2015年12月10日(木)、東宝が「2016年ラインアップ発表会」を開催。スタジオジブリとフランスの製作兼配給会社・ワイルドバンチが共同で、アニメ映画「レッド・タートル THE RED TURTLE」(以下、「レッド・タートル」)を製作すると発表した。監督にイギリスを拠点に活動するマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットを抜擢した同作は、今までのジブリ映画と雰囲気も違い、「どんな作品になるんだろ」「わかんないけど、面白そうだな」とファンの興味を惹いている。
スタジオジブリの誕生は、今から30年前にまで遡る。大学卒業後、アニメーターとして働き、TVアニメ「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」、映画「ルパン三世 カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」などを手掛けた宮崎駿と徳間書店が中心となり、1985年に同スタジオを設立。翌年、第1弾として「天空の城ラピュタ」が公開された。その後、「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などの宮崎アニメを中心に、高畑勲の「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」、近藤喜文「耳をすませば」といった名作が生み出されてきた。
2008年の「崖の上のポニョ」を境に、新しい世代を育て上げようという姿勢を見せ始めたスタジオジブリ。メアリー・ノートンの『床下の小人たち』を原作とした「借りぐらしのアリエッティ」では、同スタジオでトップアニメーターとして走り続けてきた米林宏昌を、佐山哲郎・高橋千鶴の原作を用いた「コクリコ坂から」では、「ゲド戦記」でも監督を務めた、宮崎駿の息子・宮崎吾郎を監督として起用した。それらの作品の成功からか、宮崎駿は、2013年公開の「風立ちぬ」を“最後の長編”として、製作からの引退を発表し、世界中を驚かせ、また悲しませた。
ただ、長篇制作から宮崎駿が引退しようとも、スタジオジブリは健在。日本最古の物語とされる『竹取物語』を再解釈し、8年という長い年月をかけて作られた「かぐや姫の物語」は、「第40回 ロサンゼルス映画批評家協会賞」アニメーション映画賞など多くの賞を受賞し、2014年に公開された「思い出のマーニー」も、2015年12月に発表された「第43回 アニー賞」にノミネートされている(「第43回 アニー賞」決定は2016年2月)。
「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」と続く良い流れを受け、このたび製作発表されたのが、2016年9月公開予定の「レッド・タートル」。監督に大抜擢されたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは、生き別れた父親を探す娘の物語を描いた8分間のアニメーション作品「岸辺のふたり」で、「第73回アカデミー賞」短編アニメ映画賞を受賞した実力者だ。また、窓辺に座り夢を見ているのが好きな子・オスカーを主人公にした絵本『オスカーとフー』ではイラストも担当しており、イラストレーターとしても確かな実績を持つ。加え、共同制作するワイルドバンチは、欧州地域などでジブリ作品のセールスを担当しており、スタジオジブリとの相性も良さそう。
2015年はジブリ作品の新作がなかったこともあってか、「レッド・タートル」の発表にファンからは「ジブリ最新作キタァァァ! 楽しみすぎるぅぅぅ」「待望のスタジオジブリの最新作は絶対に観に行きます!」「気になるな」「亀好きにはヤバい」など、歓喜の声が上がった。中には、「ジブリの作品は久じぶりだね。なんつって。嬉しすぎてギャグ言ってもうた」というユニークさんも。
また、現時点で「岸辺のふたり」同様、全編セリフなしになるということや、赤い大きな亀と橋の上に立った男が対峙しているビジュアル以外は不明となっていることもあり、「どんなのになるんだろう、気になりすぎる!」「全く毛色が違うからこそ、予測できなくて面白いかも」「新しい情報早く早く!お願いします!」と、内容を気にするファンも多い。
その他、「ジブリも進化していくんだな。感慨深いわ」「海外と共同制作、いいですね。ジブリ自身の活路をひらくひとつの方法論として成功してほしい」「海外アニメ作品の架け橋にジブリがなってるってことか、なんかいいな」など、新たなスタジオジブリの試みに賛同する声も上がっている。
これまでにも、「キリクと魔女」や「しわ」など、世界の優れたアニメ作品をスタジオジブリが公開したり販売することはあったが、共同制作するのは今回が初めて。それだけに「レッド・タートル」がどうなるか、まったく予想がつかない。しかし、アーティスティックプロデューサーとして高畑勲が参加することが明らかになっているし、確実に面白い作品となることだろう。ひとまず公開を前に、「岸辺のふたり」のチェックくらいはしておいたほうが良さそうだ。
■『岸辺のふたり Father and Daughter』