「AppStoreで人気の「無料音楽アプリ」5つを通信解析してわかった音楽無料提供の仕組みとは」では、AppStoreで大人気の無料音楽アプリたちが、「中国の無料音楽ストリーミングサイトXiami.com」の音楽データを利用していると紹介しました(※この紹介記事先に読んでから、このページを読むのがオススメです。読まないとどうしてXiamiなんて謎のサイトを一生懸命分析しているのかが分からないし、驚きがいまいち共有できないかと)。
Xiamiについて、「中国の無料音楽ストリーミングサイト」という情報から、だいぶいろいろ言われてしまっているのですが、実際のところどうなのか、本当に無法地帯な違法サイトなのか、それについて調べたので紹介します。
注意点ですが、「Xiamiを利用するアプリの話」と「Xiami自体の話」を混同しないように注意してください。ここで説明するのは基本的に「Xiami自体の話」です。
中国語の壁が予想以上で調べるのにかなり時間がかかってしまいそうなので、調査結果としては、詰め切れていない状態です。ちょっとXiamiについて想像で非難されすぎていると思ったので、現状のままで調査メモを公開します。
Xiamiに関しては、以下の部分が気になりました。
また、どうしてこんなにコンテンツが充実しているのかも気になりました。検索APIをばっちり提供できて、検索結果が充実していると言われるからには、相当ちゃんとデータが入力されている必要があるはずです。とてもじゃないですが、違法アップロードのファイルがそこまで整理されているのは想像できません(後でその理由にも触れます)。日本語の楽曲が超充実しているのが、人気の無料音楽アプリの優位性でしたし。
この2点ですが、アプリについて語る上で重要なAPI利用についても少しは触れますが、今回はXiami.com自体、つまりXiamiで公開されている音楽コンテンツとXiamiの運営、ビジネスモデル中心の説明になります。
私はここまでの記事で「虾米音乐网(http://www.xiami.com/、Xiāmi yīnyuè wǎng)」について、「中国の無料音楽ストリーミングサイト」と紹介してきましたが「中国の"違法"音楽ストリーミングサイト」のように「Xiamiが違法である」のようなことは言っていませんでした。何も見なければ普通に違法を連想してしまうのですが、ちょっとxiami.comを見てみると、気になる部分がありすぎて、なんとも言いようがなかったのです。
一部、本当に一部の読者さんは自ら調べ、気がついていたようですが、Xiami.comは現在、「阿里巴巴(アリババ)」が運営しています。
サイトのフッターにしっかり「阿里巴巴旗下网站(アリババのウェブサイトだよ)」と書いてあります。
もっとわかりやすく言えば、実はXiami.comは阿里巴巴に買収されています。
参考:Alibaba(阿里巴巴)がさらにソーシャルへ、音楽サイトXiami(虾米)買収の噂[アップデート:確認済み] - THE BRIDGE
参考:第6回 ネットショッピングが文化を創る~アリババの経営戦略(下) (4/5ページ) - 中国ビジネススクールが読み解く「中国のネットビジネス」 : 日経Bizアカデミー ←日経のサイトでも、買収に触れられています。
「阿里巴巴集団(アリババ)ってまじか!」と思う人は、この辺りのIT系ニュースをよく見ている人かと思うのですが、アリババは中国のウェブサイトとしてはとても有名で、企業間の電子商取引サービスを中心に、いろいろなサービスを展開しており、最近では「アリババが米国株式市場に上場申請をした」というのがとても話題になりました。NHKでも取り上げられていたはずです。
参考:中国アリババが米上場申請、ハイテクIPOで過去最大に (ロイター) - Yahoo!ニュース BUSINESS
なので、この「阿里巴巴」の文字を見た瞬間、知っている人は「えっ、まじかよ」ってなるわけです。
YouTubeをGoogleが所有していることのように、阿里巴巴がXiamiを所有しているとなったら、見る目が変わってしまうわけです(YouTubeはGoogleに買収される前からだいぶ信頼度高めだったけど)。
さらに驚くのが、「合作伙伴(パートナー)」というページです。
3大レコード会社的な「ユニバーサル・ミュージック」「ソニー・ミュージックエンタテインメント」「ワーナー・ミュージック」のロゴが冒頭に並んでいて、もうその段階で圧倒されます(世界のレコード会社「3大メジャー」)。わかりやすいところだと、「avex」のロゴも目立ちます。
