現代人にとって、もはや航空機は欠かせない移動手段となっている。しかし、墜落事故のことを考えると、どうしても別の交通機関を選んでしまう――そんな“飛行機嫌い”の読者もいるかもしれない。実際のところ、墜落事故に遭遇する確率は自動車事故よりもはるかに低いものだが、それでもひとたび起きれば、ほぼ乗客全員が見るも無残な死に方で命を落とすため恐怖が増幅される面もあるのだろう。
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しかし、墜落事故で一度に多数の乗客が死亡する、そんな時代もついに終わりを迎えるかもしれない。ウクライナの航空機エンジニアであるウラジーミル・タタレンコ氏が、これまで誰も思いつかなかった(?)画期的な旅客機を構想して発表、英紙「Independent」をはじめとする海外メディアを沸かせている。
■もう墜落事故は恐くない!?
今回タタレンコ氏が構想した、“墜落事故で乗客が死なない”旅客機、それはなんと「客室部分をそっくりそのまま切り離せる」構造になっている。タタレンコ氏が公開したイメージ映像を見れば一目瞭然、緊急時にキャビンがすっぽりと旅客機から抜け落ちるのだ。
放出された客室部分は、屋根に格納されているパラシュートが開くことで落下スピードが調節される。さらに、底部に格納されているゴム製のクッションが脹らむことで、着地時の衝撃を和らげるうえ、もし海に着水してもキャビンが沈むことはない。しかもキャビン下部は荷物の格納庫になっているため、乗客にとって失うものは何もない――といいことずくめだ。
「墜落事故から生還することは可能なのです。世界中のエンジニアが、航空機をより安全なものにしようと日夜努力していますが、人為的操縦ミスなどのヒューマンエラーには為す術がないのが実情でした」(タタレンコ氏)
一部分とはいえ、極めて重いジャンボジェット機を、パラシュートで安全に降下させることなど果たして可能なのか一抹の不安も頭をよぎるが、彼の解説によるとケブラー(芳香族ポリアミド系樹脂)やカーボンといった現存する素材と技術を組み合わせることで、より軽く強度に優れた機体を生み出せるという。決して夢の航空機などではないとのことだ。
キャビンが機体から切り離される図はなかなか衝撃的だが、「そうだその手があったか! と思わず膝を打った読者もいるのではないだろうか? タタレンコ氏も今回の構想プロジェクトに3年を費やすなど、その気合の入れようは生半可なものではない。ところが今、そんな彼の構想は、意外にも世界中から批判の嵐に晒されているようだ。
■画期的構想だったハズが……!
一見したところ完璧にも感じられるタタレンコ氏の構想、実はほかの専門家たちに言わせれば“穴だらけ”で非現実的な絵空事にすぎないという。
その指摘によると、タタレンコ氏の構想は、まずキャビンを切り離すときに残される機体(主翼、尾翼、コックピット部分など)が受ける衝撃をまったく考慮していないうえ、何よりもパイロットの命を助けることができない。そしてキャビンも部分も、山肌などの急斜面に落下したり、ビルなどに衝突してしまえば、安全な着地など到底不可能。ほかにも、航空機の機体強度を高めるために連結部分はできるだけ少なくするべきであり、その点に関しても「切り離せるキャビン」は致命的欠陥となるようだ。
■発案者「誰もが私の飛行機に乗りたがっている」
しかし当のタタレンコ氏は、このような批判もどこ吹く風。自身の構想する航空機に対して、絶対的な自信を抱いているようだ。彼が独自に実施したアンケート調査によれば、およそ95%の人々が「たとえ航空券に高いお金を払ってでもタタレンコ氏の旅客機に乗りたい」と回答したとのこと。
それに加えてタタレンコ氏は、3年前にも“墜落事故で乗客が死なない”旅客機を構想し、大々的に発表していた。前回彼が披露した旅客機は、緊急時に航空機の“お尻部分”がパカっと開き、そこからカプセルのようなキャビンが放出される構造となっていた。このアイデアにより特許まで取得したタタレンコ氏だったが、航空機で爆発が起きた場合やロケットによる襲撃を受けた時の安全性に難があるとの指摘を受け、今回はそれらの弱点を克服、満を持して発表した改良バージョンだったというわけだ。(それでも爆発やミサイルを前にしてはひとたまりもないのでは……との思いも込み上げてくるが)
果たして、タタレンコ氏の構想した画期的旅客機が、ボーイング社やエアバス社に採用され、実際に世界の空を飛び回る日はやってくるのか? いずれにしても、世の航空ファンにとっては胸が熱くなる話だろう。
※イメージ画像:「Thinkstock」より