2015年7月29日,新世代Windowsである「
Windows 10」が正式リリースの日を迎える。2012年10月に発売された「Windows 8」から数えて,3年ぶりとなる新Windowsがいよいよ登場するわけだ。Windows 8.x世代を導入した人はもちろんのこと,Windows 8.x世代へのアップグレードを見送っていた人も,この新Windowsには興味を惹かれているのではないだろうか。
では実際のところ,Windows 10とはナニモノで,これまでのWindowsとは何が違い,そしてそもそもゲーマーが積極的に導入すべきOSなのか。それを,数回に分けて説明していこうというのが本連載の趣旨である。第1回では,新しいWindowsが出るたびに混乱の原因となるエディションの違いや,既存のWindowsからのアップデート方法,アプリケーションの互換性といった,基本中の基本をまとめてみたいと思う。
なお,本連載では,Microsoftが事前に公開している「
Windows Insider Preview」(以下,Insider Preview)の,執筆時点で最新に当たるビルド――この第1回では「Build 10154」――を使用して話を進めていく。正式リリースが迫った状態におけるInsider Previewなので,機能面は最終製品とかなり近いはずだが,それでも,いくつか最終製品とは異なる部分や,最終製品が出てみないと断言できない部分もある。この点はあらかじめお断りしておきたい。
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7種類のエディションが用意されるWindows 10
Xbox One用も別途提供の予定
知っている人も多いだろうが,Windows 10にはPC用のOSだけでなく,スマートフォンや組み込み機器向け,そしてXbox One用など,さまざまなエディションが用意されることになっている。それをまとめたのが
表1だ。
表内の表記は,「分類」が対象ハードウェアによる大まかな区分けで,「エディション」が製品名,「対象ユーザー」はそのWindows 10や搭載機器が誰に向けて販売されるものか,「対応アーキテクチャ」は対応するCPUアーキテクチャ,「販売形態」はどのような方式で販売されるかを示している。
ARMアーキテクチャのSoC(System-on-a-Chip)を搭載するスマートフォンや8インチ以下のタブレット向けのWindows 10が「
Windows 10 Mobile」と呼ばれるようになったため,PC向けのWindows 10はこれと区別しやすいように,「
Windows 10 Desktop」という分類名が与えられていることに注意してほしい。また,「Desktop」にノートPCが含まれることも要注意だ。Windows 10 Desktopというのは,スマートフォンや8インチ以下のタブレット端末を除く,従来的なPC用のWindows 10を総称したものという理解でいいだろう。
残る2分類のうち,「
Windows 10 IoT」は,これまで「Windows Embedded」と呼ばれていたOSが再構成されたもの。「
特定機器用」は読んで字のごとく,
Mi
cro
so
ft
の特定製品,
たとえばXbox One向けに提供されるWindows 10などがここにカテゴライズされる。特定機器用のWindows 10は,OS単独で販売されることはない。
というわけで,PCゲーマーにとって最も重要なWindows 10は,Windows 10 Desktop系として分類されるものということになるが,あらためて紹介しておくと,内訳は以下のとおりとなる。
- Windows 10 Home:一般消費者向け
- Windows 10 Pro:ハイエンド志向の一般消費者とSOHO,中小企業向け
- Windows 10 Enterprise:大規模な企業や組織向け
- Windows 10 Education:教育機関向け
この説明だけでピンときた読者も多いと思うが,4Gamer読者にとって重要なWindows 10 Desktop系エディションは,Windows 10 HomeとWindows 10 Proの2つだけである。そもそも,Windows 10 EnterpriseとWindows 10 Educationは,製品ボックス版が流通したりしないので,ゲーマーが自分のPCに導入するようなケースはまず生じないという理解でいい。
Windows 10 HomeとWindows 10 Proの違いは,これまでのWindowsと基本的に同じだ。Windows 10 Proは,Windows 8.1 ProやWindows 7 Ultimate/Professionalから引き続き,リモートデスクトップのホスト機能を持ち,また,ストレージ暗号化機能である「BitLocker」を利用できる。ほかにも,企業ユーザー向けネットワーク機能である「Active Directory」を利用できたりもするが,対象をゲーマーに絞って話を続けると,いま紹介したような機能に興味があったり,必要だったりするする人向けのエディションが,Windows 10 Proであり,「自分には関係ないな」と思ったらWindows 10 Homeにしておけばいい,というわけである。
ただ,Windows 10 HomeとWindows 10 Proで,ゲーマーにとって気になる違いとなるかもしれない機能が1つある。それが「
