日米など12カ国が大筋合意した環太平洋連携協定(TPP)について政府が、発効後に日本経済に10兆円超の経済効果をもたらすとの試算をまとめたことが22日、分かった。農産物・鉱工業品の関税撤廃・削減に加え、貿易・投資ルールの緩和を追い風に輸出が大幅に増え、国内総生産(GDP)を2〜3%(十数兆円規模)押し上げると見込んだ。
一方、TPPによる国内の農林水産業への影響額(生産減少額)は少なくとも千数百億円と試算した。全ての関税の即時撤廃を前提にした2013年3月の試算(約3兆円)に比べ大幅に減少する。政府はTPP対策の実施により、再生産の維持は可能とみている。また14年度時点で39%(カロリーベース)の食料自給率にも影響はない見通しだ。
安倍政権はTPPの経済効果を、目標とする名目GDP600兆円達成の推進力にしたい考え。政府は試算内容を24日に開く経済財政諮問会議に報告、公表する。
今回の経済効果の試算では、関税の撤廃・削減にとどまらず、外資参入規制の緩和によるコスト削減効果や、貿易・投資の促進を通じた輸出量の拡大、中長期的な生産性向上に伴う賃金上昇や労働力人口の増加といった波及効果も幅広く考慮。その結果、TPPの効果は、日本が交渉に参加した13年時点にまとめた試算の約3.2兆円から大きく膨らむ。
農林水産業の影響試算は、関税率が10%以上で、国内生産額が10億円以上の主要33品目を対象に行った。TPP大筋合意直後の10月下旬の段階で政府は、関税を大幅削減する牛・豚肉などを中心に生産減少額が2400億円に上ると試算していたが、輸出の拡大効果なども加味したことで減少額は最低で千数百億円にとどまる見通しとなった。