ドラえもんがR2-D2と共演? 藤子・F・不二雄作品の「スター・ウォーズ」 | ニコニコニュース

大人たちが「スター・ウォーズ」に熱狂している頃、ボクらは「リトルスターウォーズ」に夢中だった!
エキサイトレビュー

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」盛り上がってますな。

エピソード4〜6の旧・三部作から入った少々お年をめされた方も、新・三部作から入ったヤングな人にとっても待望の新作!

もちろんボクも「スター・ウォーズ」は好きなんで、心待ちにしていたエピソード7! ただ、旧・三部作はタイムリーには見れていないけど、新・三部作が公開された頃にはとっくに大人になっていたという中途半端な世代のため、「スター・ウォーズ」の入口は旧・三部作でも新・三部作でもなく、「ドラえもん」だったのだ。

というのも、SFマニアとして知られる藤子・F・不二雄先生は「スター・ウォーズ」にもメチャクチャ熱狂していたようで、一時期「ドラえもん」の中にやたらと「スター・ウォーズ」ネタが登場していたから。

アッカンベーダからアーレ姫を救い出せ!


有名どころでいうと、「天井うらの宇宙戦争」(初出時は「スペース・ウォーズゲームセット」)というエピソード。

ドラえもんが出してくれた「スペース・ウォーズゲームセット」で遊んでいたのび太のところに、本物の宇宙船に乗ったロボット・R3-D3がやって来る。

アーレ・オッカナ姫からのメッセージを受け取ったのび太たちは、ジャイアンの家の屋根裏にあるアッカンベーダの基地に潜入することに……という。まあ、誰が読んでも『スター・ウォーズ』パロディと丸わかりなネタ満載のエピソードだ。

もちろんそこはF先生。単純なパロディネタで終わってはいない。

敵も味方もすごく小さい宇宙人なので、巨大戦艦も地球人から見るとミニチュアサイズ。ということで、迫りくる巨大戦艦がジャイアンの打った野球ボールで破壊されてしまうというオチが。

24ページの中に「スター・ウォーズ」ネタをふんだんに盛り込みつつも、ギャグ要素も加えて違和感なく「ドラえもん」の世界観に落とし込んでいるのはさすが!

これを読んで、ダース・ベイダーより先にアッカンベーダを知ったという人も多いんじゃないだろうか。……ボクはそのクチです。

このエピソードが雑誌に掲載されたのが『小学四年生』1978年9月号(発売は8月)。本家『スター・ウォーズ』の日本公開が同年7月ということを考えるとメチャクチャ早い!


てんとう虫コミックス『ドラえもん』19巻>収録)

「スタージョーズ」に「スペースウォーズ」


ところが「天井うらの宇宙戦争」よりさらに早く、本家が日本公開される前にも『ドラえもん』の中には『スター・ウォーズ』ネタがぶっ込まれているのだ。

アメリカですごいSF映画が大ヒットしているという噂を聞きつけたF先生が、日本公開を待ち切れずに思わず描いてしまったのだろうか?

『小学四年生』1978年2月号に掲載された「ドラやき・映画・予約ずみ」には、「大評判の映画」ということで「スタージョーズ」なる映画が登場している。ルークっぽい主人公をはじめ、C-3POやR2-D2っぽいロボット、さらにダースベイダーっぽい悪者まで描かれていてなんとも味わい深い。


(てんとう虫コミックス『ドラえもん』17巻>収録)

『小学三年生』1978年6月号に掲載された「のび太の部屋でロードショー」にも再び映画「スタージョーズ」が登場。しかしこちらは、ジョーズ風の宇宙人が戦争する映画のようだ。


(てんとう虫コミックス『ドラえもん』18巻>収録)

さらに、「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐(帰還)」が公開されてもF先生の「スター・ウォーズ」熱はおさまらない!

「フエール銀行」(『小学四年生』1983年1月号)には大評判のSF映画「スペースウォーズ」に出てくるロケットのプラモデルが登場。


(てんとう虫コミックス『ドラえもん』30巻>収録)

「貸し切りチップ」(『小学三年生』1983年6月号)では、のび太が映画館を貸し切りにして「スペースウォーズ」を見に行くのだが、スクリーンに映し出されるなんともゆるーい顔をしたルーク風の主人公が印象的だ。


(てんとう虫コミックス『ドラえもん』36巻>収録)

「ヌター・ウォーズ」にネトウヨ激怒!?