このレコード会社一覧を見せられてしまうと、「阿里巴巴」の名前とセットで「これはもしかして合法サイトなんじゃないか???」と思わずにはいられません。
ただ、勝手にロゴを掲載しているだけなんだろ?と思った人もいるかと思います。それについては、次のビジネスモデルの話を読むと、あ、ちゃんと契約してるっぽいな、って気がしてきます。
さて、ここまででだいぶ「Xiami」を見る目が変わったかと思うのですが、もう少し詳しく見てみます。
xiami.comの使い方は、サイトのヘルプページ(虾米网站使用帮助)に書かれており、音楽ファイルをアップロードしたり、楽曲名などのメタデータを編集するなど、コンテンツの拡充に協力するとポイントが貰えることが書かれています。さらには、音質の良い音楽のリッピング方法まで紹介されています。これがやたらと音楽ファイルが充実している原因のようです。また、海賊版の排除を頑張っています、的なことも書かれています。
ただ、あまりに中国語の扱いに困ったので、解説されているサイトを探してみました。
規模の大きなサイトなのに、日本語で探しても「違法だ無料だフルだ」的な文章がブログと知恵袋中心に見つかったりするばかりで困ったのですが、とある英語の紹介記事を見つけました(もっと探せばいいのあったのかもしれないけど)。
「Xiami Story: An Ideal Online Music Model Doesn't Work for Now | TechNode」※阿里巴巴に買収された後に書かれた記事(2013年1月)
中国の人が書いているのですが、英語なのでまだ読めます。CEOが紹介されていたりもして、しっかりとした会社感ばっちりです。
ビジネスモデルが説明されているのは、「An Innovative but Controversial Buisiness Model」という節の部分です。「controversial」は「議論を引き起こす」という意味なので、怪しい感じがします。
最初にそのメカニズムはP2Pファイル共有をベースにしていると書かれており、以下のように解説されています(詳しくは元のサイト参照)。
ユーザーがアップロード可能と書かれています。オフィシャルなコンテンツだけ(iTunesみたいな)、なサイトではないんだろうな、とわかります。
じゃぁユーザーがダウンロードするときはどうなのか。
また、ダウンロードについては、ストリーミングは無料だけれど、ダウンロードは無料じゃない、とされています。
その記事によると、1回のダウンロードに 0.8 人民元必要とされています(0.8人民元 = 約13円)。
そして、その支払われた0.8人民元のうち0.4人民元は権利保持者(copyright holder(s))へ、 0.2人民元はアップロード者に、残りの0.2人民元がXiamiに分配されるそうです。
つまり、権利者に利益が行くような仕組みを構築しているということがわかります。
(・・・読み飛ばしそうになりましたが、mp3ファイルとはいえ、1曲13円って・・・)
この、権利者じゃない人が勝手にアップロードできる、という仕組みにはその発想はなかった、なのですが、これがやはり議論を呼んだようです。まるで「違法アップロードサイトの合法化」という感じです。
日本でその頃話題にならなかったのかわかりませんが、独立していた(大きなレコード会社に属していなかったって意味かな?)歌手が、Xiamiを訴え、その歌手の楽曲が全て取下げられたことがあったそうです。
そしてこの節の結論部分に「何がアップロードされるかわからないので、常に著作権侵害の潜在的リスクがつきまとう」ということが書かれていました。
逆に言えば、レーベルが認めている楽曲については、著作権にセーフ、というかちゃんとレコード会社にお金が行っている、ということのようなので、問題ないと言えるんだと思います。
ただし、それは会員登録してダウンロードを行った場合で、ストリーミング再生の場合は支払われません。とは言うものの、それも含めてレーベルが認めているはずなので、そのような楽曲については、ストリーミング再生についても問題無いと思われます(※サードパーティーアプリのストリーミング再生についてはまた別の問題なので、ここではあくまでxiami.com上のストリーミング再生についてであることに注意)。
