今年も様々なアプローチ&珠玉のメロディと歌声による名曲が多数リリースされたアニソンシーン。そんな名曲たちの中から、アニメファンであり、音楽ファンでもある筆者の印象に強く残った楽曲を10曲、ご紹介をさせていただきます!
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『幸腹グラフィティ』の『幸せについて私が知っている5つの方法』
シャフト制作の『幸腹グラフィティ』で、オープニングを飾っていたのが坂本真綾さんの『幸せについて私が知っている5つの方法』です。
近年、様々なミュージシャンから楽曲提供を受けている真綾さん。この曲もジャズやハウスシーンで世界的な活躍を行っている音楽クリエイター、ラスマス・フェイバーとの超強力なタッグによって誕生しました。
ハウス的な4つ打ちビートとアッパーでキラキラしたメロディに透明感のある真綾さんのヴォーカルが重なることで、何ともいえない幸福な歌が誕生。まさに極上のポップ・ミュージックとなっています。
愛する人を持つ者の視点から綴られる歌詞も聴く者の胸を打つ内容であり、誰かと一緒に食事をする喜びを描いたアニメ本編の内容とも見事な調和を果たしています。梅津泰臣さんによるヴィヴィッドな色合いで表現されたオープニングアニメーションも素晴らしかったですよね。
愛の多幸感をそのままパッケージして、音楽にしたらこういう歌が生まれるのでは……と思える本当に素敵な一曲です。"アニソン"という枠を超越して、あらゆる音楽ファンに届いて欲しい名曲!
また、『幸腹グラフィティ』はアニメ本編の魅力は勿論のこと、豪華ミュージシャンが音楽をバックアップしており、サウンド面でも非常に引力がある作品。出演声優さんが歌うエンディング曲の『笑顔になる』も傑作ですよ!
プリキュアから“変化球”な一曲
『Go! プリンセスプリキュア』の『Miracle Go! プリンセスプリキュア』
続いては、プリキュアシリーズ最新作『Go! プリンセスプリキュア』より、オープニング主題歌の『Miracle Go! プリンセスプリキュア』を。
テクノポップやEDM、ファンキーなソウルなどなど、様々な音楽要素を取り込み、"攻めた"曲も多いプリキュアシリーズの主題歌ですが、『Go! プリンセスプリキュア』のテーマ曲もやっぱり凄かった!
この『Miracle Go! プリンセスプリキュア』は、エレクトリックドラムの音が小気味よい、アップテンポなポップチューンなのですが、とんでもない変化球が使われています。
何と曲の途中で大胆なリズムチェンジが行われ、ワルツのような三拍子のリズムになるのです。
主人公がプリンセスを目指し、変身アイテムでドレスアップしながら戦う『Go! プリンセスプリキュア』のイメージに合わせて、エレガントなワルツのリズムが取り入れられていると思うのですが、それにしたってこの大胆な展開はインパクト大。
更に、三拍子のリズムを織り込む手法は、エンディング曲でも使用されており、『Go! プリンセスプリキュア』という作品における"プリンセス"というモチーフのイメージを決定付けています。
最近のアニソンだと、『まじもじるるも』の主題歌になっていた三森すずこさんの『せいいっぱい、つたえたい!』でも同じく曲の途中で三拍子が入っていましたよね。やっぱり、ワルツのリズムって、優雅さやファンタジックな雰囲気を演出するのにピッタリなのでしょう。
もはや、"プログレ"と表現しても差し支えない程の急激なリズムチェンジすら取り込んだプリキュアの主題歌。シリーズを重ねる毎に進化と深化をみせる同シリーズの音楽から、今後も目が離せません。
『放課後のプレアデス』の『Stella-rium』
GAINAXとスバルのコラボによる『放課後のプレアデス』は、惑星や宇宙を舞台とした変身魔法少女アニメ。
SFライクなファンタジー、或いは、ファンタジックなSFといった趣の作風で、そこに主人公である少女たちのセンシティヴな感性が絡まり物語が紡がれていく、非常にドラマティックなアニメでした。
サイエンス・フィクションではあるのだけれどファンタジー、スペースオペラなれど魔法少女もの。絶妙なバランス感覚で展開される壮大なストーリーがアニメファンを魅了した作品です。
音楽面も充実しており、オープニング、エンディング共に主題歌がとにかく素晴らしかったのも本作のチャームポイント。
エンディングの『ここから、かなたから』と、どちらをベストに選択しようか迷ったのですが、今回はオープニング曲の『Stella-rium』をご紹介させていただきます。
昨今、色々な音楽的趣向を凝らした楽曲が生み出されているアニソンシーンですが、この曲は潔いまでにストレートなバンドサウンドによるアニソンです。
Aメロの音数を抑え、ほぼリズム楽器を使わずギターのみで進行するストイックな構成から徐々に盛り上がっていき、高揚感に溢れたサビへと繋げるメリハリの効いた構成が聴きどころとなっており、曲全体のエモーションがより一層際立つ楽曲となっています。
シンプルなバンドサウンドながらも、アニメ本編の壮大なスケール感と疾走感が見事に表現された優れた一曲。楽曲構成とメロディの強さを、音楽好きな方にも是非とも体験していただきたいナンバーです!
