エイズ撲滅に賛同して募金すると女性の胸をもめるチャリティーイベント「おっぱい募金」をめぐり、今後の中止を求めるネット署名運動が起きるなど、大きな騒動になっている。
このイベントは、「BSスカパー!」の番組「24時間テレビ エロは地球を救う!」が毎年行っており、今年は12月5、6日に開催された。公式サイトによると、18歳以上(高校生は除く)の男女が、番組の趣旨である「STOP! AIDS」に賛同して募金をすると、女性の胸をもむことができる。2015年の来場者数は7175人で、過去最高に達した。
署名運動では「偽善的で性差別的なイベント」と批判しているが、そもそも、公衆の面前で女性の胸をもむという行為は、何らかの法律に抵触しないのだろうか。岩沙好幸弁護士に聞いた。
●「『わいせつ』にあたるかは疑問が残る」「考えられるとすれば、『公然わいせつ』ですね。まず、公然性は、不特定または多数の人が行為を認識できるときに認められます。
このイベントは、インターネットで告知をし、顔も名前も知らない人の前でも構うことなく露出した女性の胸を揉む、ということが行われました。
このような状況では、不特定の方が認識可能な状態で胸が揉まれていると考えられます。したがって、公然性が認められる可能性が高いです(高松地裁H23.2.9)」
では、今回のイベントも「わいせつ」にあたるのだろうか。
「『わいせつ』とは、『いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』(最判S26.5.10)をいいます。『わいせつ』にあたるかどうかは、一般社会における良識、つまり社会通念を基準に判断されます。
今回のイベントでは、一般的に『わいせつ』と言われている、下半身を露出するといった行為はなく、露出した女性の胸部を揉むということがおこなわれました。
したがって、必ずしも『善良な性的道義観念に反するもの』とは断定できず、公然わいせつ罪にいうところの『わいせつ』にあたるかは疑問が残ります」
おっぱい募金については、ネット上で、「風俗と何ら変わらん」という意見もあるが、どう違うのか。
「本件はチャリティーイベントであり、得られた収益が全て寄付されたとすると、営利を目的とした『営業』とはいえず、風営法で規制対象とされている『風俗営業』や『性風俗関連特殊営業』にあたるとは言い難いでしょう。この場合、風営法上の許可や届出は不要ですので、風営法違反となるとの判断も難しいでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岩沙 好幸(いわさ・よしゆき)弁護士
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。
弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。http://ameblo.jp/yoshiyuki-iwasa/
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