Windows Update for Business」だ。
Windows 8.xまでと異なり,Windows 10では,Windows Updateによる更新プログラムの適用や新機能の追加が事実上強制となり,Windows 8.1以前ではできていた「Windows Updateを適用するかどうかの選択」が,ユーザーレベルではできなくなる。ユーザーが選択できるのは,更新適用後に,いつ再起動するか程度だ。
それに対し,Windows 10 ProやWindows 10 Enterpriseなどで提供されるWindows Update for Businessであれば,企業内のシステム管理者が,Windows Update実行の時間帯を設定したり,セキュリティ問題を修正する更新プログラムは適用しつつ,新機能の追加は適用しないように設定したりといった,細かい管理ができるようになるとされている。つまり,設定次第では,「ゲーム中にWin
do
ws
Up
da
teが動いてしまって悲劇を生む」自体を避けられる可能性があるわけだ。
「そんなに重要な違いがあるなら,Windows 10 Proを選ぶしかないだろう」と思うかもしれないが,話はそう簡単ではない。というのも,連載第1回の時点で明らかになっている情報では,Windows 10 Proを導入してWindows Update for Businessを使ったとき,ゲーマーが期待するような効果が得られるかどうかが分からないからだ。
そもそも,Windows Update for Businessの動作条件や設定方法に関する情報が公開されていないので,家庭のPCに導入できるようなものかどうかはまだ分からない。もし「Windows Update for Businessの利用にはドメインへの参加が必要」という条件があったとすれば,家庭で使うのは難しいだろう。付け加えるなら,現時点でも新機能の追加は延期できる可能性が高いことは判明している一方,「ゲームの実行中にセキュリティ問題の更新プログラム適用を延期する」ような設定が可能かどうかもまだ分からない。
本稿の執筆中に登場した新しいInsider Preview「Build 10162」で確認してみたが,Windows Update関連の設定項目は,Windows 10 ProとWindows 10 Homeで違いがなかった。どちらのエディションにも,「アップグレードを延期する」という謎設定があるのだが,これが何かを説明する「詳細情報」へのリンクが機能していないので,どういう機能なのか分からない状況だ。
このような状況なので,Windows Update for Business目当てでWindows 10 Proをゲーマーが選ぶべきなのかどうか,はっきりしたことは何も言えないというのが正直なところである。詳しくは後述するが,Windows 10 HomeからWindows 10 Proへのアップグレードには100ドル程度のお金がかかるので,Windows Update for Businessが気になる場合は,仕様の詳細が判明するのを待つべきだと思う。
なお,全エディションに共通の仕様変更としては,Windows 10で,DVD-Video再生用のコーデックが付属せず,DVD-Video再生機能のある「Windows Media Center」も廃止された点が挙げられる。「DVD-Videoコーデックが付属しない」のはWindows 8.xも同様だったが,Windows 10ではWindows Media Centerがなくなったため,DVD-Videoを再生したい場合には,再生ソフトなりコーデックなりを別途入手する必要がある。
ゲーマーからすると,それほど重要な変更ではないが,日々の生活のなかで「あれ?」と思うことがあるかもしれないので,念のためお知らせしておきたいと思う。
Windows 10は,Windows 8.1/7からの無償アップデートに対応。その前に押さえておくべきこと
一昔前まで,Windowsのアップグレードといえば,PCショップや量販店でOSの製品を買ってインストールするというのが一般的だった。だが,Windows 10ではそれも様変わりすることになるだろう。
それはなぜかというと,Windows 8.1
/7のユーザーは,
リリース後1年間限定で,
Windows 10への無償オンラインアップグレードが可能だからだ(
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Windows 8.1/7のユーザーであれば,ここ数週間,タスクトレイに「Win
do
ws
10を入手する」というアイコンが表示され続けているのに気づいていると思うが,
ここから「予約」を行っておけば,
7月29日以降に,
Windows 10の配信を受けられるようになる。
そのとき覚えておきたいことはいくつかあるのだが,1つは,7月29日の時点で,
2つめに,無償アップグレードでは,現在使っているWindows 8.1/7のエディションによって,アップグレード先となるWindows 10のエディションが決まってくることも押さえておきたい。
具体的な関連性は
表2にまとめたとおりだが,Windows 8.1の無印エディションとWindows 7 Home PremiumはWindows 10 Homeへ,
Windows 8.1 Proや
Win
do
ws
7
