10-12月の中国実質GDPが前年比6.8%増であったと、中国政府から発表された。この数字を、そのまま信じる人はほとんどいない。もし本当にそんなに高い成長が実現しているならば、中国は世界経済を強力に牽引する機関車役になっているはずだ。実態は、真逆である。中国の景気失速が世界経済に重大な脅威となり、中国ショックが世界に広がっている。
中国の公式発表では、2014年(1年間)のGDP成長率+7.3%に対し、2015年(1年間)は+6.9%となった。7.3%成長が6.9%成長に、たった0.4%成長率が低下しただけで、世界中に中国ショックが広がるとは考えられない。
中国政府が発表している数字が正しいと仮定すると、2015年に実質GDP成長率は低下したものの、実質GDPの増加額(金額ベース)は増えたことになる。簡単な計算でそれはわかる。中国の2013年GDPを100とすると、2014年GDPは107.3(7.3%増加)に、2015年GDPは114.7(107.3から6.9%増加)になったことになる。GDP増加額は、2014年7.3に対して、2015年は7.4とわずかに増えたことになる。
○操作が疑われる数字でも、そこに一定の意味
このような信頼性の低い統計を見ても、中国経済の実態はわからない。それでは、中国のGDPの数字を見ても、まったく意味がないのか? そのようなことはない。たとえ操作が疑われる数字でも、そこに一定の意味はある。
中国政府の発表数字では、2015年1-3月のGDPは前年比7.0%成長した。4-6月も全く同じで前年比7.0%伸びた。ここまでは、2015年の政府目標である7.0%成長に、ぴったり合っている。この時点で既に中国に景気失速の兆しはたくさん出ていたが、この時は、中国政府にまだ目標が達成できていないことを認める準備が整っていなかったものと思われる。
2015年7-9月のGDPについて、中国政府は前年比6.9%増だったと発表した。ここに至って中国政府はようやく公式に、目標とする成長率が達成できていない現状を認めたことになる。ただし、大幅に未達になっている現実は認めるわけにいかないものと考えられる。
そして今回、10-12月のGDPが6.8%成長と発表された。これは、中国景気の実態が、さらに悪化していることを、中国政府が認めざるを得なくなったことを意味する。0.1%だけ成長率を引き下げたところに、中国経済の実態がかなり悪くなっていることを読み取ることができる。
それでは、中国のGDPは、現実的にどれだけ伸びているのか。私は、足元、中国GDPは3%程度しか成長していないと見ている。消費は二桁成長が続き、GDPの成長に貢献しているが、投資が実質マイナス成長になっていると推定している。
○執筆者プロフィール : 窪田 真之
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。
(楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト 窪田真之)