出版不況の中で唯一の“成長分野”とされる、若者向けのイラスト付き小説「ライトノベル」も、2年連続減の約225億円(出版科学年報調べ)となり、縮小傾向だ。そんな中で、昨年に続きインターネット発の作品が伸びているという。2015年のライトノベル市場を振り返りながら、2016年の展望を探った。
◇ネット発小説がさらに拡大へ
ライトノベルのコーナーが充実している東京・秋葉原にある書店「書泉ブックタワー」。同店で売れたライトノベルシリーズ別の売り上げランキングによると、2015年の年間ランキング(2014年12月1日〜2015年11月30日)は、1位が丸山くがねさんの「オーバーロード」だった。2位は「例のヒモ」が話題になった大森藤ノさんの「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(ダンまち)」で、3位は「ゲート」だった。トップ3はもちろん、トップ10のうち7作品がネット発の小説だ。
ライトノベルに精通する同店の田村恵子さんは「依然としてネット発の小説が強い」と言い切る。店内の売り場スペースを前年より5割増やしたものの、ネット発小説のレーベルが増え、置き場に困るほどだという。店内売り場の全体でも、約4分の1はネット発の小説が占める。この流れは2016年も続きそうで、それらの作品がテレビアニメ化されることで、さらに加速するとみている。
◇ネット小説人気も紙媒体と「住み分け」
1位の「オーバーロード」は元々人気作だったが、アニメ化で「全巻買い」の客が増えたのがトップの理由だ。全巻がそろわない「歯抜け」の状態になると普通は避けられるが、さらなる売り切れを恐れた客が残りの巻数を買っていく……という流れになった。田村さんは「作品の設定がアニメに合ったのでしょう。しかし、ここまで一気に売れるとは」と話す。2位の「ダンまち」も「例のヒモ」効果が大きく後押ししたことに加え、アニメの放送中に新刊が発売されたのもプラスに働いたと指摘する。
そして「妙な売れ方」と田村さんが驚いたのが、4位の「魔法科高校の劣等生」だ。アニメの放送が終わって人気が落ち着いたと思いきや、原作のライトノベルで主人公の司波達也と妹の司馬深雪が「婚約者」になる展開に突入すると、売れ行きが再度伸びたという。田村さんは「売り上げの急増はアニメ化が普通。既存の人気作が、今回のような作品の展開をきっかけに売り上げが伸びたとみられるケースは過去に覚えがない」と明かす。
好調なネット発の小説だが、田村さんは「可能なら1年に3回は出すのがベター。執筆スピードが遅いと人気下落の傾向がある」と話している。
また、ネット発小説が人気になると、紙媒体に展開しても売り上げが落ちると考えていたところ、今は違う流れになりつつあるそうだ。ウェブ発小説が紙媒体で発売されると、書き下ろしエピソードを追加したり、挿絵を入れたり、読みやすいようにページの構成を変えることで、もう一度読む価値が生まれて売れるようになったという。つまり作品を発表するネットは「試し読み」の役割を果たし、お気に入りの作品を紙媒体で購入して楽しむという「住み分け」ができつつあると指摘している。