爆買いブームの裏で中国人のマナーが深刻化するワケ | ニコニコニュース

中国人には公共心がない!? (C)孫向文/大洋図書
デイリーニュースオンライン

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。国内の好景気を受け、ここ数年、日本に観光旅行に訪れる中国人は激増しています。中国人観光客による「爆買い」は、2015年の「ユーキャン・新語・流行語大賞」に選出されました。これらの行為は日本側に多額の収益を与えるというメリットがある一方、中国人観光客のマナーの悪さを指摘する声も多数寄せられています。

会計前にアイスを食べた挙句、逆ギレして暴行

 一例をあげると、2015年9月26日、中国人夫妻が札幌市のコンビニエンスストアに入店した際、妻が会計前に商品のアイスクリームを食べはじめてしまいました。店員が妻を注意すると夫が激怒し、顔面を殴打したり蹴り飛ばすといった暴行を店員に加えたそうです。中国国家観光局は12月16日、ウェブサイトの「不文明行為記録」と呼ばれるブラックリストに掲載、掲載期間中は出国や銀行取引などで制限を受ける可能性があるそうです。

 日本のみなさんも行列に勝手に割り込んだり、公の場で子供に用を足させている中国人の姿を、TVニュースで目にした経験があると思います。中国人の公共心の低さは、交通機関に乗車する時の様子を見れば明らかです。

 中国では電車やバスが到着した際、乗客たちは座席に座ろうと一斉になだれ込みます。僕が子供のころ、母親とバスに乗車する際は必ず「席に座りなさい!」と母親にせかされました。僕が座席を確保できずにいると、「鈍い子ね!」などと叱責されたものです。中国で交通機関の座席に座る行為は、日本の「椅子取りゲーム」のような感覚です。人々は我先へと席を求め、座れたものは「勝者」、そうでなかったものは「敗者」と見なされるのです。

 対して日本では、交通機関内の乗客が降りてから人々が乗車しはじめます。誰かに席を譲ったり、他人が座れるように座席のスペースを開けることも珍しくありません。先日、中国から僕の友人が訪日した際、交通機関内で互いに「譲り合う」日本人たちの光景に大変驚いていました。

 このように「傍若無人」な中国人の中でも、1960年代後半に発生した「文化大革命」時に青少年時代を送った、いわゆる「紅衛兵」(毛沢東の思想に基づき、破壊活動を行った団体、参加者の総称)世代のマナーの悪さは、国内でもたびたび指摘されています。

 例を挙げると、2015年4月12日、女子中学生がバス内で席を譲らなかったことに腹を立てた老人が、「頭も悪い上に道徳心もない!」と彼女を罵倒したあげく、彼女が通学する学校に抗議するという事態が発生しました。実はその時、女子中学生は生理痛で席から動くことができなかったのです。後日、彼女はブログに「今の中国は老人たちの公共心が低下しているのではありません。もともと公共心の低い人たちが老人となっただけです」と書き込みました。これは紅衛兵世代のマナーの悪さを揶揄した言葉でしょう。

 それ以外にも、電車内で男子小学生が初老の女性に席を譲ってくれとお願いした際、女性が小学生のバッグを投げ捨て「学校に連絡して、退学に追い込んでやる!」と脅迫したり、席をめぐって若い女性と初老の女性が口論になった際、初老の女性が若い女性の衣服を剥ぎ取り半裸にしてしまった、といった事例が相次いでいます。普通の国では若い世代が老人たちに危害を加えることがありますが、中国では逆転現象が発生しています。

 僕が祖母から聞いた話によると、かつては中国人たちの心にも「譲り合い」、「助け合い」といった公共心が根付いていたそうです。「悪いことをするとお天道様(太陽)のバチが当たる!」というのは、昔の中国の親が子供を叱る時によく使われた言葉だそうです。

 しかし、文化大革命の影響により中国からは道徳心が失われ、代わりに「自分さえよければいい」という即物主義的な思想がはびこってしまったのです。日本など先進国に旅行した中国人たちが現地の人々のマナーの良さに影響され、即物主義から脱却してもらいたいと考えているのですが、海外旅行が可能な中国人は、ある程度裕福な層に限られているのが現実です。

 いずれにせよ宗教、道徳を否定する共産党政府が実権を握っている限り、中国人全体のマナーが向上することはないでしょう。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)