セルラ技術で実現するモノのインターネット

モノのインターネット(IoT/Internet of Things)とは,もの同士を接続することだ。WiFiネットワークの範囲を超えた遠隔地にあるもの(例えばアマゾンの森林の木々)には,有効な通信インフラストラクチャとしてセルラ(cellular)技術が使用できる。この目的のため,電気通信の業界団体である4G Americasは,“Cellular Technologies Enabling the Internet of Things”と題した新たな白書(PDF)を発行した。プレスリリースでは,ワイヤレス産業の進歩が“Cellular Internet of Things (CIoT)標準を可能にする”とした上で,白書を“エンドツーエンドのCIoTソリューションを開発する上で重要な考慮事項”と位置付けている。

ワイヤレス技術をモノのインターネットに関連付けた説明に加えて,65ページの白書では,第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)を通じて実施されているCIoT標準の開発が取り上げられている。白書の編集チームでリーダを務めたIntelのRoa Yallapragada氏によると,“CIoTに対応するため,世界的な標準化団体である3GPPは現在,革新的なIoT技術改善を定義しています。その成果は今後複数回の3GPPリリースを通じて,複雑性の解消や消費電力の低減の保証という形によって,さまざまなユースケースのニーズへの対応を可能にします。”

白書の要旨は,その背景となった理由の説明から始まる。

この白書では,セルラ版モノのインターネット(CIoT)ソリューションをエンド・ツー・エンドに開発する上で,考慮すべき重要事項を提供しています。IoTとは,インテリジェントなアプリケーションやサービスの開発を目的として,物理的なオブジェクトやマシンや人々,その他のデバイスをつないで通信することにより,データ交換を可能にするネットワークです。ネットワークを構成するのはスマートフォンやタブレット,家電,自動車,モータやセンサといった,IoT通信の可能なデバイスです。多くの市場分析や予測結果が,数百万というエンドポイントやゲートウェイ(GW)デバイス,革新的なネットワークインフラストラクチャ上で新たに実現されるプロトコルやテクノロジ,刺激的なアプリケーションといったものが,IoTフィールドの驚異的な成長機会という形の革命をもたらすであろうことを示しています。

白書の中心をなすのは次の6章だ。

  • “IoT Market Drivers”では,マシン・ツー・マシン(M2M)からIoTへの進化,IoT市場の進展と拡大について詳説した上で,最後に米国IoT市場の現状を紹介する。
  • “Industry Verticals and IoT Use Cases”では,3GPPプロジェクトによるマシンタイプ通信(MTC)要件の一覧を示し,その中から自動車のMTC/IoTユースケースやフリート管理,ウェラブルデバイス,その他のセルラIoT統合について説明する。
  • “Typical Functional Architecture and Commonly Used Protocols in IoT”では,ハードウェアデバイスやネットワーク,接続プラットフォーム,IoTプロトコル,セキュリティ上の問題に注目する。
  • “Advancements in LTE for Machine Type Communication”では,LTE(Long-Term Evolution, モバイルフォンとデータターミナルを対象とする高速ワイヤレス通信のための標準)に関する最新情報と問題点に加えて,MTC仕様,ユースケース,コスト,電力管理を取り上げる他,現状のLTE MTCデバイスの分析も行う。
  • “Enablement of IoT Communications”では,IoTプラットフォームにおいて,検索エンジンを利用したデータソースとアプリケーションの検出やソーシャルメディアとの通信,ポリシ駆動コミュニケーションの適用(ネットワークのオーバーロードなどの潜在的問題を防止するため)などを行うことの可能性について論ずる。
  • “IoT Standards Development”では,3GPPやOpen Mobile Alliance(OMA), GSM Association, oneM2Mといった業界標準化団体による,現在の取り組みについて説明する。

論文の結論は,

第5世代技術の登場によって,より洗練されたユースケースによってさらに相互接続された世界という,将来像の実現が期待されます。大規模IoT通信の時代の幕が上がり,ドアロックや街路灯の遠隔制御,より高度な交通管理を行う道路センサ,触覚や知覚に訴えるアプリケーションといったユースケースが新たに登場することでしょう。