活躍するきっかけとなった話が登場する。
今後の活動について相談を受けた著者が、「カンボジア人になればマラソンの代表選手になれるよ」と提案したのだそうだ。カンボジア政府の関係者に「コネ」があった著者ならでは、の発想でもあったが、何よりも相談者本人が、すぐに「それいいすね」と受け入れ、実行したことを称えている。猫ひろしさんは最近でも、2015年12月6日にカンボジアで開かれた国際ハーフマラソンにカンボジア代表として出場し、自己新記録で準優勝する活躍を見せている。
こうしたエピソードも含め、全体的に底流としてあるのは、あれこれ考えたり、言い訳したりするよりも、行動に移すべきだ、という著者の強い思いだ。本人は「(バンジージャンプの)ひもを渡す」だけだ、としているが、本音で生きたいと願う人の背中を、そっと押している様にもみえる。