吉井和哉が12月28日に東京・日本武道館にてツアー「Kazuya Yoshii Beginning & The End」の最終公演を実施した。
今回のツアーは、2005年に行われた吉井のソロとしての最初のツアー「YOSHII LOVINSON TOUR 2005 AT the WHITE ROOM」から丸10年が経過したことを記念して行われたもの。最終公演では彼のキャリア初の試みとして、今までのソロツアーの中で披露された楽曲の人気投票を行い、その結果をライブのセットリストに反映させる企画が実施された。吉井は約3時間にわたる公演の中で新旧を織り交ぜた多彩なナンバーを披露し、集まったファンを喜ばせた。
この日のライブは駒沢裕城(Pedal Steel)、クリストファー・ハーディ(Per)、松尾慧(篠笛)によるオープニングアクトで幕を開けた。3人が紡ぎ出す幽玄なメロディにオーディエンスが静かに耳を傾けていると、彼らが演奏しているステージ上に吉井とバンドメンバーが姿を見せ、そのまま1曲目の「恋の花」へとなだれ込む。アリーナ席外周をぐるりと覆う白い幕には鮮やかな花が咲いては散るグラフィックが投影され、360°のパノラマで展開されるダイナミックな映像演出がオーディエンスの目を奪った。オープニングアクトの3人が去ったのちに「PHOENIX」がドロップされると、バンドの力強いパフォーマンスにファンは熱く盛り上がる。3曲を終えた吉井は今回のツアーに、盟友であるジュリアン・コリエル(G)が参加していることをアナウンスし「ようやくジュリアンが日本に帰って来てくれました!」と喜びをあらわに。また「恋の花」はこのステージのためのアレンジで演奏したと語り「僕がずっとソロでやりたかった形……東洋のエッセンスを採り入れた形でやることができました」と笑顔を見せた。
「今日は盛り上がる曲少ないです!」と宣言してファンを笑わせた吉井は「その中でも盛り上がる曲を」と言って「欲望」を届ける。バックバンド・ナポリタンズによる盤石のアンサンブルの上で自在に声色を操る彼は、ステージを彷徨うような身のこなしで観客の視線を引き付ける。武道館が青い光で満たされた「CALL ME」では、吉井の指揮のもとオーディエンスの大合唱が響き渡った。
この日唯一のカバーソング「朝日楼(朝日のあたる家)」ではジュリアンの哀愁漂うギターの音色が楽曲を彩る。サイケデリックな照明がステージを染め上げた「魔法使いジェニー」では日下部正則(G)のギターサウンドに乗せ、吉井が「アルペジオが得意な日下部正則! アルペジオしている間にみんな願い事して! ご利益あります!」と笑顔でフロアに呼びかけた。続く「MUSIC」では「やっぱノリノリな曲のがいいかな? 和ちゃんはまだまだやるぜ」とほほえみを浮かべ、パワフルなビートに乗せて陽気に歌声を響かせた吉井。彼の熱気に煽られるようにオーディエンスも体を揺らし、武道館はダンスホールと化した。
本編終盤のMCで彼は、2011年に発表した6枚目のソロアルバム「The Apples」のリリースツアーに参加予定だったジュリアンが、東日本大震災の影響でツアーに参加できなかったことに触れる。吉井は「30代の後半から1人の人間として葛藤していく中で、自分のロック観が古いんじゃないかとか考えてきたんだけど、そんなときに震災があって、すごく自分の音楽観が変わりました。この時期は、改めて『自分に何ができるのか』を考え直した時期でした」と語り「(『The Apples』収録曲の)『FLOWER』は、ひさびさに皆さんに向かって書いた曲でした。この武道館で、この曲をジュリアンと一緒に演奏できるのがうれしい。花のような皆さんに贈りたいと思います」と伝えた。この言葉のあとにプレイされた「FLOWER」は、それまでの凝ったステージ演出から一転、シンプルな光の下で届けられる。吉井は思いを込めるように歌声を響かせ、「自分を愛してね!」とオーディエンスに呼びかけた。
全8曲が用意されたアンコールは「トブヨウニ」でスタート。吉井は「ヘイ武道館、一緒に跳びましょう!」と叫び、客席の上のほうまで大きく手を振る。曲の途中には吉井が口ずさむメロディをジュリアンがギターで再現するという、楽しげなセッションも繰り広げられた。華やかな光と映像の演出が会場のムードを一層盛り上げた「ノーパン」「HEARTS」を経て、「FINAL COUNTDOWN」ではオーディエンスがサビで一斉にダンスを踊る。吉井もジャケットを脱ぎ捨て、熱いパフォーマンスでファンを鼓舞した。そして、ラストナンバーとして披露されたのはファンによる人気投票で1位になった「MY FOOLISH HEART」。この曲では駒沢、クリストファー、松尾もステージに合流し、吉井は「吉井和哉がソロになったときにやりたいと思っていた世界観の音楽を、今回やらせてもらっていると思うと胸がいっぱいです」と言葉に喜びを滲ませた。楽曲は鮮やかな音色に彩られ、吉井は伸び伸びと歌声を響かせる。熱狂の中でステージは終幕。吉井はバンドメンバーと笑顔で喜びを分かち合い、大きな喝采を浴びながら舞台をあとにした。
01. 恋の花
02. PHOENIX
03. I WANT YOU I NEED YOU
04. 欲望
05. SIDE BY SIDE
06. CALL ME
07. BLOWN UP CHILDREN
08. 朝日楼(朝日のあたる家)
09. シュレッダー
10. TALI
11. 魔法使いジェニー
12. MUSIC
13. 点描のしくみ
14. (Everybody is) Like a Starlight
15. FLOWER
16. 雨雲
<アンコール>
17. トブヨウニ
18. SWEET CANDY RAIN
19. BLACK COCK'S HORSE
20. ノーパン
21. HEARTS
22. FINAL COUNTDOWN
23. 血潮
24. MY FOOLISH HEART