故渥美清さん主演、山田洋次監督作「男はつらいよ」シリーズの資料を展示する東京・葛飾区柴又の「寅さん記念館」が12月19日、リニューアルオープンし、山田監督をはじめ、同シリーズで3度マドンナ役を務めた女優・竹下景子らが記念式典に出席した。
同館は、撮影で実際に使われた「くるまや」のセットや、主人公・寅次郎のカバンの中身など貴重な資料が多数展示されている。今回は鉄道をテーマに改装されており、寅次郎が全国をめぐった旅情を味わうことができるという。
名誉館長も務める山田監督は、「渥美清さんが亡くなり、シリーズが終了してもうすぐ20年になろうとしています。今の僕たちは、生活や文化のなかで失ってはならなかったものも、たくさん失ってしまったという思いがあります」と語ったうえで、「この記念館は、かつての下町にあった様々な暮らしを体験できる場所でありたいと、リニューアルを重ねてきました」と込めた思いを告白。そして、観客に「旅の鉄道は遅くて、座席は固くて誠に不便でありながら、味わい深くいろんな人とつながりあえた時代があったということを、この記念館の鉄道で体験してほしい」と呼びかけ、「10年、20年先もそのコンセプトをもって、いつまでもこの地で皆さんが足を運ぶ場所であってほしいと思います」と願いを明かしていた。
式典後の囲み取材では、アイ・リサーチ社が調査した「寅さん役が似合いそうな俳優ランキング」で大泉洋が1位に輝いたことを受け、山田監督に「もしリメイクがあるとすれば誰に演じてほしい?」との質問が。「初めて知りました」と驚いた山田監督だが、それでも「大泉洋君ね、いいんじゃないかな。別の寅さんができるかもしれませんね」とほほ笑む。竹下も、「見てみたい気がします。さくらさんは誰になるんでしょうね」と期待を寄せていた。
さらに、竹下は「(展示されているセットで)役者が座ったところのニスが白くはげていたり、柱に傷があって、シリーズに関わった人たちの顔を思い出しました」としみじみ。渥美さんとの交流を「浅草時代の思い出や、不思議なことがあったという話をしてくださいました。今思うと半分くらいフィクションなのかもしれませんが、夢みたいに楽しかったです」と振り返ると、山田監督も「名人の落語を聞いているように、本当に話が上手かったですよね」と感慨深げに同調していた。
また2016年3月12日には、山田監督の最新作「家族はつらいよ」が公開される。式典には、同作に出演した若手演歌歌手・徳永ゆうきがサプライズ登場し、「男はつらいよ」の主題歌を生披露した。