大手企業が次々と過去最高益を発表し、ボーナスも上昇傾向といわれる中、景気を左右する国内消費が伸び悩んでいる。そこで12月24日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、いまの日本人の欲望を世代別で調査した。
バブル世代代表として登場した千葉県に住むIさん(50歳)は、1988年に三井ホームに入社。当時のお金の使い方について「給料はすべて使い切るような生活をしていました。遊ぶことしか考えていなかったですね」と明かす。
バブル世代は「冬は苗場、夏はハワイでバカンス」冬は苗場でスキー、夏はハワイでバカンス。貯金が10万円しかなくても、400万円の年収を超える額のドイツ車を即決ローン購入。月々の返済額は相当なものだったという。
しかし子どもが生まれて、一気に節約モードへ。現在Iさんは不動産会社を経営し、年収はおよそ700万円。教育費と老後資金を貯金するため、小遣いは月3万円。リサイクルショップで高品質の服を買い、仲間との集いは会費3000円のバーベキューだ。
「お金使わなくても、これぜいたくだよねという感覚が実現できているので、これが今の最高の楽しみですね」
そうIさんは語るが、いまだに仲間と積立金で海外旅行に出かけ、35万円のへそくりで自分の腕時計が欲しいという感覚も残る。社用車として450万円のピックアップトラックを3年前に購入したりと、車へのこだわりも捨てきれない。
電通総研の西井美保子さんによると、いわゆるバブル世代は「物にステータスを求める世代」で、優越感を得られる消費に向かう傾向がある。しかし子どもがいる人も多く、欲望と節約を両立させる「メリハリ消費」とのことだ。
今どきの若者はSNSにアップ「スルメイカのような消費」一方で「あまりお金を使わない」とされる若者世代はどうか。アパレルショップで働く22歳のNさんは、洋服が好きで月に3~5万円購入するが、ほとんどはリサイクルショップで購入し、ブランドにこだわらない。自炊や弁当で食費も節約している。
しかし話題の店やジャニーズのコンサートなどに行くと、欠かさずSNSに写真をアップしている。よくお金を使うのは、ライブやディズニーランドなど体験型の消費。今欲しいものはと聞くと「イルミネーションに行きたい」と答えた。
番組では、高級リムジンを5人で貸切る女子会や、ドレスをレンタルしてプロに撮影してもらう「撮影女子会」も紹介された。いずれも1~3万円と安くはないが、写真をSNSにアップするために人気だという。SNSが新たな消費を生み出しているのだ。
「物を所有するだけではなく、できごとを買う。SNSにアップ後は思い出となって何度でも美味しい。スルメイカのような消費です」
「不況生まれのデフレ育ち」を自称する29歳の西井さんは、若者世代の欲望をこのように分析するし、つながりを充実させていく「つな充」の商品に注目が集まっていると説明した。
結局は「収入の違い」が影響してるのでは?大浜キャスターは若者の欲望を「見栄より納得感。自慢より共感」と評した。分かるような気がするものの、SNSでの反応を期待してお金の使いみちを選択することも、一種の「見栄」や「自慢」という見方もできる。モノからコトに、よりシフトしているとはいえるが、機能より心理的な満足がポイントになっているのは共通している。
ともかく、バブル世代と異なる若者世代の消費行動を、企業側がつかみ切れていないのが現状だ。しかしよく言われる「アルコール離れ、外食離れ」も、コストパフォーマンス重視で選択をしているだけで、外食を全くやめたワケではない。少ない資源と時間を使いたい考えであって、欲望自体がなくなっているわけでないだろう。
西井さんは「車離れ」にしてもカーシェアリングやレンタカーでもいいという考え方になってきていると解説し、「利用のしかたの提示や使うシーンに寄り添うことで、『若者の××離れ』も止めることができるのではないか」と提唱する。
現状ではボリュームが大きいシニア層に注目が集まり、若者世代は「無視されている状態」。今後は「次の一手として若者世代を押さえていくことは企業に求められています」とまとめた。でも結局は20代の収入はこの25年間で右肩下がり。「そもそも享楽的な無駄遣いする金がない」という点をもうちょっと強調してもよかったのでは?(ライター:okei)
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