いまも拡大を続けるDMMグループの頂点に立つ亀山敬司会長。その亀山会長がもともとファンだったという漫画家の西原氏。かれこれ7年来のつき合いとなる2人だが、その関係は単なる友情とも違う不思議な絆で結ばれていた。西原氏いわく「ただのこすいおっさん」亀山会長の、甘酸っぱい青春の思い出から、ほかに類を見ない独特の経営理念まで、その知られざる素顔に迫った!
ーー麻雀も一緒にされるそうですが、どちらが強いんですか?
亀山 俺の方じゃない?
西原 私はとにかく弱いですから。サバゴボつもってインパチ振る、みたいな。そういう非常に鍛え抜かれた雀風で。
亀山 漫画で読んだ通りの下手くそなんだ(笑)。
西原 いまだに押し引きの妙技がよく分かってないのよ。ところで、どんなビジネスでも素人って必ず失敗するのに、どうして亀山さんはうまく言ってるの?
亀山 俺はもう搾取の天才だから(笑)。かっぱぎ〜!
西原 こんなふうにスケールの大きな話してるけど、最初に会ってご飯食べた時、財布に2、3000円くらいしかなくて。「悪りぃ、俺、おカネないわ」って言われて。「カードあるじゃん」って言ったら、「こういうプライベートなことに会社のカードは使えない」って言うのよ。そこからしばらくずっと私が払ってたよね。
亀山 そう言われれば、そうかな〜?
西原 この人、もうそろそろで会計だなっていう瞬間にトイレに行くタイミングが絶妙なの。「あんたどこのキャバ嬢だよ!」っていうくらい。
亀山 フフフフフ。
西原 吉祥寺で飲んだ時も、有名人やら社長やらいっぱい来るホルモン焼き屋の大将に「姐さん、あの人、本物の社長ですか?」って言われて。確かに私も怪しいとは思ってたの。名刺に「社長」って書いてあるけど、住所は石川県だし、もしかしたらDMMの倉庫の責任者なのかなって。
亀山 アハハハハ。
西原 飲みに来ても何もせず居眠りして帰っちゃったりするから、社長としての風格はまったくないよね。
亀山 「オーラがない」とはよく言われるけどね。
西原 常に私が払っているし。堀江(貴文)さんと亀山さんと私の飲み会でも、私が払ったんだよ。刑務所行く前に。
亀山 あったね、そんなことも。
西原 麻雀打ったもんね。
亀山 ホリエモンのさよなら麻雀会。
西原 で、そういえば誰もあの人がDMMのビルの前で笑ってるような写真、見たことないよねって話になって。もしかして詐欺師じゃないかって(笑)。
亀山 『毎日かあさん』で貯め込んだ金を巻き上げようと(笑)。
西原 手の込んだ取り込み詐欺じゃないかと。「たったこのくらいの金額なら」っていうのがポイントらしいんですよ。それを10人やれば10倍でしょ。
亀山 でも、そっちこそ「北陸ならカニあるんだろ!」って言って、カニ贈らせたじゃない。
西原 あんまりおごらせるんで、ある日「欲しいものがあります」ってお願いして。2回届いたけど、それっきり。
亀山 う〜ん。3回目を忘れてた。
ーー亀山会長が西原さんと一緒に遊ぶのはなぜですか?
亀山 まぁ、麻雀弱いし、カモれるからちょうどいいかなって思って(笑)。
西原 こないだ、銀玉親方や博報堂の人らと半チャン20回くらいやったけど、ダマテンでもリーチかけても鳴いてても1回も振り込まれない。あとは自分の非力なツモ力でツモるしかないという。これって大変なことですよ。賽の河原で卓張ってるようなもの。
亀山 アハハハハ。
西原 そんな麻雀ばかりしてるから、普通の人とやると逆に「強い」って言われることが多いのよ。手が早いし。
亀山 俺も社員達と年1回は麻雀大会するけど、優勝したりするよ。
西原 それはあなた……違うよ(笑)。北朝鮮のゴルフ大会みたいなもので、みんな空気読んでんだよ。
亀山 やっぱ、そうかなぁ。
西原 とにかく「亀山ニセモノ説」はわりと吉祥寺界隈ではまだ生きてるんですよ。昔、食中毒出した焼肉チェーンの社長にすごく似てるとも言われていて。典型的な詐欺師顔ってやつ(笑)。
亀山 いや〜、照れるなぁ〜(笑)。
西原 ジャガイモとかちょこちょこっと食べて、お酒もほとんど飲まずに居眠りだけして帰るから、どうも金持ちには見えないらしいんだよね。でも、ある日、「私に良くしてくれた男性にDMMからAVの詰め合わせを贈ってくれませんか?」ってお願いしたら身分がバレちゃって。
亀山 あったあった。AV100本セットね。贈った贈った。
西原 その人「俺は年上の女性に怒られながらヤラれるヤツ」とか「オレはちょっとレズで女同士がケンカしてるヤツ」とか「ナースの……ある?」とか、何十年来の友だちの、知りたくもない性癖を知ってしまって辛かったって言ってた(笑)!
