プラチナの地金販売が急増している。通常、金より高いプラチナだが、金価格を下回る異例の状態が長期化し、割安感が出ている。貴金属地金販売最大手、田中貴金属工業(東京)の1〜11月の販売量は1万4446キログラムとなり、既に年間過去最高を記録。同社の販売担当者は「初めて購入する客も目立つ」と話している。
プラチナは宝飾用としても人気は高いが、ディーゼル車の排ガスの有害物質を除去する触媒など工業用が6割前後を占める。中国経済の減速懸念や、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲンのディーゼル車排ガス不正問題を受け、今年の価格は下落基調をたどった。
田中貴金属の月平均の店頭価格(税抜き)は、金が1月に1グラム当たり4803円、11月に4333円だったのに対し、プラチナは4799円から3601円へと急落。1月半ばに約1年9カ月ぶりに金との価格が逆転して以降、価格差は広がっている。
同社の従来の年間最高販売量は2008年の1万3596キログラム。価格下落で若い世代にも顧客層が広がり、今年12月も中旬まで前年比27倍と好調な売れ行きだ。
徳力本店(東京)の販売量も、前年比で約5倍に拡大。標準の500グラムより小型の100グラムの地金が「想定以上に売れ、在庫が底を突きそうになったこともあった」と明かす。多くの顧客が、将来の値上がりを期待して買っているという。