1月16日から大学入試センター試験が始まりました。それと同時に関西では中学入試が開幕します。関東でも千葉や埼玉では1月中旬から中学入試が始まります。
入試には必ず明暗の結果が出ます。英検などのように頑張れば全員合格なんてことはありません。職場やご近所に受験生を抱える親がいる場合、まわりも気を遣いますよね。不合格通知を受けた知人にどんな言葉をかければいいのか。結構な「大人力」が試されます。
基本的なスタンスは、本人が口にするまで聞かないことです。本人から合格の報告があれば「おめでとう」と言えばいいでしょう。問題は、「ダメだった」と聞いたときです。
ここでの原則は、下手に励ましたり、慰めたりしようとしないこと。「大丈夫、次があるよ」とか「でも第2志望の学校のほうが合ってるかもよ」などと、無責任なことを言わないこと。
このような状況では、ただ本人の気持ちを聞いてあげることが大事です。「せっかく息子が一生懸命頑張ったのに、悔しくて……」と言われたら、「せっかく息子さん、一生懸命頑張ったのにね。悔しいよね」とそのまま返してあげましょう。「もう吹っ切れた。別の学校で頑張ればいいよね」と言うのであれば、「そうだよね。別の学校で頑張ればいいよ」と明るく共感してあげましょう。
こちらの勝手な評価やアドバイスをするのではなく、ただひたすら共感してあげるのです。
難しいのは、自分の子だけ合格して、知人の子が不合格になったような場合。特に塾友のママ同士ではこういうことが絶対に起こります。
たとえば2人でお茶を飲まなければいけないというようなシチュエーションになった場合。明るく盛り上げようなんて考えて、合格した側がべちゃくちゃしゃべらないほうがいいことは誰でも容易に想像が付くでしょう。「一緒に同じ学校に行けたら良かったのに、私も悔しい」なんて言おうものなら上から目線ととらえられかねません。
原則的には合格した側が聞き役に徹し、上記のようにひたすら共感しましょう。もしかしたら「おたくはいいわよね……」なんて、ちょっぴりねたみのこもった台詞を聞くことになるかもしれません。そんなときは、もちろん反論なんてせず、うつむき加減に相づちを打ち、返事に困る感じを非言語的に伝えましょう。
そもそもお互いに気持ちの整理が付いていないうちは、無理に会わないほうがいいでしょう。そのほうがその後もお互いにわだかまりなく関係を続けやすいものです。こういうときに絶妙な距離感を保つのも、できる大人のたしなみです。
どんなにベストを尽くしても、志望校に合格できるか否かはわかりません。たとえば中学受験においては、本当の第一志望に合格できる子は、3割、いや2割程度とも言われます。だからといって残りの7割、8割が全員敗者になるわけではありません。
第一志望以外の学校に進むことになった人たちは、その学校で、そこでしか得られなかったことに必ず出会うはずです。一生の友達かもしれませんし、素晴らしい先生との出会いかもしれません。それが神様からの贈り物です。
でも注意深くしていないと、その贈り物に気付くことができません。縁があった学校での生活を、大切に過ごせばきっと神様からの贈り物に気付けます。
逆に第一志望に進学しても、理想とのギャップを感じることがあるかもしれません。それはきっと神様から与えられた課題です。
その課題をクリアしたときに得たものこそ、神様からの贈り物です。だから、「想像と違った」と思うことがあっても逃げずに乗り越えてほしいと思います。
人生は決断の連続です。与えられた選択肢の中からベターを選ばなければいけません。しかし、人生における選択の善し悪しは、決断したときに持っている情報量やそのときの判断力が決めるのではありません。
選び取った環境をどのように生かすのかが大事です。どんな不利な選択肢を選ぶことになったとしても、そのあとの努力次第で、選択肢を最善のものに変えることができます。それがセンター試験の選択問題とは決定的に違う点です。それが人生です。
入試は合否が発表されておしまいではありません。そのあとに続く、6年間なり、4年間なりの過ごし方が大事なのです。
(教育ジャーナリスト おおたとしまさ=文)