牛は友だちだと思ってるみなさま。
アメリカではサメより牛に殺される人の方が多いって知ってました? ホラー映画もシャーク特番ウィークもないのでレーダーに引っかからないだけで、秘めた殺意があるようです。
人間を意図的に殺す米疾病予防管理センター(CDC)によると、アメリカでは牛に殺される人が年間推定約22人おり、うち75%は意図的攻撃とわかっています。3分の1は攻撃的態度の前歴がある牛によるものでした。
4州で起きた21件の事件を動物行動学者が調べてみたところ、牡牛が殺したのは10人、雌牛が殺したのは6人という結果でした。ちょっとゾッとしたのがグループによる犯行で、これも5例にのぼります。
集団暴行は、驚くほど組織的に行われていました。守りの体制のとき、牛は背中合わせで円陣を組んで、首をうなだれ、土を踏みしめます。ところが攻めの体制になると、何頭かが群れを先導して猛進していくんです。犬の散歩中に襲われた男性は、その時の模様をこう語っていますよ。「前につんのめって転んで立ち上がろうとすると、そのたびに飛びかかってきた。脚で斜面を転がしながら、体を開こうとしてくるんです。全部で7頭か8頭いて、リーダー格は2頭でした」
命は助かっても、ダメージは相当なものです。2014年、自転車レースの先頭を切って牧草地を通過中、牛に集団暴行を受けた登山家兼サイクリストは、肋骨8本と肩甲骨、背骨が骨折しました。 同年襲われた女性も肋骨6本が折れ、片肺が破裂する重傷を負っています。牛は殴る蹴るの暴行がメインですが、体の下に頭を突っ込んで空中に放り出して地面にグシャン、ということもします。
食用の家畜のイメージなので牛を用心棒に飼う人もいませんけど、牛と一緒に育った羊なんかは、こういう危ない一面を熟知しているようで、なんか怖いことがあると牛の群れの真ん中に逃げ込むんだそうですよ?
軍用牛牛は動きが緩慢な上に、草と水も大量に要るため、兵用のイメージはありません。でもカスターは随想で「ネイティブアメリカンは家畜を興奮させて敵を陽動・攻撃していた」と書いています。ジョン・ジョージ・ウッドが書いた「The Uncivilized Races of Men in All Countries of the World(世界の未開の人種)」という身も蓋もないタイトルの本でも、「ズールー族がボーア人の野営地に工作員を夜間送り込んで、家畜を脅して暴れさせていた」とあります。
カミカゼ牛殺意がなくても、牛は1頭680kgもあるので、歩く凶器です。アメリカでは崖に「牛転落に注意」という道路標識があって笑えるんですけど、スイスでは実際に数週間で牛28頭が次々と崖から転落したり、飛び降りたりする怪現象が起こっています。ブラジルでは車に牛が落ちてきて中にいた男性が死亡しました。米インディアナ州では高速道路の上を通る道でトレーラーが横転し、中にいた牛が高架下の車に雨あられのように降り注ぎ、転落死を免れた牡牛が高速道を狂ったように走って牽引トラック運転手を襲撃する事件も起こっています。
牛の夏映画「ジョーズ」の原作は1916年7月に起きた実話がベースになっている、というのはあまりにも有名な話ですよね。ニュージャージー州で12日の間に5人がサメに襲われ4人が死んだ鮫襲撃事件。アメリカでは「the summer of the shark(サメの夏)」として今も語り継がれています。
2009年夏、英国でこれと似た事件がありました。8週間で同じ数だけの人が死んだのです、牛の襲撃で。まさに「牛の夏」ですね。スイスで牛が崖から次々飛び降り始めたのも2009年。奇しくも同じ年でした。
イギリスの犠牲者のうち2人は犬の散歩中に襲われました。牛襲撃は犬が引き金になるケースが多く、ちょろまか動く犬に牛が苛立って襲いかかり、犬を助けに入った飼い主が襲われるんですね。それなら注意すれば回避できそうですけど、4人目の犠牲者は単に消防車のサイレンで牛が苛立って踏みつけにされた農家の人でした。
死亡事故が続いた挙げ句、ついにはデビッド・ブランケット英国会議員が犬の散歩中に牛に襲われ肋骨骨折とアザを負い、牛の安全対策が真剣に話し合われるようになり、注意の箇条書きが出回りました。「犬は不用意に牛に近づけないように注意しよう」という常識的なものから、「主導権を握るのは人間だということを忘れず、それを牛に思い知らせよう」という、よくわからないものまで。
肉食の牛に要注意ところで牛って肉も食べるって知ってました? 1931年にはタイム誌が、濃厚牛乳の牛を飼う秘訣は「飼料に肉を混ぜること」だというアルバータ州ディズベリーの酪農農家の話を紹介しています。真似する農家がいても不思議じゃないですよね。
それか、草食動物が肉を食べる現象は自然界にもともとあるものなのかもしれません。何年か前には、インドの牛がひよこを50羽食べたというニュースもありました(1羽はカメラが捉えていて牛が犯人とわかった)。今年は米国やカナダで鳥の巣に仕掛けたカメラがひな鳥をむさぼり食う鹿の映像を捉えて話題になりました。あのニュースを紹介した時には、読者から「子猫を食べる牛もいるよ」というコメントも入ってます。
images: Getty Images
sources: Science: Meat-Eating Cow, Wild Life on the Plains and Horrors of Indian Warfare, Response of Bonded and Non-Bonded Sheep to the Approach of a Trained Border Collie, Dangerous Cows, Cow Attacks,Fatalities Caused By Cattle, Take Care Around Cows, Hoofed and Dangerous, Cow Attack Survival Guide
Esther Inglis-Arkell - Gizmodo US[原文]
(satomi)