マウスの肺の中で酸素濃度を検知する細胞が、作られた場所から所定の配置に集まる様子を観察することに、理化学研究所の研究チームが成功した。この細胞は転移しやすい肺がんの原因にもなっているが、細胞移動の仕組み解明は、転移を防ぐ治療法開発につながると期待される。論文は17日付の米科学誌セル・リポーツ電子版に掲載された。
肺の気管支の表面(上皮)には、酸素濃度を検知したり、損傷の修復を助けたりする「神経内分泌細胞(NE細胞)」がある。この細胞は気管支が分岐する場所に集まっているが、多数ある分岐点に規則正しく配置される仕組みは分かっていなかった。
理研多細胞システム形成研究センター(神戸市)の森本充チームリーダーらは、マウス胎児の肺が作られる際、NE細胞が気管支内のどこに存在しているかを継続的、立体的に観察する技術を開発。ある特定のたんぱく質の活性化をきっかけに、NE細胞が気管支上皮のさまざまな場所で作られた後、分岐点に向かって自ら移動して集まっていく様子が分かった。
NE細胞は人にもあり、転移しやすさが特徴の「小細胞肺がん」の原因とされる。細胞の移動を制御する仕組みはまだ分かっていないが、森本さんは「転移を止めることができれば、治療の選択肢を広げられる」と話している。