オンラインゲームの利用規約では、ゲーム内の秩序を守るため、違反者に対する制裁が定められるのが通常です。制裁の内容としては、アカウント停止や会員資格の剥奪等、様々なものを見かけます。
自社の利用規約は有効なのかと悩まれる事業者さんも少なくないところです。そこで、今回は簡単なガイドラインを示します。
■分かりやすい場所に表示し、明確な同意を取りましょう。
利用規約を有効なものとするためには、一定の工夫が必要です。
まずは、(1)利用規約を、ユーザーにとって分かりやすい位置に表示しましょう。利用規約が取引の条件となっていることを、ユーザーに示す必要があるからです。そして、(2)ユーザーから明確な同意を受けましょう。同意のクリックを求められた経験があると思いますが、あれはこの要請からきています。
およそこのような二段階の障壁をクリアしますと、利用規約が晴れて「ゲームの利用契約」に組み込まれます。
利用規約はある種の契約書であるわけです。これを意識するのが第一歩です。
■原則的には有効
利用規約に規定された制裁条項も、障壁をクリアして契約として結ばれた以上、原則的には、市場における自由な契約の一つとして有効になります。
裁判で争われた事例ですと、例えばアカウントを永久停止されたユーザーが、制裁に不服を持ち、運営に対して損害賠償請求をした訴訟があります。この事例で裁判所は、制裁条項が有効であることを前提に、運営の賠償責任を否定しています。
このように、原則的には、利用規約に規定された制裁条項は、有効なものとして裁判上も取り扱われます。
■契約にも限界がある?
もっとも、どんな契約でも有効になるわけではありません。公序良俗に反する等、一定の場合には無効となります。また、オンラインゲームの利用規約では、「違約金額の制限」を定める消費者契約法の適用などもあります。
先ほどの裁判例でも、利用規約の規定を手放しに認めているわけではありません。「利用規約の規定が明確であったか」という点のみならず、「制裁が相当なものであったか」という点について検討を加えた上で、有効なものとして扱っています。
■適法であればいい?
利用規約と契約書には大きな違いがあります。それは、あらゆる人の目にふれるということです。適法な利用規約であっても、ユーザーの反発を招き炎上し、リリース直後に変更せざるを得なくなった事例もあります。利用規約は、適法性の確保のみならず、レピュテーションリスクにも配慮する必要のある、難しい領域になっています。
■藥師神 豪祐(ヤクシジン コウスケ)
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