ユネスコ世界記憶遺産に南京大虐殺関連史料が登録された。来年(2017年)の「慰安婦関連史料」登録阻止のために何をすべきなのか。わが国が直面する課題を考える。
2015年11月、米・ニューヨークの国連本部では韓国、米国、カナダ、ニュージーランドなど5か国の国会議員が中心となり、「紛争地域や自然災害地域の性奴隷・人身売買被害者根絶のための国際議員連合(IPCVSS)」の発足式が行われた。
議員連合発足の中心となったのは、1998年にフィリピンから韓国に帰化した李ジャスミン議員。共同創設者には日系米国人のマイク・ホンダ議員も名を連ねた。李議員は、「この会議を通じて慰安婦問題だけでなく、性奴隷、人身売買など女性の人権問題を積極的に国際社会に広報する」とし、慰安婦問題を広義の「人権問題」にすり替え多国籍連合で世界に喧伝する構えを見せている。
2015年12月、韓国の大統領として初めてユネスコ本部を訪問した朴槿恵大統領は、イリナ・ボコバ事務局長と会談し、中国の南京大虐殺史料登録を評価。演説で、ユネスコ記憶遺産国際諮問委員会(IAC)の下部組織である「アジア太平洋地域ユネスコ世界記憶遺産委員会(MOWCAP)」の事務局を韓国に誘致する意向を表明した。韓国「聯合ニュース」は誘致について、「今後の慰安婦史料の記憶遺産登録に向けて足場固めをするための布石」と伝えている。
日本政府は日本の意見を反映させるため、MOWCAPへの日本人専門家の派遣を決定したが、慰安婦史料登録を巡る外交戦は中韓が一歩も二歩もリードしている。
※SAPIO2016年2月号