最近流行の糖質制限ダイエットをめぐって、寿司屋でちょっとしたトラブルが起きた。炭水化物抜きのダイエットをしている年配の女性客が、食事の途中から「酢飯はいらないわ」と言い放ち、寿司屋の店主も他の客も凍りついたというエピソードがツイッターで投稿され、話題になった。店主は静かに「お帰りください」と切り返したそうだ。
自ら目撃した出来事をツイートしたのは、劇画原作者・小池一夫氏。「お客さンあっての商売だけど、これはひどいよね」「モノを作る人への敬意は必要だよね」とがっかりしたことを打ち明けている。さらに、「年齢で大人かどうかは判断できない。年によりけりではなく、人によりけり」と振り返っている。
この出来事について、ツイッターでは「米NGなら、寿司屋さん入るなよ、って思う」「お金払えばなにしても良いってわけじゃないんですけどね」といった感想の一方、「お帰り下さいはあかんやろ」と店の対応を疑問視する声もあった。
このような客があらわれた場合、「お帰りください」と退店を命じることは法的に有効なのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●注文を断ることはできるが、退店命令は難しい「数年前から糖質制限ダイエットが大流行していますから、こういう事例が出てくることもうなずけますね」
西口弁護士はこのように切り出した。では、退店させることはできるのだろうか。
「結論から言えば、無理だということになります。
一般論としては、お店さん側に店の出入りを管理する権限である施設管理権というものが認められています。お店にとって迷惑な行動をとるお客様であれば、この施設管理権に従って退店していただくことも可能でしょう。
しかしながら、今回の事案では、お客さんは単にシャリ抜きと言っているだけで、お店に迷惑を掛けておらず、退店命令までは出せないでしょうね」
では、「酢飯抜きの寿司」の提供を断ることはできるのか。
「できるでしょう。お店の側としては、お客の注文に対して、拒否する権限があると考えられるからです。ただし、拒否するのであれば、あらかじめ店の入り口にシャリ抜きでの注文はできない旨の張り紙等をしておくべきでしょうね。お客さんあっての商売ですからね。
いずれにせよ、今回の問題は行列のできる店では起こりうることです。お店としては、お客さんに対して『○○はできない』といった注意喚起をすることが求められるでしょうね。あまり無茶なことをすると、IT社会でうわさも広がりやすいので、どんな不利益を受けるか分かりませんしね」
西口弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/