『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の『打ち寄せられた忘却の残響に』
あらゆる音楽ジャンルを取り込み、冒険作、意欲作が数多く作られているアニソンの世界。この『打ち寄せられた忘却の残響に』も、そうしたミクスチャー的な音作りの結果、非常にユニークな音楽性を有した楽曲が誕生したという奇跡的かつ刺激的なナンバーです。
この曲は、本格的なエレクトロニカ・サウンドを取り込んだアニメソング。同じ電子音楽でも、テクノポップやEDM調のアニソンは数多くありますが、エレクトロニカなアニソンは今までに有りそう実は無かった新機軸だといえます。
"チチチチチッ……"というエレクトロニカ特有のアンビエントな電子音や幽玄的なストリングスの音によって生み出されるサウンドは、Sigur RosやMUMといったアイスランド系の電子音楽を連想させる非常にエモーショナルな仕上がりに。
そこに、ヴォーカルを務める大竹佑季さんのアダルティな歌声が絶妙に相乗効果を発揮し、儚げで美しい"エレクトロニカアニソン"を生み出しています。
ビートの効いた電子音やヘヴィでメタリックなサウンドが使用されることの多いアニソンにおいて、低音が曖昧模糊とした存在であるエレクトロニカを基盤に楽曲を作るというチャレンジ精神に溢れた一曲であり、同時に、アニソンの多様性を雄弁に物語る楽曲です!
グロテスクでショッキングなシーンもありつつ、ヒューマニズムに溢れたドラマを織り成す『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』というアニメの作品性や、ヒロインである九条櫻子さんのミステリアスなキャラクターにも非常に合っていましたし、異色作でありながら見事な"アニソン"だと思います。
まさにスカコアの王道!
『響け! ユーフォニアム』の『トゥッティ!』
ポップかつメロディックなハードコアなパンクサウンドに、"ンチャンチャ"というスカのビートをミックスさせたスカコア(スカパンク)。90年代の終盤から2000年代の前半にかけて、インディーズシーンで大ブームになった後、ポップミュージックの世界にもスッカリ浸透し、様々な音楽シーンでスカコア調の楽曲が作られ続けています。
アニメソングでも『WORKING!!』の『SOMEONE ELSE』や『となりの怪物くん』の『Q&Aリサイタル』など、スカコアの要素を取り入れた名曲がチラホラと。そんな名曲リストに加えたくなるスカコアなアニソンが今年もリリースされました!