ProfessionalならWindows 10 Proへそれぞれアップグレードされる。
また,
無償アップグレードが提供されるのは,一般消費者向けのWindows 10
――
つまりWin
do
ws
10
De
sk
top系ではWindows 10 Home/Pro――に限られており,
企業向けエディションは対象外となる。
一般消費者向けであっても,Windows 7 Home PremiumからWindows 10 Proへ直接無償アップグレードしたり,逆にWindows 7 ProfessionalからWindows 10 Homeへと無償アップグレードしたりはできない。Windows 8.1やWindows 7 Home PremiumからWindows 10 Proにアップグレードしたい場合は,いったん,Windows 10 Homeへ無償アップグレードしてから,別途,Windows 10 HomeからWindows 10 Proへのアップグレードパックである「
Windows 10 Pro Pack」を購入する必要がある。
なお,Windows 8.1/7がそうであったのと同様に,x86版(32bit版)のアプリケーションや環境をまるごと引き継いだまま,x64版(64bit版)へ上書きアップグレードすることもできない。
さて,具体的なアップグレード方法だが,Windows 10のアップグレードは,
ちなみにWindows 8.1/7からWindows Update経由でアップグレードする場合は,それまで使っていたのWindows 8.1/7の状態やアプリケーションを引き継げるが,その条件として,Windows 7ならService Pack 1(以下,SP1),Windows 8.1なら8.1 Updateを適用済みでなければならないという条件がある(
表3)。Windows Updateで提供される重要な更新プログラムをきちんと適用している人なら,とくに意識する必要はないが,念のため事前に確認はしておいたほうがいいだろう。
一方,ISOファイルを使ってインストールメディアを作る場合は,既存のOSの状態やアプリケーションは引き継げないが,OSのバージョンなどを気にする必要はない。容量8GB以上のUSBフラッシュメモリと,多少の手間はかかるものの,
Windows 10の導入を機に,システムをきれいさっぱりしたいとか,複数のPCにインストール必要があるとかいった場合は,こちらを選択するのもアリだろう。
ところで,無償アップグレードをすると,アップグレード元となるWindows 8.1/7のライセンスは,アップグレード後にWindows 10のライセンスへと切り替わる。当然ながら,有効なWindows 8.1/7のライセンスがなければ,Windows 10にアップグレードできたとしてもライセンスは認証されない。
一時期,「海賊版Windows 8.1/7からでも,Insider Previewをインストールしておけば正式版にアップグレードできる」といった情報がインターネット上で出回ったことがあったが,もちろんそんなことはない。正式版のWindows 10へアップグレードするには,Windows 8.1/7の正規ライセンスが必須だ。
余談だが,Windows 8.1/7からWindows 10へと無償アップグレードしたPCで,
Windows 10の製品版はいくらになるのか?
無償アップグレードだけでなく,Windows 10のボックス版も販売される予定だ。ボックス版がいつ,どのようなSKU(Stock Keeping Unit,製品ラインナップ)で展開されるのかは,本稿執筆時点では不明確な点もあるのだが,7月29日以降に,オンライン販売や店頭販売が始まると思われる(
図1)。
また,
表1に記載していたとおり,いわゆるPCパーツとセットで販売されるDSP版も登場する予定だ(
関連リンク)。自作PCユーザーが,ハードウェアと同時にWindows 10を安価に入手する手段が提供されることは歓迎したい。
気になるのは価格だが,北米市場におけるボックス版およびダウンロード版の価格は,Windows 10 Homeが
119ドル,Windows 10 Proが
199ドル(いずれも税別)で,Windows 10 HomeをWindows 10 ProにアップグレードするWindows 10 Pro Packが
99.99ドル(税別)だ。いずれも,Windows 8.1時代とほとんど同じである。
現在のところ,国内価格は発表されていないが,たとえばWindows 8.1の場合,発売になった当時のドル円レートが約100円のところ,国内価格は1ドル約115円換算となる
1万3800円(税別)だった。翻って現在のドル円相場は120円強だ。当然,当時よりは高い国内価格が設定されるだろう。消費税も当時から3%上がっているので,けっこうハードルは上がるような気がする。
もっとも前述のとおり,Windows 8.1/7のユーザーであれば,発売後1年間は無償でアップグレードできるわけで,新規に購入するというのでなければ,おそらく生じるであろう値上げの影響を受けることはないだろう。そういう事情も踏まえ,日本マイクロソフトも“気兼ねなく”高い価格設定を付けてくると思われ,ダウンロード版やボックス版の価格は,基本的に値上がると筆者は予想している。
Windows 10 Mobileは無償アップグレードのみ
タブレット製品の登場はあるのか?
