1~2月に旬を迎える「イチゴ」。ひと口で食べきれない「大きな実」なんて表現されますが、赤い部分は「実」じゃないのはご存じでしょうか?
イチゴの赤い部分は花托(かたく)が正式名称で、本来は「花」を支えるための土台に過ぎず、本当の実は「種」だと思われている黒いツブツブ、ほとんど実じゃないものを食べているのです。また、リンゴの「実」は、食べずに捨ててしまう「芯」の部分… 実だとおもっておいしく頂いているのは、ニセモノを意味する偽果(ぎか)なのです。
■イチゴの実は「ちょっと」だけ
そのまま食べてもスイーツでもおいしいイチゴは、
・赤い部分 … 実
・黒いツブ … 種
と思うひとがフツウでしょう。ところがじつは半分マチガエで、赤いところは実ではなく、花托(かたく)と呼ばれる「土台」に過ぎません。
花托は花床(かしょう)とも呼ばれ、本来はおしべ/めしべを支えるのが目的で、フラワーアレンジメントの「給水フォーム」のように「花を挿すためのもの」と考えればわかりやすいでしょう。おいしい! と食べているイチゴの正体はふくらんだ花托で、本当の実は黒いツブ。これこそが種であり実なので、おもしろがって取り除いてしまうと、イチゴの「抜けガラ」を食べていることになってしまうのです。
デコボコのイチゴはなぜ生まれるのでしょうか? これはめしべとおしべが受粉すると花托がふくらむためで、残念ながら受粉せず「実」ができなかった部分はヘコんだまま… その結果、かたちがイビツなものができるのです。本来は脇役のはずなのに、花托が変形していると等級が落ちてしまうイチゴは、ちょっとかわいそうですね。
■リンゴやナシは偽装食品?
お弁当にもよく使われるリンゴも、食べているのは「実」ではありません。丸かじりでも包丁でカットしても除外されてしまう「芯」の部分こそが、リンゴの実なのです。
カキやミカンは食べる部分=実なのに対し、リンゴやナシは芯の部分が「本当の実」で、種を中心としたごくわずかな部分だけ。私たちが「果肉」と呼んでいる部分は、イチゴ同様に「関係ない」部分なのです。これは偽果(ぎか)と呼ばれ、花床がふくらんで大きくなったもので、イチゴとは内外が逆になっているだけの話。ニセモノ部分だけを食べ、本当の実はポイしていたと知ると、リンゴの木もきっと嘆くでしょう。
缶詰でもおいしいパイナップルは全体で「ひとつ」ではなく、小さい実が集まった結果で、「うろこ」のような部分こそが「実」。これは複合果(ふくごうか)と呼ばれ、
・中央の芯 … 花托
・うろこのような表面 … もとは「花」
で、およそ150個の実からひとつのパイナップルになる、いわば高層マンションのような構造。さすが南国! 大きな実! と思われがちですが、じつは正反対だったのです。
彩り鮮やか、食べておいしいフルーツはパーティでも目をひく存在なのに、果肉と思っていたのにじつは土台、食べない部分が本当の実と知ると興ざめですから、果物の「実話」は二次会にとっておきましょう。
■まとめ
・イチゴの実は黒いツブツブ。赤い部分は花托と呼ばれる「土台」
・リンゴやナシの実は「芯」の部分で、食べている部分は「偽果」
・巨大なパイナップルは、じつは小さな実の集合体…
(関口 寿/ガリレオワークス)