皆さんは1月6日が「ケーキの日」だと知っているだろうか? これは、明治12年(1879年)のこの日、日本で初めてケーキの宣伝がされたことに由来している。当時はあまり売れなかったというケーキだが、時は流れ今では老若男女を問わず広く愛されるスイーツの代表格だ。ところで、皆さんはどんなケーキが好みだろうか。「教えて!goo」で「皆さんの好きなケーキは?」と聞いたところさまざまな意見が寄せられた。
■ショートケーキとモンブランが人気の双璧
「苺ショートケーキ」(zawayoshiさん)、「ショートケーキとモンブラン」(Toua_0090さん)、「モンブラン。絶対にモンブラン。」(singapura1984さん)と、ショートケーキとモンブランを推す声が多かった。また、「ラデュレのサントノーレ・ローズ・フランボアーズ。ばらとラズベリークリームが絶品」(haiji1996さん)、「サバラン。洋酒がきいて猛烈においしい」(baruseronaaaさん)のように、大人っぽい味わいのケーキを楽しんでいるという声もあった。
他にも、「ミルキーロール」(パレッティーナ3号さん)、「レモンケーキ、クリスマスにはシュトレーン」(pdmichimaruさん)、「ティラミス」(kei811さん)のように、懐かしい味や伝統の味を挙げる人もいた。
ケーキといってもいろいろだが、最初に浮かぶのは「ショートケーキ」ではないだろうか。サイズが小さいから、ショートニングを使うから……など名前の由来は諸説あるが、そもそも、日本人はいつ頃からショートケーキを食べるようになったのか、海外にもショートケーキはあるのか? フランス菓子に詳しい料理研究家の熊谷真由美さんにお話を伺った。
■ショートケーキを食べられるのは、日本だけ
「ショートケーキは日本人の好みに合わせて日本で生まれたもの。ですから洋菓子の本場ヨーロッパでは、お店で売られていないばかりか製菓学校の授業にも登場しません。パリに留学中だった20年ほど前、日本人が多く住むパリ16区の日本のお菓子屋さんで売っていると聞きつけ、買って食べたことがありますが、見た目はそれ風ですが、私たち日本人の知っているショートケーキとは全く違うものでした」(熊谷さん)
ショートケーキといえば、ふわふわのスポンジにたっぷりのクリーム。そして上には色鮮やかなイチゴ!が王道だが、この愛すべきケーキはいつ頃誕生したものなのだろう。
「日本に、今で言うケーキのようなものが伝来したのは、室町時代の末期のことです。1545年、ポルトガルの南蛮船が、鉄砲やキリスト教とともに長崎にもたらしたカステラがそれです。明治に入って文明開化を迎えると、味や食感が更に工夫された今のカステラに近いものになったと言われます。この生地がベースになり、日本人好みのふんわり軽いスポンジができたのでしょう。そして、大正時代の1922年に、老舗のお菓子屋さんが考案して日本のショートケーキが生まれました」(熊谷さん)
上にイチゴをのせるのは、海外でパンの間にフルーツを挟むのを、日本人の口に合うように応用したとのことだが、彩りや味わいが日本人の嗜好にマッチし、ケーキの代表格になったというわけだ。
■まるで別物、海外のショートケーキ的なものは見た目だけ
「先ほどのパリのショートケーキですが、現地のフランス人にも気に入られるよう、味は実にフランスっぽい重たい仕上がりで、スポンジもどっしりとしていました。フランスには『フレジエ(イチゴの木)』というアーモンドスポンジでバター入りカスタードをサンドしたイチゴたっぷりのお菓子があるのですが、それを思わせるものでした」(熊谷さん)
ふわふわのスポンジこそショートケーキの真骨頂。よくぞふんわり仕上げてくれたと、昔の職人さんに感謝したい気分だ。
「ドイツやオーストリアのウイーンにも『エルドベア・ザーネクレム・トルテ(イチゴのゼラチン入り生クリームケーキ)』という、よく似た見た目のお菓子があります。イチゴが天面の縁に8個または12個ほど等間隔に並んだ几帳面なデコレーションが、日本のショートケーキのイメージにそのまま重なります」(熊谷さん)
日本初のケーキの宣伝が出てから137年。今では実にさまざまなケーキを日常的に食べることができる。その喜びをかみしめつつ、ショートケーキをいただくことにしよう。ただし、正月にごちそう続きだった人は食べ過ぎに要注意だ。
● 専門家プロフィール:熊谷 真由美
教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)