いつも「ミュージック フロム ゲームワールド」をご愛読いただき,ありがとうございます! さて2015年最後となる今回は,特別企画として,現在は廃盤になってしまい入手が困難なゲームのサントラCDの中から,配信版なら手軽に購入できる10タイトルをピックアップしてご紹介します。寒いので部屋から一歩も出ずにゲームミュージックを満喫したいという人はもちろん,欲しかったけれどこれまで手に入らなかったという人も,これを機会にぜひ聴いてみてください。
■記念すべき「イース」初のサントラで原点を知る
現在まで,多数のサントラやアレンジアルバムが出ている「イース」初のサントラがこの「ミュージック フロム イース」。PC-8801SRが鳴らすFM音源のBGMをメインに,他機種版によるPSG音源,さらに米光 亮氏によるアレンジバージョンを収録した1枚です。
FM音源の特性をフルに使って作曲された美しい楽曲の数々は,現在でもまったく色あせることはありません。これらの楽曲には多数のアレンジバージョンが存在しますが,このオリジナル版こそがまさしく“本物”。新しいファンが原点を知るたびに,そして当時,本サントラに触れたファンが名盤の再確認をするたびに,このアルバムは永遠に輝き続けることでしょう。
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■SFC,MEGA-CD,PCエンジンのサウンドを網羅
1990年代の主力ハードだったスーパーファミコン,MEGA-CD,PCエンジンにリメイク移植された「ぽっぷるメイル」は,ハードごとに差別化されたゲームシステムやサウンドが味わい深かった作品です。その3機種のサウンドを網羅した本サントラは,メルヘンチックなファンタジー世界を演出するポップな楽曲で多くのゲームファンを魅了しました。
角の丸いサンプリングオーケストラサウンドが光るSFC版,オリジナルのPC版サウンドを最大限に生かした良質なアレンジが聴けるMEGA-CD版,ドラムのビートを利かせた大胆なシンセサウンドで構築された’90年代デジタルポップの雰囲気がよく出ているPCエンジン版と,ハードごとの違いも見事に表れており,当時の空気を感じさせてくれる点でも嬉しい1枚です。
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[DISC1]
[DISC2]
■ロック色の強いミステリアスな楽曲が世界観を彩る
スーファミ最後期の1996年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売された「ルドラの秘宝」は同年にサントラCDもリリースされましたが,現在は廃盤。中古価格も高騰し入手が難しくなっていましたが,2008年にスクウェア・エニックスのクラシックタイトルの音源を配信でリリースするシリーズ,Legendary Tracksの第3弾として「ルドラの秘宝 Original Soundtrack」が登場しました。
本作の作曲は1980年代に活動していた伝説的プログレバンド・ノヴェラや,ハードロックバンド・アクションにベーシストとして在籍していた笹井隆司氏。その経歴を生かし,「Battle for the Fields」に代表されるロック色の強い楽曲を,世界観に合ったミステリアスなメロディに乗せて聴かせてくれます。Legendary Tracksシリーズでは「ライブ・ア・ライブ」と「バハムート ラグーン」も配信されているので,こちらもチェック!
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■「電車でGO!」CMソングから広がったブッ飛んだ1枚
シングル「電車で電車でGO!GO!GO!2000」のヒットをきっかけに,ZUNTATA-J.A.M.が世紀末に放ったブッ飛んだ1stアルバムがこちら。
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リンク:ZUNTATA公式サイト
■オーケストラ調のサウンドが気持ちを湧き立たせる
ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が1998年にリリ−スしたアーケード向け対戦格闘ゲーム「ソウルキャリバー」のサントラがこちら。
ファンタジーの世界観にマッチしたオーケストラ調のサウンドが魅力のこのサントラ。音楽面での人気の高さもうなずける,アッパーな曲調で気分を盛り上げてくれます。CD版は中古市場でプレミア価格が付いているので,今なら断然,配信版での購入がお得。NAMCO SOUNDSからは,「ソウルエッジ」と「ソウルキャリバー Broken Destiny」のサントラも配信版がリリースされているので,こちらも合わせてどうぞ。
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■美しいピアノアンビエントが宇宙空間に響き渡る
2000年にタイトーからアーケード向けにリリースされたシューティング「サイヴァリア」のサントラCDは,単体版のほかに,PS2版の限定版に同梱されたものがありましたが,現在はどちらも入手困難な状況になっています。そこでオススメしたいのが,安価で入手できる配信版です。
ゲーム人気の高い「サイヴァリア」ですが,音楽も印象強い仕上がりです。アシッドなリズムと,ピアノが奏でる美しくも儚いメロディによる,アンビエントかつスタイリッシュなトランスミュージックという斬新なサウンドが多くのファンの心を掴み,登場から15年が経過した現在でも,ゲーム音楽ファンから根強く支持されています。続編「サイヴァリア2」のサントラも同様の方向性で配信されているので,「1」のサントラが気に入ったら迷わずこちらも聴いてみてください。
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■「アトリエ」シリーズ,阿知波大輔氏の和風サウンド
2003年にガスト(現コーエーテクモゲームス)から発売されたPS2用ソフト「大正もののけ異聞録」のサントラがこちら。サントラCDはガストのオンラインストア専売でのリリースでしたが,現在は配信版で入手できます。
「アトリエ」シリーズの楽曲を多数手掛けてきた阿知波大輔氏が作曲を担当しており,和風のメロディを軸に和楽器とシンセを融合させた,情緒感のあるデジタルサウンドが特徴です。2000年代らしさを感じさせる本作のサウンドも,こうして改めて聴くと味わいがあります。永倉秀恵が歌うボーカル曲「カギロヒ」「ユズリハ」の神秘的なアレンジも魅力的で,ゲームのファンだけでなく,「アトリエ」シリーズで阿知波氏の名前を知ったという人にもお勧めしたい1枚です。
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■大空の冒険を壮大かつ開放的なサウンドが盛り上げる!
