北海道の新千歳空港で12月中旬、離陸の準備をしていた航空機の中で、乗客が「爆弾を持っている」といった内容の話をしたため、出発が約2時間半も遅れるトラブルが起きた。
報道によると、爆弾騒ぎがあったのは、ピーチ・アビエーションの関西空港行き・エアバスA320(乗客乗員168人)の機内。乗客の男性5人グループのうち1人が「爆弾持っている」などと話すのを客室乗務員が聞いたという。ピーチ社は乗客全員を避難させて、手荷物検査をしたが、不審物は見つからなかった。
通報を受けた北海道警は悪質ないたずらとみて、男性たちから事情を聞いたということだ。今回のように、航空機内で「爆弾を持っている」と話した場合、何らかの罪に問われることがあるだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。
●「威力業務妨害罪」に問われる可能性がある「客室乗務員に聞こえることを意図して、機内の乗客が『爆弾を持っている』などと発言することは、威力を用いて航空会社の業務を妨害したとして、『威力業務妨害罪』に問われる可能性があります」
実際には爆弾を持ち込んでおらず、乗客の冗談だった場合はどうだろうか。
「たとえ冗談であったとしても、そのような発言を聞いた航空会社としては、安全を確認するなどの必要が生じ、通常の業務を妨げられることになるでしょう。
なお、業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています(刑法233条)」
ほかの罪に問われる可能性はあるだろうか。
「『爆弾を持っている』という発言によって、航行中の航空機の針路を変更させたり、その他その正常な運行を阻害した場合、いわゆる『ハイジャック防止法』の航空機運航阻害罪に問われます。
航空機運行阻害罪は、1年以上10年以下の懲役に処される可能性もあります(ハイジャック防止法4条)」
●民事上の責任も発生する民事上の責任を問われる可能性はどうだろうか。
「こうした発言によって、航空会社に損害が発生した場合、航空会社から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。
航空会社は一定時間以上運航が遅れたときは、乗客に料金を払い戻すなどの規定があります。
運航を遅れさせたことによって、多数の乗客に払い戻しをしなければならなくなった料金や、そのほか航空ダイヤの乱れによる損害、安全確認のために要した費用など、航空会社からの賠償請求は高額になることも予想されます。
世界的にテロへの警戒感が高まっている昨今ですから、不用意な発言は『冗談だった』では済まされません。十分注意する必要があるでしょう」
石井弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/