高校の吹奏楽部を舞台に少女たちの青春模様を描いた『響け! ユーフォニアム』の『トゥッティ!』は、まさにスカコアの王道ともいえるスピード感とテンションに満ちた楽曲。吹奏楽部のアニメということで、金管楽器を印象的に使用できるスカコアを用いるというアイデアが素晴らしいですね。
また、トランペットやドラムだけでなく、普通はスカコアに使用しないフルートを使っている点にも、吹奏楽という作品のモチーフを大切にしているのが伝わってきて、とてもおもしろいと思います。
スカ特有のビートに、日本のスカコアムーヴメントを代表する名バンド、POTSHOTやKEMURIのそれを彷彿とさせる「ウォウ! ウォウ!」というパンキッシュなコーラス、そしてそれらを更に盛りたてるホーンセクションの力強い響きが堪りません。
TVサイズでも十分にカッコ良いのですが、2番以降は、ドラムが疾走を始めたり、所謂"ストップ&ゴー"(曲の構成に緩急を付けること)な構成を用いていたりと、パンクロックの旨味が凝縮されているので、できればCDやダウンロード購入にてフルサイズの楽曲を聴いて欲しいところ。
ちなみに、この曲の作曲者は、アニソンシンガー&クリエイターのZAQさん。ZAQさんが持つミクスチャー感覚の凄み伝わってくる良曲です。
『ローリング☆ガールズ』の『月の爆撃機』
女の娘4人組がバイクで日本を縦断しながら各地のトラブルを解決していくロードムーヴィー的な要素を取り込んだアニメ作品『ローリング☆ガールズ』。
序盤から中盤までは、明らかに説明不足なシナリオやシュールな設定のオンパレードに、頭の中に大量の「?」が浮かび続けましたが、実は、それらは計算し尽くされた脚本と演出であり、それらが結実することで、全ての謎が明らかになる終盤の展開が圧巻のアニメでした。特に、最終回のエクスタシーは、ホントに凄かったです……!
主人公の少女たちが困っている人たちを助けるべく、"愚直"という言葉を絵に描いたような、ひたむきな頑張りを見せる姿がドラマの大きな見せ場。
そんな作品に相応しく、"青春"の代名詞的なバンドであるTHE BLUE HEARTSの名曲が劇中では数多く引用されています。
日本のロックにおけるスタンダードともいえるTHE BLUE HEARTSですが、出演声優さんたちによるカヴァーは、オリジナルとは異なるニュアンスで聴くことができて、かなり聴き応えがあります。
改めて、シッカリと聴いてみるとシンプルなのに表現力に満ちたメロディの良さや甲本ヒロトさんの言葉のセンスに驚かされますね。
メインのエンディング曲として使用されていた『月の爆撃機』は、歌のバックで流れるアニメーションも目にとても楽しく、とりわけ強く印象に残った楽曲。未だ観ぬキャラクターたちが次々に登場する演出に、毎回ワクワクさせられました。
ちなみに、この主題歌が収録されたシングルは、紙ジャケでリリースされており、そのデザインが大変にカッコ良いので、こちらは是非ともCDでの購入をしていただければと思います。
『神様はじめました◎』の『神様の神様』
人気少女漫画『神様はじめました』のアニメ化第二期『神様はじめました◎』。大地丙太郎監督によるポップなコメディ描写や出演声優さんの好演が楽しめる良質なラブコメアニメで、今作もとても楽しませいただきました。
その主題歌も、一期からの続投となるハナエさんが担当。オープニング曲の『神様の神様』は、エキセントリックなポップナンバーで、ハナエさんの音楽的表現力が詰まった一曲に。
和風のメロディに「around the world」「I LOVE YOU」といった英詩がミックスされている不思議な楽曲で、それがこの曲に何とも言えない個性を与えています。
この曲に合わせて巴衛たちが踊るダンスもチャーミングでしたね。
この曲の作詞作曲者は、元相対性理論、現Vampilliaの真部脩一さん。曲の魔化不可思議感も凄いと思うのですが、歌詞も素晴らしい!
こういう女性目線のラブソングを男性クリエイターが書けるという点にも感服させられます。
ロック・ミュージックとアニメの交流!
『うしおととら』の『混ぜるな危険』
少年漫画界における不朽の名作『うしおととら』の再アニメ化にも驚きましたが、"筋少"こと筋肉少女帯がその主題歌を担当するというニュースにビックリさせられた2015年のアニソントピック。
そして、いざリリースされた『混ぜるな危険』は、『うしおととら』の作品性と筋少の音楽性の良いトコどりをしたような素晴らしいアニメ主題歌となりました。
『混ぜるな危険』というタイトルの下、繰り広げられる大槻ケンヂさんの歌詞世界と、人間と妖怪のコンビによる退魔モノという『うしおととら』のバディムービー的なコンセプトがマッチしていて、このジャストフィット感がとにかく気持ちが良い!