亀山 アハハ。
西原 で、誰も持っていかなくて残ったAVのタイトルを教えて、って聞いてたよね。
亀山 委託方式だからさ、売れ残りををちゃんと見て勉強しないと。でも、西原の周りはマニアックすぎるからあんまりマーケティングにはならなかったけどね(笑)。ゲイものまで無くなってたし(笑)。それにしても、こうして会うのは久しぶりだよね?
西原 なぜそうなったと思いますか?
亀山 いやいやいや……なんでだろう?カニ贈らなくなったからかな?
西原 私が描いた漫画を送ってあげたら、しれっと「面白いけど、もう一本描いて」って言ったからだろ!
亀山 アッハハハハ。
西原 LINEに、つばを吐きかける私のスタンプがあるんだけど、それを送りつけて、それからしばらく知らんぷりしてやった。
※西原さんご自身も愛用!LINEスタンプ「西原理恵子 煮え煮え編」(LINE STORE)
亀山 「ちょっと俺のマンガ、試しに描いてくれる?」ってお願いしといて、ケチつけちゃったんだよね。
西原 プロの人気漫画家先生に向かって、「こんなんで大丈夫? あと2、3本描いてくんない?」って。「俺は下請けか! あぁ?」と。
亀山 ちょっと笑ってくれたらいいかなって思ったシャレよ。
西原 そもそもLINEのスタンプもタダで描いてあげたのに、お礼も何もナシかと! カニも贈って来なくなるし、常に私が食事代払ってるし、「何だぁ、おまえは?」と。
※友情の証?西原さんがノーギャラで書下ろしたLINEスタンプ「かめっち会長」(LINE STORE)
亀山 俺たちの関係ってカネじゃないだろ?
西原 私、全然嬉しくないじゃん。ホント腹立つわ~、こいつ。「今回は俺がおごる」って言って、コンビニでサンドイッチ買ってきやがったんだから。
亀山 ハハハ。
西原 待ち合わせ場所に自転車で来たこともあったよね。そういうのもあって、初めの頃は社長だとは全然思ってなかった。だから目の前にいる人は「プチ亀山」というか、影武者じゃないかと。
ーー亀山会長が本物かどうかはともかく、この対談をきっかけに仲直りしていただき、ボツになった漫画もようやく日の目を見るということでよろしいですか?
亀山 もちろん。(編集部スタッフに向かって)ギャラ、払ってあげて。
西原 出た! こんな時でも出し渋るんだよ、この人! 信じられる?
亀山 そうやらないとさ~、カネ、貯まらないんだよね(笑)。
西原 あんた、こないだ何十億儲けたとかすごい話してたじゃん。おかしくない?
亀山 まぁ、それはそれ。やっぱセコくないとカネ貯まらないのよ。(再びスタッフに向かって)ちゃんとほら、原稿料用意しといてね。
西原 まだ言うか! こんなふうにしれっと言うから、私もびっくりして払っちゃうのよ。こうなると、もうちょっと追いかけないと元が取れないから。
亀山 アハハハ。
西原 まだ仲直りしてないからな!
亀山 (またもやスタッフに向かって)もう、なんとかしてよ(笑)。
西原 不思議でしょ~、こうやって私もついつい払っちゃうのよ。どこかに亀山ポケットがあって、そこから払えばいいのに。
亀山 入る一方だから、亀山ポケットは(笑)。
※本邦初公開の書き下ろし漫画。拡大して見る場合はこちら
(構成/中村裕一 撮影/西田 航)
プロフィールDMMグループ会長
亀山敬司
DMMグループ会長 亀山敬司
石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めた成り上がり実業家。現在はFX、英会話、ゲーム、太陽光発電、3Dプリンタ、VRシアターと多岐にわたる事業を展開している。
漫画家
西原理恵子
漫画家・西原理恵子
高知県生まれの漫画家、1988年にデビュー作を発表以来、実体験をベースにしたギャグ漫画作品を発表。著作に『ぼくんち』『毎日かあさん』ほか多数(西原理恵子公式ホームページ「鳥頭の城」)