中国で最近、「100年マラソン」という言葉を耳にするようになった。中華人民共和国建国の1949年から100年目に当たる2049年までに、米国を抜いて世界覇権を握ろうとする中国の長期計画を表す言葉だ。
こうした中国の世界覇権計画において、日本の存在は無視できないもののようだ。日本の軍事・経済力を圧倒的に超える力を身に着けることは中国の「100年マラソン」にとって非常に重要なことと言える。中国メディアの人民網は8日付で、日中両国の経済力の展望について、中国社会科学院の関係者の見解を紹介している。
同関係者による日中両国の経済面における競争力を示すデータの扱い方は非常に驚異深い。関係者はまず過去から現在までの両国のGDP比の変遷を示している。1820年当時、中国のGDPは日本の11倍、1870年当時は7-8倍だった。1980年代に入り日本が逆転、GDPは中国の3.5倍となった。しかし、バブル崩壊後の長期的な経済低迷に加え、中国の急速な経済成長もあり、2010年には中国のGDPは日本を抜いて世界第2位となった。
2014年、中国のGDPは日本の2.25倍になり、同時に中国製造業の総生産量は米国の1.4倍となった。そしてアジア開発銀行(ADB)の11年の予測によれば、2050年に中国のGDPは日本の7倍近くになる。関係者はこうしたデータや予測に対し、「中国の100年マラソンを完走するとき、日本のGDPは1870年当時と同じ、中国の7分の1の状態に戻るということだ」と論じた。
同関係者によるデータの扱い方やコメントは、明らかに「100年マラソン」によって中国が世界の覇権を握る野心が浮き彫りとなっており、またその計画遂行の途上に「日本を経済面で圧倒する」ことも含まれていることがわかる。
一方、同関係者は2014年における日本の「技術輸出」と中国のそれとを比較し、日本は中国の54.4倍に達したと指摘、日本の技術力の高さは侮れないとしている。関係者は「日本は今後武器輸出を通して軍事産業の技術力をさらに強め、中国にとって軍事面での強力なライバルとなる」と見ているようだ。軍事・経済・政治において世界の覇権を握ろうとする中国の100年マラソンは、隣国日本の軍事・経済力を睨みつつ推し進めれらているとも言える。
同関係者はこうした中国世界覇権計画における日本との国際競争を論じつつも、最後に「領土をめぐる日本との対立について、利益をわが物とするような姿勢で取り組むのでなく、どちらも利益を得られる方法で解決に取り組むための戦いが将来的に待っている」と述べている。関係者が「戦い」と述べているとおり、こうした問題においてどちらも利益を得る方法で解決するのは非常に困難と言えるし、世界覇権を目指す中国にとってはなおさら譲れない部分が多いだろう。それぞれの国家が目指すものはまず第一に自国の利益だからだ。2049年、中国の世界覇権計画は実現しているか不明だが、それが真に全世界の利益となるかはさらに未知数だ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)