10%か8%の切り分けを巡り、日々のニュースで報じられている消費税の軽減税率問題。16日に自民、公明両党が決定した与党税制改正大綱では、新聞については軽減税率の対象とすることが決まったものの、出版物については継続協議の課題となった。
出版物については、日本書籍出版協会と日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の出版4団体が、軽減税率の対象とするように求めてきた。しかし、新聞各紙の報道によれば「青少年への悪影響が懸念される出版物」をどう扱うかをめぐり、慎重論があったため、決定が見送られたようだ。
つまり、出版物を軽減税率の対象とするのは、教育や文化に役立つ物品だからという建前で、エロ本は「嗜好品」なのだから、軽減税率の対象から外すべきという意見が与党内でも根強いという。
そのため、出版物に対しては軽減税率の対象とするが、エロ本は対象外となる可能性は十分にある。
しかし、そのようなことが本当に可能なのか?
仮に「青少年への悪影響が懸念される出版物」を対象外にした場合、18禁マークやコンビニのシール止めの自主規制を行っている出版物だけを対象にするのか。あるいは、出版業界内にその選定をするための組織を設立するのかという、新たな論点が浮上してくる。
18禁マークやコンビニのシール止めの自主規制を行っている出版物だけを軽減税率除外とすることは、一見理にかなっているように見える。しかし、巷で販売されているヘアヌード写真集には18禁マークはない。
また、東京都が毎月不健全図書にしている出版物は18禁の自主規制を行っていないものが対象なので、東京都が「青少年に悪影響」と認めた途端に税率を8%から10%へ変更ということになるのだろうか? 取次の扱う商品の中に税率8%と10%の出版物が混在すると、納品から返品までシステムが混乱することは必至だ。
日本雑誌協会の関係者は「2%のために魂を売るわけにはいかない」と頭を悩ませる。もしも「青少年への悪影響が懸念される出版物」を対象外にされた場合に、出版業界側でなんらかの対応を求められるからだ。はたして、そのようなシステムづくりは可能なのか聞いてみたが「出版ゾーニング委員会を拡大して……ということも考えられなくはない」(同)という。具体的な方法は、まったく未知数なのである。
一方、いわゆるエロ本系出版社を中心に構成される出版倫理懇話会加盟社側は、次のように語る。
「いくら私たちが、『反対だ。すべての出版物を軽減税率の対象にしてくれ』と主張したところで無駄です。彼ら(交渉にあたっている出版4団体)は、18禁マークつきとシール止め出版物を交渉のカードとして使うでしょう」(匿名の出版社幹部)
5月には出版倫理懇話会と日本雑誌協会・日本書籍出版協会の間に協議の場も持たれたが、懇話会側には「彼らは、エロ本は除外するから出版物も軽減税率の対象にしてくれと交渉しているはず」という不信感が根強い。取材に応じてくれた出版社幹部は、会話の中で「腹が立つ」と出版4団体への怒りを隠そうとはしなかった。
出版業界内部でも妥協点は、いまだ見いだせていない。
(文=ルポライター/昼間 たかし http://t-hiruma.jp/)