覚せい剤約3キロをスーツケースに隠して密輸したとして、覚せい剤取締法違反などの罪に問われ、一審千葉地裁の裁判員裁判で懲役6年6月、罰金400万円とされた米国籍の男性(79)の控訴審判決が13日、東京高裁であった。藤井敏明裁判長は一審判決を破棄し、無罪を言い渡した。

 男性は公判で、「金融エキスパート」を名乗る人物から、400万ドルの報酬で現金を洗浄する特殊なオイルを運ぶよう頼まれたと主張。洗脳されて信じ込んでおり、違法薬物とは知らなかったと訴えていた。

 藤井裁判長は、男性の主張を裏付ける証拠があるとし、「大企業の重役を務め、引退後は年5万ドル余りの年金を受給していた。不自由なく生活しており、重大なリスクを冒すことはあり得ない」と指摘。高齢で心臓病を抱え、認知障害もあるため、荒唐無稽な話を信用したことにも理由があると認定した。

 男性は2014年5月、スペインの空港でスーツケースに隠した覚せい剤約3キロを航空機に持ち込み、日本に密輸したとして起訴された。成田空港で税関職員が発見した。