日本テレビで、スポーツの実況中継などを担当していた男性アナウンサーが、制作会社に所属する女性にセクハラ行為をしていたとして、このほど同局から自宅謹慎の処分を受けた。報道によると、男性アナンサーは、スポーツ局で働く制作会社の女性をしつこく食事に誘ったり、交際を迫るメールを送っていたという。男性アナは2011年に別の女性と結婚していた。
日本テレビ広報部は、弁護士ドットコムニュースの取材に「ご指摘の件は事実であり、誠に遺憾です。当該社員に対してはすでに厳正な処分を行いました。今後このようなことがないよう、さらに再発防止につとめてまいります」と回答した。だが、セクハラの詳しい内容は明らかにしなかった。
気になる異性を食事に誘ったり、交際してくれるようメールで思いを伝えることは、男女関係ではよくある話だ。今回のケースは、どこがセクハラのポイントだったと考えられるのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。
●「就業環境が害されたか」がポイント「『セクハラ』という言葉は、使われ方によって、意味の広さも変わります。ここでは、法に触れる『セクハラ』、特に今回のケースのような職場の『セクハラ』について解説します」
村上弁護士はこう切り出した。
「職場におけるセクハラについては、男女雇用機会均等法に規定があります(同法11条1項)」
この規定によると、セクハラとは、職場において、相手の意思に反して「不快や不安な状態に追い込む性的な言動」をとることであって、そのような性的言動を受けた労働者が断るなどの対応をした場合に「不利益を受ける」か、その労働者の「就業環境が害される」ようなケースをさす。
具体的にどういう行為をすれば、職場のセクハラになるのだろうか。
「『性的な言動』の具体例としては、身体に触ることなどはもちろん、食事やデートへの執拗な誘いもあたるとされています。
今回の男性アナウンサーの行為が、セクハラにあたるかどうかの判断においては、女性の『就業環境が害されたか』という点が重要になるでしょう。
食事の誘いや、交際の申込み自体はいけないことではありませんが、その『しつこさ』が問題になります。
『しつこさ』の度合いが大きく、女性にとっても精神的な影響が大きく、仕事に支障を来すような状態になっていたのならば、法律上もセクハラにあたると考えられます」
●「既婚者」だったこともポイントになる今回のケースで、男性アナウンサーは既婚者だった。この点は、「セクハラにあたるかどうか」の判断のうえで影響があるのだろうか。
「もちろん、『既婚だからセクハラにあたり、未婚だからセクハラにあたらない』などと、単純にはわけられません。ケースバイケースです。
しかし、食事やデートに誘う人が、既婚か未婚かということも『セクハラにあたるかどうか』の判断には関係すると思います。
女性から見て、食事の誘いや交際の申込みをしてくる相手が既婚者である場合、交際に応じれば『不貞行為』となります。また、そもそも相手の誘いの意図が、真剣な恋愛感情にもとづくものかどうか判断できにくいことが多いでしょう。
その結果、女性としては、既婚者男性からしつこく食事やデートに誘われたとき、困惑する度合いは大きくなります。女性にとって、『就業環境が害される』ことになる、つまりセクハラにあたる可能性が大きくなると思います」
村上弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com