2次元脳で男性免疫ゼロだったオタク漫画家の妻と、ヘンタイ系オタク漫画家の夫との新婚生活を描いたコミックエッセイ『嫁いでもオタクです。』が、結婚のよさを新たな角度から知れる1冊として話題となっている。オタクで漫画家同士の結婚は、妄想力×妄想力!「仕事にもいい刺激を与えてくれるはず」とも感じさせてくれる 本書。そこで本書の魅力とともに、意外と多い“漫画家同士の夫婦”について紹介してみたい。
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著者は、“オタク漫画家の嫁”であるカザマ アヤミ。初々しいピュアな恋愛漫画を描いてきた彼女が、エロ漫画家の紺野あずれと結婚。お互いのオタク趣味と仕事を尊重し合い、愛と理解を深めていく2人のちょっと、いや、かなり変わった夫婦生活が赤裸々に綴られている。
例えば、2次元の女の子を性的な目で見ている夫を前に、妻は「理想のかたまりに3次元が勝てるとこなんてない」とやきもちのような複雑な心境を抱いてみたり、さらには夫が2次創作ものを描くときには、妄想で2次元の女の子をガンガン抱けるように、空気に徹するようにしてみたり。夫の趣味・仕事のために、2次元に譲る姿は涙ぐましいほど!また、夫の趣味話=エロ談義を聞いているうちにエロへの知識を深め、「エロおもしろいよエロ!」「しゅごいいぃ!」と開眼した妻。漫画家にとって妄想力ほど大事なものはないが、エロ方面への妄想力を身につけたカザマが、今後どんな漫画を描いていくのかにも期待してしまう。
漫画家の妄想力と知識、それを絵で映し出す表現力にはいつも驚くばかりだが、漫画家同士でもそれはしかり。尊敬が大きな愛となり、結婚にいたるカップルが多いのも納得だ。いくつか漫画家夫婦を挙げてみると、『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』の松本零士と『源氏物語』『悪女聖書』の牧美也子。『HUNTER×HUNTETR』の冨樫義博と、『美少女戦士セーラームーン』の武内直子。
『サラリーマン金太郎』の本宮ひろ志と『キャー!先生』のもりたじゅんの夫婦に至っては、もりたが夫の全作の女性キャラの下描きも担当しているそう。また、妻によって家庭放棄を暴露されつつも結婚生活を続ける『島耕作』の弘兼憲史と、『東京ラブストーリー』の柴門ふみといったカップルもいる。
クリエイター同士といった視点に広げてみれば、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明監督と『ハッピーマニア』の安野モヨコの夫婦が有名だ。安野の著書『監督不行届』では、庵野監督のエリートオタクぶりや乙女な一面が愛情たっぷりに暴露されており、頬を緩めずにはいられない。本書は、夫・庵野監督によるあとがきも秀逸。「奥さんはすごい。自分よりも才能があるし、物書きとしても尊敬できるからこうして一緒にいられるんだと思います」との庵野監督の一言には、ものづくりを極めようと奮闘する夫婦の姿が凝縮されているように思う。
漫画家・クリエイター同士のパートナーは、尊敬し合い、刺激し合い、身を削るような苦労を誰よりも分かり合える存在。ハードな仕事に立ち向かう、心強い“同志”なのだろう。