「捕らわれの象かわいそう」=ネットで話題、飼育員ら困惑―井の頭公園の「はな子」 | ニコニコニュース

 井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)の象「はな子」の飼育環境をめぐり、ネット上で「コンクリートに囲まれ劣悪」「一頭だけでかわいそう」と話題になっている。この騒動に、飼育担当者は「飼育には細心の配慮をしている」と話し、来園者からは「はな子は地元の人々に愛されている」と困惑の声が上がる。

 はな子は2歳のとき、戦後初めてタイから贈られた。69歳で、国内の象では最高齢だ。

 騒動の発端は昨年10月に書かれた英文ブログ。寂しげな写真とともに「木も生えていない狭いコンクリートの囲いの中にたった1頭で生気なく立ち尽くしている」と記載され、フェイスブックなどで一気に拡散した。

 ネット上では、はな子を別施設へ移すよう求める約30万の署名が集まり、外国メディアでも取り上げられた。タイの英字紙バンコク・ポストは「タイの多くのネットユーザーも、はな子をタイに戻すべきだと訴えている」と報じた。

 これに対し、同園の飼育展示係長堀秀正さん(50)は飼育員の努力を理解してほしいと話す。園では、歯が1本しかないはな子が消化しやすいよう、皮をむいたバナナと麦、米を合わせたおにぎりを毎日用意するなどしている。

 一方で、土の飼育場の方が好ましいことも認める。しかし、維持には多額の費用が掛かり、財源の大部分を税金で賄う小規模の公立動物園には実現困難だ。

 象は本来群れで暮らすため、1頭だけではかわいそうだとの主張にも理解を示すが、移動には否定的だ。高齢のはな子にとって、輸送は大きな負担になる。枝が折れるささいな音でも警戒して動かなくなるほど神経質だといい、環境の変化が与えるストレスは計り知れない。

 天候に恵まれた日曜日、はな子が器用に鼻を使い水を飲むと、来場者から歓声が上がった。5歳の孫を連れた三鷹市の主婦山田恵子さん(67)は「この子の父親が小さいときもはな子を見に来た」と懐かしそうに話した。杉並区の会社員泉谷江美さん(63)は「はな子は動物園のシンボル。いなくなったら悲しむ人はたくさんいる」と語った。