夫婦別姓問題が論点となる訴訟について最高裁判所で審議が行われ、民法の定める夫婦同姓制度は憲法24条等に違反しないとする「合憲」の判断となりました。最高裁判所は夫婦別姓を認めないことになりましたが、世間ではさまざまな意見があり、「結婚して名前が変わるのは自分が否定されているようで嫌だ」などの意見もわかりますし、「結婚した相手と同じ名字になれないなんて悲しい」という意見も納得できます。そこで今回は、夫婦別姓ってどんなもの?夫婦別姓になるとどうなるの?についてご紹介します。
■ 夫婦別姓ってどんなもの?
夫婦別姓を認める判決が出た場合、結婚相手の名字と自分のもともとの名字の両方とも選択することが可能な選択的夫婦別姓の法律に改正されていくことになります。
◎ 選択的夫婦別姓制度とは
夫婦別姓といえども、夫婦で違う名字を名乗らなくてはいけないわけではなく、任意的なものです。もちろん夫婦ともに一緒の名字がいいというカップルは同姓にできますし、別姓が良いのであれば夫婦で異なる名字を名乗ることができます。
■ 夫婦別姓は国際的には常識?
◎ヨーロッパ・アジア・アフリカでも夫婦別姓は広がっている
夫婦別姓はイギリスは夫婦の名字について明確な規定がなく、夫婦同姓であったドイツやトルコといった国々も次々に夫婦別姓を認める法改正を行っているため、ヨーロッパ諸国は夫婦別姓が主流であるといえます。アジアでは中国、韓国、フィリピン、シンガポールなど夫婦別姓が認められているなど、もともと夫婦別姓を認めていた文化もあるようです。アメリカでは夫の名字を複合させる州があり「クルム・伊達・公子」のようになります。たしかに婚姻するときに夫婦別姓を全く認めない日本の法律はマイナーなようです。
◎ 国連からも勧告されている
国連の「女子差別撤廃条約」に基づく委員会は日本では約9割の女性が結婚により名字を男性側に合わせるというデータをもとに、2003年、2009年など過去二回日本に対して民法750条「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」の改正を勧告していました。当時の政府はこれに対し、日本の国民の家族制度に関わる問題であり、慎重に対応するという姿勢を見せ、現在まで国会で改正されずにいました。
■ 夫婦同姓制度のままだと困ることってあるの?
◎ 夫婦別姓だと婚姻届が受理されなかった!
夫婦の名字を合わせずに婚姻届を提出した場合、夫婦同姓が婚姻届の記載事項に含まれているため、役所に受理してもらえないという被害があります。そういった場合、「事実婚」という形になり、子どもが生まれても男性は認知をしなくては親権を得ることはできません。また、事実婚の夫婦では相続が当然に発生しないため、残された財産を受け取ることができないなど、困難があるようです。
■ いままで夫婦同姓だったのにどうして今になって変えることになったの?
◎ 明治期に民法ができた
いままで、日本は夫婦同姓だった理由は諸説ありますが、民法を作るにあたって、明治期に夫婦同姓を基本とする欧米のキリスト教文化の影響を受けたことなどが主な理由だそうです。そのため、今日に至るまで日本の夫婦は名字が同じにするという文化が形成されていました。
◎ 法律が憲法に違反していても、すぐに法改正できない!?
日本では違憲立法審査は具体的な事件の裁判に付随して行うこととされており、仮に民法の規定が事実上憲法に違反している時であっても、具体的な事件が発生した時でなければ、違憲立法について裁判所は違憲立法審査することができないことになっています。(付随的違憲審査性という)そのため、裁判で750条に関連する具体的な事件を争う訴訟があったことが前提とならなくては、裁判所は「夫婦別姓を認めないことは違憲だ」という判決を出すことができないことになり、裁判所が違憲立法審査をする機会を制限されていたことも理由のひとつと言われます。
■ 夫婦別姓にかわるとどんな問題が起こるの?
◎ 子どもの名字はどう決める?
夫婦別姓制度によって起こりうる問題として、子どもの名前をどうするかという問題があります。子どもの名字は夫の名字にするのか妻の名字にするのか、もしくは親が勝手に子どもの名字を決めていいのか、などの様々な問題が生じると予想されます。
◎ 家族関係、社会関係でも名字は重要かも?
日本は30万種類に上ると言われ、諸外国に比べ名字が圧倒的に多いことが特徴的な国です。そのため、名字の意味合いが諸外国よりも重大であり、夫婦が同じ名字であることが望ましいという主張も存在します。また、人間関係や社会関係、家族関係において名字や家が重要な情報であるという主張も存在します。子どもの名字はどうやって決めるのか。夫婦の名字は別々でもいいのか。この問題はこれから大きな社会問題になるかもしれません。
■ 「夫婦別姓」あなたは賛成?反対?
夫婦別姓を取り上げてきましたが、非常に難しい問題です。「名字が違っても夫婦の愛には関係ない!」という意見もよくわかりますし、「名字が違うなんて寂しい」という意見もわかります。また、名字というものの捉え方は人それぞれ。夫婦別姓もいつかはスタンダードになるかもしれません。しかし一方で、実際は大切なパートナーと同じ名字がいいと考える方が多ければ、あまり夫婦別姓は浸透しないかもしれません。夫婦別姓も新たな選択肢として考えてみるといろんな可能性が広がる(?)かも。
(著:nanapiユーザー・まことたろう 編集:nanapi編集部)