「ドラえもん」以外の藤子・F・不二雄作品にも「スター・ウォーズ」パロディは登場している。

ある日突然、核戦争が起こって小市民の生活が消滅したら……というハードなテーマのSF短編「ある日……」(『漫画奇想天外』1982年5月号掲載)にも、「スター・ウォーク」という自主制作映画が登場する。

スターデストロイヤー風の超巨大な宇宙船の中を、徒歩で移動しなければならない兵士たちが不満を募らせ、やがて反乱を起こす。……だから「スター・ウォーク」! ちなみに、ここに出てくる司令官もアカンベーダー。


(藤子・F・不二雄大全集『SF・異色短編』4巻>収録)

同じくSF短編の「裏町裏通り名画館」(『スーパーアクション』1983年9月号


)は、「スター・ウォーズ」と勘違いして映画館に入った主人公が、何だかヘンテコな映画を見せられるという話。

一見、「スター・ウォーズ」っぽい世界観なのだが、「大宇宙共栄圏の確立」を目指す「皇帝陛下」のため、若い兵士たちが宇宙戦争にかり出され「立派に死んでいく」という、今だったらネトウヨとかが反応しちゃいそうな、なかなか挑戦的な内容。しかし、その映画のタイトルが「ヌター・ウォーズ」って! 確かに字面が似てるけど。


(藤子・F・不二雄大全集『SF・異色短編』3巻>収録)

そして「エスパー魔美」の「マミを贈ります」というエピソードにも、明らかにミレニアム・ファルコン風な「ミレニアム・パルコ」という宇宙船のプラモデルが登場している。


(藤子・F・不二雄大全集『エスパー魔美』5巻>収録)

このように、F先生の作品にはストーリーにガッツリ絡んでくるものから「ただ描きたかっただけでしょ!?」という小ネタまで、様々な作品に「スター・ウォーズ」ネタがぶっ込まれている。

「かめライダー」「アサレちゃん」「バンダム」「建設巨人イエオン」などなど、F先生の作品にはパロディネタも少なくはないが、「スター・ウォーズ」ほど頻繁に登場するネタは他にはない。それだけ好きだったんだろうな!

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そんなF先生の「スター・ウォーズ」愛の完成形ともいえるのが、ドラえもんの大長編『のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』>だろう。もう、タイトルそのまんまだもん。

さすがに短編ではないので、露骨な「スター・ウォーズ」パロディネタ入っていないが、独裁者vs反乱軍という図式や、メカデザインなどにちょこっと「スター・ウォーズ」の雰囲気を感じられる。

そして、劇場アニメ版>のオープニングではドラえもん、のび太と一緒に歩くC-3POとR2-D2っぽいロボットの姿が……。これは夢のコラボレーション!(たぶん無許可だろうけど)

ストーリーは、小さな宇宙人・パピと出会ったのび太たちもスモールライトで小さくなって、独裁者に支配されたピリカ星を救いに行くという、F先生のオリジナリティ全開なSF(すこし不思議)感覚にあふれている。

いつもは小ずるいばかりのスネ夫が天才的なメカニックの腕前を発揮したり、しずかちゃんを助けるために活躍したりと、ファンの間では数少ない「スネ夫大活躍回」としても知られており、大長編「ドラえもん」の中でも特に評価が高い作品だ。

ちなみに、この「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」、Amazonプライムビデオにドラえもんの映画作品がドドーンと追加されたおかげで、Amazonプライム会員ならば追加料金ナシで見ることができるようになっている。

「ドラえもん」好きはもちろん、「ドラえもん」はよく知らないけど「スター・ウォーズ」は好き! という人にもせっかくだから見てもらいたい。藤子・F・不二雄先生もいたく気に入っていたといわれる、武田鉄矢の歌う主題歌「少年期」もサイコーだから!

エピソード8にあわせて「宇宙小戦争」リメイクを!


最近の「ドラえもん」映画は、「新・のび太の宇宙開拓史」「新・のび太と鉄人兵団」などと、定期的に昔のドラ映画をリメイクしているのだが、ちょっと残念なのは、このタイミングで「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」のリメイクをやったら絶対に盛り上がったのに! ……ということ。

来年のドラ映画は「新・のび太の日本誕生」に決まっちゃっているようだけど、本家「スターウォーズ/エピソード8」公開の際には、何とかタイミングを合わせて「新・のび太の宇宙小戦争」をお願いします!


(北村ヂン イラストも)