激戦の関東予選大会で優勝した十文字高校(関東第1代表/東京)を、0-2で退けた岡山県作陽高校(中国第1代表/岡山)が1回戦を突破した。作陽はこれで2年ぶりの1回戦突破。ベスト8に進出した2年前のような上位進出を目指す。
この日のヒロインは、2年生ストライカーのFW北方沙映だった。11分に浮き球のパスを受けて劣勢だったチームにリードをもたらすと、71分にも左CKの流れから味方のパスを受けてゴールネットを揺らした。
試合は80分を通して十文字のペースで進んだため、作陽にとっては疲れの残る試合となったが、2得点はどちらも十文字守備陣の一瞬の隙を突いた見事なゴールで、勝負強さという点では明らかに作陽に分があった。
「1点目は相手のGKが高いポジショニングを取るという情報があったので、頭上を狙ってループシュート。2点目はボールを受けてターンしてシュートっていう練習でも何度もやった形」と思い描いた2得点に満足そうな北方だが、「終了間際にもチャンスがあって(ハットトリックを)狙ったけど、ボールが高くバウンドして外れてしまった」と、最後にはあどけない笑顔も。細やかなテクニックを持ち、巧みなスライディングも持ち味の北方は、岡山湯郷Belleでプレーした経験を持つ、作陽の池田浩子監督が期待を寄せる選手のひとりだ。
「ボディバランスがある選手で、それにテクニックが付け加えられた。前線の中心と言える選手で、まだまだこれからも引っ張っていってほしい選手だが、まだやり切れていない部分もある。しかし、相手からマークされていたとは思う中でも2得点のプレーができたのは、彼女とその周りの力。これに満足することなく成長してほしい」
今大会の組み合わせ抽選会で十文字との対戦が決まった時から、作陽は関東の雄を倒すことを第一関門とし、今大会へのモチベーションを一層高くした。
「流れとしては相手の時間もあった中で、守備陣が集中して守り切って、自分たちの流れに持ってきたのがよかった。それに前線の選手が少ないチャンスで決めきることができたので、次への道が開けたかなと思う」
指揮官の池田監督は、夏から今大会に向けてのチームの成長を感じていた。
「夏のインターハイで(ベスト8で)敗退してから半年間、メンタル面を強化してきた。そこの弱い部分で自分たちから崩れて敗退してしまったのがインターハイ。だけど今は、苦しい状況になった時こそ、ポジティブな声掛けができる選手が増えてきている」
この日の十文字戦では11分に先制してから、スコアは作陽がリードしていたものの、主導権は試合終了まで十文字にあった。3年生が少ない作陽は試合を落ち着かせることができず、相手が持つボールを追う展開のまま長い時間を戦うことを余儀なくされた。しかし、組織的なチャレンジ&カバーを怠らずに続け、時にはポジションをうまくスライドさせながら守り、決定的なシーンはそれほど多く作らせなかった。
しかし、意図的に自分たちが試合を動かす時間を長くしなければ、現実的に2回戦以降も勝ち進んでいくのは難しいと言わざるを得ないだろう。
「普段の練習の中でしっかり見て判断するというトレーニングはたくさんしている。ボールを中央に集めながら、サイドのスピードがある選手がプレーに絡んで前に出ていくのが理想。そこまで持ち上げられるようにやっていきたい」(池田監督)
「ゴールを決めたことはよかったが、チームが落ち着かない時に私が1.5列目に落ちて、チーム全体を落ち着かせることも私の役割。そういう意味で、今日の試合の運び方はまだまだ」(北方)
大会中のチームの成長が作陽躍進の鍵を握る。
文=馬見新拓郎