去る12月17日,NVIDIAは,東京都内にて,同社が展開するGPU仮想化ソリューション「NVIDIA GRID 2.0」(以下,GRID 2.0)の説明会を開催した。NVIDIAのGPU仮想化ソリューションは,仮想マシン実行環境上で仮想GPU(以下,vGPU)を利用して,GPU対応アプリケーションを実行できるようにするもので,2015年9月に提供を開始したGRID 2.0では,第2世代Maxwellアーキテクチャを採用するGPUに対応したことが大きな特徴だ(関連記事)。
基本的にはGPU対応アプリケーションを使う企業や学術機関向けのソリューションであり,ゲーマーが直接利用するものではないが,GPU仮想化技術の最新事情として,概要を簡単にレポートしたい。説明を担当したのは,NVIDIA エンタープライズ ビジネス事業部のJeremy Main氏(ジェレミー・メイン)である。
■第2世代Maxwellへの移行で対応ユーザー数が2倍に
GRID 2.0は基本的に,仮想マシン環境を使った「Virtual Desktop Infrastructure」(仮想デスクトップ基盤,以下,VDI)上で利用するものだ。ココでいうVDIとは,個々のユーザーが利用するアプリケーションを,すべてサーバー側で実行する仮想マシン上で管理するものだ。各ユーザーはPCやシンクライアントなどを利用して,ネットワーク経由でサーバーに接続して,仮想マシンを利用する。
話を戻そう。これまでのVDIは,GPUをサポートしておらず,ソフトウェアで仮想マシンのハードウェアをエミュレーションしていた。そのためグラフィックス性能は非常に低く,GPUを正確に再現することもできなかったので,GPUを利用するアプリケーション――たとえば業務用のCG制作アプリケーションやCADアプリケーションなど――が利用できなかったという。
だが,NVIDIAの仮想GPU技術を使えば,サーバー側に装備されたGPU(以下,物理GPU)を仮想化し,各ユーザー側の仮想マシンでGPU対応アプリケーションを利用できるようになる。また,1台の物理GPUを複数の仮想マシンに振り分けることで,複数のユーザーによる処理を同時にこなすことも可能だ。これによって,CG制作アプリケーションやCADアプリケーション,あるいはCUDAによるGPU演算を使ったアプリケーションを同時に複数のユーザーが利用できるようになるわけだ。
NVIDIAによれば,前世代の「GRID 1.0」と比べて,GRID 2.0はおよそ2倍の性能があるという。対応GPUは,第2世代Maxwellアーキテクチャの「Tesla M60」,または「Tesla M6」となり,GPU 1基あたりのメモリ容量は,従来の4GBから8GBに倍増。これにより,同時利用ユーザー数は従来比で2倍の128人に増加し,ユーザー数が同一ならば,ユーザーあたりのグラフックス性能を2倍にすることも可能となったそうだ。
そのほかにも,GRID 2.0ではLinux用の仮想GPUドライバが提供されるようになり,仮想マシン側のゲストOSとして,WindowsだけでなくLinuxも利用可能になったことも特徴であるとのことだった。
さて,GRID 2.0が登場したことにより,同じGRIDの名を冠するGRID Game Streaming Serviceのほうも,GRID 2.0ベースにアップデートされたのかどうかが,ゲーマーとしては気になるところかもしれない。だが,説明会でGRIDの導入事例を紹介したエンタープライズソリューションプロダクト事業部の澤井理紀氏や,テクニカルエンジニアの矢戸知得氏に確認してみても,GRID Game Streaming ServiceがGRID 2.0ベースになったのかどうかは,不明であるとのことだった。
ただ,最近は北米で,Androidベースの据え置き型ゲーム機である「SHIELD」が好調なこともあってか,ユーザー数が急激に増加したことにより,NVIDIAのクラウドゲームサービスである「GRID Game Streaming Service」がアクセス人数の上限に達したこともあったそうだ。
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