<プラチナエンド>担当編集者に聞く「デスノート」コンビの新作 謎の原作者・大場つぐみはどんな人? | ニコニコニュース

「プラチナエンド」のイラスト (C)大場つぐみ・小畑健/集英社
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 大ヒットマンガ「DEATH NOTE(デスノート)」や「バクマン。」を生み出した大場つぐみさん(原作)と小畑健さん(画)の強力コンビが月刊マンガ誌「ジャンプスクエア」で始めた新連載「プラチナエンド」。2015年11月から連載は始まったばかりだが、ネットでの熱心な書き込みも多く注目度は高い。「デスノート」でも2人を担当編集として支え、「プラチナエンド」でも担当した吉田幸司さんに話を聞いた。

【写真】プラチナエンドのカラーカット

 ◇新作のアイデアは「バクマン。」連載時に構想

 「プラチナエンド」は、親戚から虐待を受けて人生に絶望した少年・架橋明日(かけはし・みらい)が、天使の「ナッセ」から、「天使の翼」と「天使の矢」の二つの能力を授けられる……というストーリーだ。第1話では、飛び降り自殺を図った明日がナッセに助けられ、家族の死についての秘密を知ってしまう。第2話では、「天使の矢」には、人を魅了する「赤い矢」と、人を殺せる「白い矢」の2種類が存在し、能力にまつわるさまざまなルールが明らかになっていく。また明日と同じ能力者が能力を悪用したり、さらに天使たちが「神」の座を巡って争う構図も明示される。

 翼と矢を使った作品の構想は、既に「バクマン。」の連載時に大場さんから聞かされたアイデアで、吉田さんはそれを「面白い」と考えたのがきっかけだという。そして吉田さんが、週刊少年ジャンプからヤングジャンプ、ジャンプスクエアと三つの編集部を変わり、新しいことに挑戦しながら試行錯誤をし、たどり着いたのが、翼と矢の話、つまり「プラチナエンド」だった。吉田さんは「月刊マンガ誌だと、小畑先生の画が存分に生かせると考えた。大場先生のネームを小畑先生が手を入れてコマ割りを大きく変えることもある。月刊で1話分のページ数が増やせたら、ネームの自由度が増える」と考えた。

 天使の存在、使える能力が設定されたルール上の戦いなど、「プラチナエンド」には「デスノート」を思わせるシーンがある。吉田さんは「正直言われるとは思いましたが……」と苦笑いしながら「でも、『デスノート』を考えさせる意図はありません。面白いマンガを作りたいのがスタートラインですから」と関連がないと断言する。第1話の連載の手応えについて「大場先生の話は面白いし、小畑先生の画は私の予想を上回ってきた。すさまじい出来になったと思いますよ」と胸を張る。

 ◇大場つぐみはアイデアを捨てられる人

 原作担当の大場さんといえば、謎の多い原作者としてファンの間では話題になっている。その正体について吉田さんに聞くと「大場先生は表に出るのが好きではないんですよ。インタビューもファンブックに載せたぐらいでほぼ存在しないと思います。作家は人前に出るのが苦手な人が多いんです。それと尾田(栄一郎)先生、岸本(斉史)先生もそうですが、ジャンプの作家でホームページを持って情報発信する人はいない。(持たない)理由は気にしたこともないんですよね」と説明する。

 さらに「大場先生と小畑先生は、打ち合わせでも同席しないし、(2人が)直接会ったこともほとんどありません。これは最初からそうだったことが大きいかも。(連載でコンビを組む)マンガ家同士は実際に会う派なのか、会わない派なのか、僕が知りたいぐらいですね」と話す。

 では、大場さんのすごみを感じる点について尋ねると、吉田さんは「アイデアを捨てられることでしょうか。いくら良いアイデアを思いついても、マンガが面白くならないと意味はないんです。大場先生は、アイデアがマンガとして面白くなるには、どうすればいいかを考えていますからね」という。

 「プラチナエンド」は9月に大場さんと小畑さんのコンビで連載されることが発表されると、「あのコンビの連載で、注目しない方がおかしい」(大手アニメ会社社員)という声が出るなど、エンタメ業界関係者の注目を集めた。近年は、有力作の第1話からアニメ化や映画化のオファーがあることも珍しくない。そこでアニメ化のオファーがあったか?と聞くと、吉田さんは「(窓口の部署に)あるのかもしれないけど、そこは考えても仕方がないので、まずはマンガを面白くすることを第一に考えたい。週刊連載から月刊連載になって、違いを出せるかにこだわらないと。2人のサポートを徹底して面白いマンガにしたい」と意気込んでいる。