こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
2015年12月20日、広東省深セン市の工業団地内にある残土処理場で、大規模な土砂崩れが発生しました。大量の土砂は多くの民家や工場棟をのみ込み、90人以上もの行方不明者を出す大惨事となりました。今回の事故が発生した原因は、中国企業側のずさんな対応もあります。もともとこの処理場は採石場だったのですが、環境保護を名目に採石が中止されました。そして手つかずとなったこの土地に、地元の企業が都市開発時に発生した土砂を捨てていたのです。本来中国では、不要な土砂は政府が指定した処理場に投棄することが義務付けられているのですが、運送コストを抑えるために多くの企業が近隣の空き地や河川に違法投棄します。今回の事件のほかにも、13年3月に浙江省温州市の河川では、地元企業が産業廃棄物の違法投棄を繰り返した結果、河川に住む生物が大量死するという事件が発生しました。しかも、このような「ポイ捨て事件」は、中国では日常茶飯事なのです。
中国在住時、僕はマンションの8階に住んでいたのですが、建物の避難通路には誰かが捨てたダンボールや自転車が散らばっていました。それが障害となって、いざという時、容易に避難することはできなかったでしょう。
隣の部屋の住人は、室内を掃除した後、必ずゴミを窓の外へ投げ捨てていました。風の強い日は僕の部屋にゴミが入ることもあり、何度か注意したものの、一向に止める気配はなく、街中にゴミをばらまき続けたのです。また、上の階に住む家族は、よくベランダに出て一家団らんを楽しんでいましたが、周りの迷惑を気にせずラジオを大音量で流したり、子どもが食べたアイスの箱をベランダから投げ捨てていました。この家族は危険な物をポイ捨てすることが多く、火が消えていないタバコが僕の部屋のベランダに入り、衣服に穴を開けたり、溶接工事の際の火花が落下し、危うくやけどしそうになったのです。中国の各都市を見渡せば、あちらこちらに生ゴミ、ペットボトル、使用済みのティッシュ、ひどい時には排泄物すら散乱しています。
このような中国人の悪癖は、時に重大な事件を引き起こします。中国のガソリンスタンドでは、顧客や店員がガソリンタンクの近くで喫煙し、吸い殻を投げ捨ててしまう例が珍しくありません。それが非常に危険な行為であることは明らかですが、14年4月にスタンド内で喫煙している男性を注意したスタンド店員が、逆上した男性に暴力を振るわれたり、同年5月には、「中国石油化工」が経営するスタンドに勤める従業員が喫煙していることが発覚した際、同社の社長が「法律には違反していない」と弁明するなど、解決の糸口がつかめない状態です。ほかにも微弱な電波がガソリンを発火させる可能性があるため、給油中は携帯電話による会話は禁止されているはずですが、それを無視する中国人は後を絶ちません。10年、上海市では28階建てのマンションから出火し、58人もの犠牲者が出てしまいましたが、中国人のマナーが改善されない限り、今後、同じような事故が中国各地で発生するでしょう。
ポイ捨て癖は、まさに現代の中国人の気質を象徴したものです。「自分さえよければいい」という考えが浸透している多くの中国人たちにとって、自分が所有する家や土地以外の場所は「ゴミ捨て場」同然なのです。16年2月8日、中国は「春節」(旧正月)を迎え、連休シーズンに突入します。そのため2月中旬は、多くの中国人観光客が訪日することが予想されますが、その時、接客を行う日本の方々は、彼らがゴミやタバコをポイ捨てしたらただちに注意するなど、厳重な対応を行ってください。他国の常識に触れれば、きっと彼らも母国に帰ってから行儀良くなるでしょうから。
●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)がある。
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