2001年にソニー・コンピュータエンタテインメントからリリースされたPS2用ソフト「スカイガンナー」は,大空を舞台にコミカルで個性的なキャラクター達が活躍する3Dシューティングです。2003年にリリースされたサントラCDは廃盤になっていますが,今なら配信版が安価で手軽に購入できます。
陰下真由子氏作曲による音楽も壮大かつ開放的なオーケストラサウンドで,空戦を気分良く盛り上げてくれる「Together with the Wind」等,心からワクワクさせてくれる曲が満載です。また,大坪 正氏作曲&KAZCOのボーカルによる主題歌「遥かな空へ」の意外ともいえる哀愁漂う曲調はインパクト抜群で,今聴いても心に染みます。根強いファンも多い本作,まだサントラを手に入れていなかった人はこの機会にぜひ!
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リンク:「スカイガンナー」公式サイト
■雨の降る夜,ひとり酒とともに浸りたいジャズアルバム
1987年に第1作が登場し,以降もコンスタントに新作がリリースされてきたアドベンチャーゲーム「探偵 神宮寺三郎」シリーズの9作め「探偵 神宮寺三郎 KIND OF BLUE」のサントラです。6月の雨の季節に失われたジャズの楽曲を捜し求めるという音楽要素の強いシナリオとリンクするかのように,シリーズでもとくに音楽面でのアピール要素が多く,収録曲はジャズテイストの強いBGMが占めています。
まるで楽器同士が会話をしているかのように,時に自由で優雅に,時に主張し合うように絡まる演奏は,音だけで紡ぐストーリーのようです。当時,ストーリーの鍵となる「Blue, Over the Blue」がエンディングで流れ始めたのを聴いて自然と涙がこぼれてきたのを思い出しました。
ちなみに,現在では配信版でしか入手できない本サントラが,「蔵出し限定版」として2016年1月23日に開催される「東京ゲーム音楽ショー2016」で特別販売されます。販売はディスクのみで,ジャケットとブックレットのダウンロードパスワードが付属するとのことです。ディスクだけでも現物が欲しい人は,ぜひイベントへ足を運んでみてください!
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■シリーズ楽曲をFM&PCM音源で並木 学氏がアレンジ!
Wiiウェア用の配信タイトルとして2008年にリリースされた「グラディウス リバース」は,ドット絵で表現されたグラフィックスやFM音源を使用したサウンドなどで,往年の「グラディウス」ファンを沸かせたタイトルとして人気を集めました。
音楽面では,過去にさまざまなハードでリリースされてきた「グラディウス」シリーズの楽曲を,FM&PCM音源を使って並木 学氏がアレンジしているのが見どころで,2000年代後半に入ってこのサウンドが聴けるのか! と歓喜した人も多かったのではないかと思います。本作のサントラは2009年にCD化され,ゲームで使用された楽曲のほか,未使用曲や,アレンジ楽曲のオリジナルバージョンも同時収録されていました。現在はメーカー在庫切れで実質廃盤となっていますが,配信版が入手できます。まだ聴いていないというグラディウスファンは迷わず購入しましょう!
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ということで,今回は10枚を厳選して紹介してみましたが,いかがでしたでしょうか。サントラCDが欲しいけど,プレミア価格で1万円以上するんだよなあ……と嘆いていたあのタイトルも,配信版なら安価で購入できて,すぐに聴けるので大変便利です。皆さんもぜひ,欲しかったゲームサントラを配信版で手に入れてみてください。それでは,よい年末年始のゲームミュージックライフを!
■■風のイオナ■■マーベルランドで産まれ,フェアリーランドで育ち,モタビア星に単独移住して現在に至るゲーム&ゲーム音楽好き。ほかの趣味は邦楽インディーロック追跡,突発自転車旅行,広島東洋カープの応援など。ゲーム音楽好きが高じて本連載のほかに「ゲームサイド」シリーズ誌でゲーム音楽コーナー「撃音!」「激音!」「劇音!」の連載,ニコニコ生放送公式CHのクラリスチャンネルでゲーム音楽番組「Fami on♪」のプロデュース&パーソナリティを担当。さらにゲーム音楽レーベル・クラリスディスクではスーパーバイザーも担当。今年の目標はWii Uを購入すること(3年連続3回目)。
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