Windows 10 Mobileについても,簡単に説明しておこう。
Windows 10 Mobileは,Windows Phone 8.1の後継となるOSで,ARMアーキテクチャのSoC
を採用するスマートフォンやタブレット端末に向けたものだ。ただし,
ARMアーキテクチャならなんでも動くというわけではなく,
現時点では,
対応SoCがQu
al
co
mm
のSn
ap
dra
gonシリーズに限定されている。
現在市場に出回っているWindows Phone 8.1搭載端末には,今後,Windows 10 Mobileが無償アップグレードで提供される予定だが,リリース時期はWindows 10 Desktopよりも遅くなるといわれている。正式な発表はまだないが,おそらく2〜3か月後になるようだ。Windows Phoneがハードウェアにインストールされた形態でしか出荷されていないので,Windows 10 Mobileでも,OSのみのボックス版は存在しない。
なお,Windows 10 Mobileには,企業向けの「Windows 10 Mobile
少なくとも,一般消費者向けにWindows 10 Mobile Enterprise搭載スマートフォンが販売されることはなさそうだ。
タブレット端末はどうだろうか。Windows 10 Mobileのターゲットにはスマートフォンだけでなくタブレットも入っているが,今のところ,これを採用するタブレット端末が登場するのかどうかは,何も情報がない。付け加えると,現在市販されているWindows 8.xタブレットは,いずれもIntelのAtomプロセッサを採用しているので,
そうなると,ARM系SoCを採用する新しいカテゴリのWindows 10 Mobile搭載タブレットが登場してくる可能性もありそうだが,ARM系Windows 8.xであるWindows RTが商業的には失敗に終わったこともあり,手がけるメーカーがあるのかどうかは疑問だ。おそらくMicrosoftとしては,Windows 10 Mobile搭載タブレット端末の可能性に含みを持たせておき,状況を見て提供するかどうかを判断するつもりなのではないだろうか。
Windows 10ではどんなアプリが動くのか?
iOSやAndroidのアプリを動かす技術も開発中
「Windows 10では,PCでもタブレットでもスマートフォンでも,同じアプリを利用できる」という話を聞いたことがあるかもしれない。最後に,その話をしておこう。
Windows 10では,「Universal Windows Platform」(以下,UWP)と呼ばれるアプリケーションの実行環境が用意されており,それに対応する「UWPアプリ」であれば,どのエディションにおいても動作するようになっている。
Windows 10が動作するハードウェアには,大小さまざまな種類があり,PCだとしても,ゲーマー向けのハイエンドモデルから,携帯性重視の2-in-1など,ハードウェア構成は大きく異なる。そのため,UWPのAPI(Application Program Interface,あるソフトウェアを開発するときに利用可能な 命令や関数を集めたもの)には,共通のコア部分と,個別のハードウェアに対応した部分―――スマートフォンならタッチ操作や電話機能など――が用意されることになった。
既存のPCゲームなどといった,PCのハードウェアを前提に開発された非UWPアプリが,PC以外のWindows 10マシンで動かないというのは容易に想像できると思うが,UWPアプリであっても,特定のハードウェアが存在する前提で開発されたものは,当該ハードウェアが存在しなければ動作しないものになる。逆に,それこそ「タッチパッドとマウスとゲームパッドで操作できる」などといった形で,ハードウェアの違いを吸収できるUWPアプリであれば,PCとスマートフォン,Xbox Oneのすべてで動作させることも可能だ。実際,Windows 10に標準でインストールされる「メール」や「カレンダー」,メディア再生アプリの「映画とテレビ」「ミュージック」「フォト」などは,UWPアプリとなっている。
ここまでの話を聞いて,「UWPアプリというのは,Windows 8.xで採用されていた『ストアアプリ』が名前を変えたものなのだな」と思ったかもしれないが,実のところ,UWPアプリとWindows 8.xのストアアプリは別のものだ。もちろん,「Universal Windows Apps」とも異なるアプリである。非常に分かりにくいのだが,ここで少し整理してみよう。
