政府は2016年度予算案で、政府開発援助(ODA)を17年ぶりに増額した。中国がアフリカなどの途上国に大規模な援助外交を展開していることに対抗し、日本の国際的な影響力を維持する狙いがある。

 無償資金協力や技術協力が中心の政府ODA予算は、前年度比1.8%増の5519億円。円借款についても、24日決定した16年度財政投融資計画で国際協力機構(JICA)に同7.2%増の4680億円を充てた。外務省幹部は「外交ツールとして大きい」と評価した。

 増額の背景には、中国が途上国支援で攻勢を強めていることがある。習近平国家主席は9月の国連総会で、途上国支援のため20億ドル(約2400億円)を拠出して基金を設立すると表明。インフラ整備に関しては、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導した。

 こうした動きをにらみ、安倍晋三首相は、日本とアジア開発銀行(ADB)が円借款などにより今後5年間で1100億ドル(約13.3兆円)を支援すると表明。16年度のODA予算増額は、首相の意向を反映したものといえ、「質の高いインフラ構築支援」で中国と競り合う方針だ。