また、ミュージックビデオにもアニメ本編の映像が使われていて、それも凄くカッコ良いんですよね。
今となっては、このアニメの主題歌を筋少が歌わないで、誰が歌う!? とすら思えます。
数多くのサブカルチャーに影響を与えた筋少とオーケンが、そのソリッドな感性をアニメ作品とのタッグで再爆発させた楽曲です。ファンの贔屓目を置いても、本年度のベスト10にランキングさせたい一曲!
『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』の『キルミスター』
先に挙げた筋肉少女帯のように、今年もロック系のバンド、ミュージシャンがアニメの主題歌を歌ったり、アニメや声優さんに楽曲を提供したり……と、ロック・ミュージックとアニメの交流が積極的に行われました。
そのようなシーンの流れにおいて、そのクロスオーヴァー感を最も先鋭的かつエクストリームな形で体現してみせたのが、『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』ではないでしょうか?
twitter発の人気WEB小説を『キルラキル』のヒットで知られるトリガーがアニメ化した本作。そのエンディングは、各話毎にアーティストと楽曲が切り替わる形式を取っており、しかも、パンク、ヘヴィメタル、ノイズにスラッジ、ドゥームといったオルタナティヴなロックをやっているエッジの効いたバンドが多数参加した特異な作品となっています。
人間椅子やギターウルフのような日本のロックシーンを代表するベテランから、ノイズ・ミュージック代表のMelt-Banana、冷ややかなポストパンク・サウンドが持ち味のLillies and Remainsのような若手まで、ズラリと並んだ参加アーティストの名前を見ているだけでも壮観なのですが、その中から一曲ということで、今回は第一話のエンディング曲であるBorisの『キルミスター』をピックアップさせていただきます。
国内アンダーグラウンドシーンにおける最重要バンドの一組であり、その世界的な活躍で海外の大型ロックフェスにも多数出演、ジム・ジャーッムッシュ監督の映画音楽を手掛けるなど、ワールドワイドな活動を続けるBorisの音楽が、まさかアニメ作品で聴ける日が来ようとは……。
まさに、アニメとロック・ミュージックのボーダレス化の進行速度を強烈に印象付けられた2015年のアニソントピックでした。
『SHOW BY ROCK!!』の『Have a nice MUSIC!!』
ラストは、この曲。『SHOW BY ROCK!!』エンディング曲の『Have a nice MUSIC!!』です!
オープニングの『青春はNon-Stop!』も勿論、2015年のアニメソング史に残る大名曲だと思うのですが、何よりも『Have a nice MUSIC!!』は、タイトルと歌詞が素敵ですよね。
「音楽がスキな気持ち 誰にも止められない」という真っ直ぐな歌詞は、音楽ファンならば非常に共感できると共に、"バンド"という表現活動を描いた本作のストーリーを的確に表現していると思います。
この他にも平易な言葉でピンポイントに作品性と音楽の楽しさを伝えるリリックが続き、その言葉選びのチョイスに驚かされる一曲です。
音の方も瑞々しいメロディで、決して難解なことはやっていないものの、だからこそ音と言葉が直球で胸に飛び込んでくる優れたナンバーに。鍵盤の音も良いアクセントになっていますね。
第二期の制作も決定している『SHOW BY ROCK!!』。次は、どんな曲で魅せてくれるのか、今から楽しみです!
如何だったでしょうか? 今年も素晴らしいアニソンが多くて、やや長めの文章になってしまったことと、10曲に絞り込んだが故に、リストから漏れてしまった楽曲もあることを何卒、ご容赦ください!
こうして振り返ってみると、今年は多様な音楽ジャンルをミックスさせた楽曲や意外性のあるロックバンドを起用した楽曲が目立つと同時に、シンプルなバンドサウンドでメロディ勝負の名曲も数多くあり、音作りのアプローチが大きく二極化したなぁ、という印象を受けました。
来年も、アニソンは、どんな楽曲で我々を楽しませてくれるのでしょうか?