まず,一番分かりやすいのは,先ほども簡単に紹介した,従来型のPC用アプリケーションだ。Microsoftはこれを「デスクトップアプリ」と呼んでいるが,これはWindows 10 Desktop系エディションで,これまで同様にインストールして利用できる。Windows 8.1/7用のデスクトップアプリすべてがWindows 10で動作するという保証はないが,「今まで使えていたPCゲームなどのアプリケーションは,Windows 10にアップグレードしても基本的には動く。オンラインゲームなどでは,リリース当初は動作保証外となるものもあるだろうが,パブリッシャやデベロッパが対応してくれるだろう」くらいの認識でいて,大きな問題はないはずだ。
また,4Gamer読者にユーザーはそう多くないと思われるが,Windows Phone 8.1専用のアプリも,同じように,Windows 10 Mobile系エディションで利用できる見込みだ。
というわけで分かりにくいほうにいくが,UWPアプリは,ハードウェアの違いが吸収される限り,すべてのWindows 10デバイスで利用可能だ。Windows 8.x用のストアアプリは,Windows 10 Desktop系でしか動作しない。2014年に登場した「Windows 8.xとWindows Phone 8.1の両方で動作するよう,2種類のOS向けプログラムコードを1つのパッケージにまとめ,単一のアプリのように振る舞うよう設計したもの」ことUniversal Windows Appsは,Windows 10 Desktop系とWindows 10 Mobile系エディションのどちらでも動作するようになっている。
ただし,話はまだ終わらない。
Windoww 10 Desktop系エディションのリリースには間に合わない見込みながら,Microsoftは,Windows以外のプラットフォーム向けアプリケーションをWindows 10上で動作させる,「
UWPブリッジ」という技術を開発中だ。
このUWPブリッジは,iOSやAndroid,あるいは「Classic Windows Apps」とも呼ばれる,Win32 APIや.NET Frameworkベースのアプリ,はたまたWebアプリといった4つのプラットフォームに向けて開発されている。対象となるプラットフォームごとに,対象となるWindowsの分類が異なっており,それをまとめたものが表4だ。
いずれのプロジェクトにおいても,対象となるプラットフォーム用に開発されたアプリケーションを,UWPブリッジ経由でUWPアプリへ変換することで,対象となる分類に属するWindows 10上で動作させることができるようになる。見てもらうと分かるが,Androidがターゲットの「Project Astoria」はWindows 10 Mobileのみが対象となるのに対し,iOSがターゲットの「Project Islandwood」ではWindows 10 DesktopとWindows 10 Mobileの両方が対象だったりと,なかなか難度が高い。
また,表には入れていないが,Project AstoriaではAndroidアプリがほぼそのまま動くとされている一方,Project IslandwoodではデベロッパレベルでWindows 10向けの移植作業が必要であるなど,手間はプロジェクトごとに変わってくる。Microsoftのもくろみどおりに,「UWPブリッジで他のプラットフォームから簡単に移植できますよ。だからUWPアプリを作りましょう」となるかどうかは,まだ分からないというのが正直なところである。
このあたりを踏まえ,「Windowsの分類ごとに,どのアプリが動作するのか」をまとめたものが
図2である。
Windows 10の基礎情報となる,エディションの種類とアップグレード手順,アプリケーション互換性の説明は以上のとおりである。Windows Update for Businessのように不明確な要素もあるが,自分の使っているWindowsがどのエディションにアップグレードされるかは,理解してもらえたのではないだろうか。
連載第2回では,Windows 10 Desktopのユーザーインタフェース系について解説する予定だ。