ただ、ダウンロードする人が少なすぎて、2010年には40万人民元=654万円 しかユーザーの支払いがなく、無料のストリーミングサイトという形にシフトして、広告やチケット販売にマネタイズ方法を変更したという話になっています。
そして、結局こういうサイトは、お金のあるところがサポートしないとね、という話で阿里巴巴がその役割になったようです。
ただ、ここではマネタイズ方法がシフトしたみたいなことが書いてあって、ダウンロード課金をやめたかのようにも見えたのですが、あまりよく読めないヘルプを見ても、今現在もやはり引き続き同じような仕組みが継続しているようでした。また、有料アカウント(VIPアカウント)は、月額課金することで、音楽をダウンロードできるという説明がされていました。それらから得たお金からも、引き続きある程度がレコード会社に分配されているのだと思われます。
最初の阿里巴巴やレコード会社のロゴの印象で、結構合法感あるな、と思っていたのですが。 こうやって調べれば調べるほど、「中華の違法サイトだ」と口々に言われるほど、無法地帯なサイトではなさそうだ、という感じに固まってきました。
このあたりのことがわかりました。
Xiamiのページを見たことがなかった人は、かなり以外な結論だったのではないでしょうか。
より正確なことはもっと調べないといけないのですが、「あれ、もしかして?」と疑問に思うには十分な調査結果だと思います。
しかし、「いや、それでもなにかおかしくないか?」と思ってしまうのですが、これについてはレコード会社の中の人にでも聞いてみないとすっきりしない気がして、ちょっとあきらめモードです。
じゃぁAPIを利用したり、サードパーティークライアント(プレイヤー)を作ったりするのはどうなのか、という話がまだ残っているのですが、これについて調べてみても、公式サイトからAPIのページらしきものを見つけることはできませんでした。
とりあえずXiamiは、iPhone向けアプリだけでなく、Android、Windows、Mac、iPadと、かなりいろいろな公式クライアントを提供しています。なので、その公式Androidアプリが使っているAPIを拝借して使っていたりするのかな、って思ったりもするのですが、この辺りは中国語の壁があってさらに調べるのに時間がかかりそうで断念しました。とりあえず、iPhoneアプリが使う公開APIのパスに「andorid」という文字は入れないと思ったりするんですが。。。
今のところは、非公開のサードパーティーへの提供をしていないAPIなんじゃないかな、と予想していますが、もちろん真逆のパターンも存在する可能性があって、アプリがXiamiに利用料を支払っている、つまりアプリの広告収入の一部がxiamiを通じて最終的に権利者にたどり着いているかもしれないので、一応その可能性もこうやって触れておきます。現状どちらであるとも言い切れません。
こんなビジネスモデルでやってるとは!というのが驚きでした。JASRACと契約しているサイトとある意味で似ているのかな、とも思いますが、「著作権の権利者でないアップロードした人」と「レコード会社」に対して直接「ダウンロード料金(広告収入ではない)」が支払われるというところでびっくりしすぎたかもしれません。広告料ならまだしも、権利者でない人がアップロードした音楽を、視聴者に「販売」しているとは。でもいろんなサービスを知っている人にとってはよくあること、だったりして。
結局あまり課金してもらえずに苦しかったようですが、とりあえず阿里巴巴に買収されたので、まだ当分続いていく、今後も注目すべきサービスだと思います。
追記:本日、前回の記事で紹介した無料音楽アプリ「MusicCloud」が、AppStoreから削除されていることを確認しました。開発者が取り下げたのか、Appleが取り下げたのかは不明です。
書いた。ビジネスモデルにびっくり。 「無料音楽アプリが利用する『中国の無料音楽サイトhttp://t.co/bgLacggdbE』は一体何者なのか」 http://t.co/lAVum2TjvI
— did2 (@did2memo) 2014, 5月 15
↑リツイート用ツイートです。
日本レコード協会に、Xiami.comについて伺ってきました。ようやくXiami.comについてはっきりとしたことが分かりました:日本レコード協会と無料音楽アプリやXiamiについて情報交換してきて判明したこと
公開日:2014年5月15日
最終更新日:2014年5月25日