それでも進む海洋汚染...。
最近発表された2つの論文を紹介しますね。どっちも海ヤバイよっていう内容なので、一緒に焦りましょう。簡単にまとめると、「すぐに海は魚よりプラスチックのほうが多くなるよ」+「漁獲量のデータは正確じゃないよ」ということです。
1つ目はThe World Economic Forumから。海の中の重量で比べた場合、2050年までに魚よりもプラスチックのほうが大きくなると予測しています。
2つ目はNature Communicationsに掲載されたもので、私たちが過去60年間に獲ってきた魚の量はこれまで考えられていたよりももっともっと多かったという事実を伝えています。
プラスチックに関する論文はこちらで全文を読むことができます。Ellen MacArthur Foundationによるこの予測はプラスチック業界の専門家180人以上とのインタビューに基づいています。そこに書かれている数字はなかなかショッキングです。例えば...
「生産される全てのプラスチックのうち32%は回収されずに川や湖、海へと流出する」
「1度でもリサイクル回収されるプラスチックは全体のうちたった14%」
イタタタ...
でもプラスチックゴミが海に流れ出てて汚染がヤバイという話はもう長年語られてきたわけです。それでも世界のプラスチック生産量は増加する一方で、特に回収システムが機能していない新興国ではプラスチックごみがどんどんと海に放出されています。
レポートの一部を読んでみましょう。
毎年少なくとも800万トンのプラスチックが海に流出しています。これはごみ収集車1台分を毎分海に放り込んでいるのと同じ量です。もし何も対策が取られなければ、2030年までに毎分1台から毎分2台へと、2050年までに毎分4台へと増加することが予想されます。信頼できるリサーチによると、現在海には1億5000万トンのプラスチックが存在しているとされています。今まで通りの状況が続くのであれば、2025年までに3トンの魚に対して1トンのプラスチックが存在する計算になり、2050年までには魚よりもプラスチックの方が多くなります(重量計算)。
うーん...「じゃあどうすればいいんだよぉぉぉぉぉ!」って誰かにさじを投げつけたくなる絶望感ですよね。でもちょっと待ってください。
この計算、実は結構マイルドなんです。というのもこの予測は海にいる魚の量が減らないという前提に基づいているからなんですね。
ここでダブルパンチをかましてくるのが先ほどの2つ目の研究結果です。ブリティッシュコロンビア大学のDaniel PaulyさんとDirk ZellerさんがNature Communicationsに発表したところによると、世界中で漁獲量というのは長年、実際よりも少なく報告されてきたそうです。なんと世界の実際の漁獲の半分以上が漁獲量としてカウントされていない可能性があるとのこと!
公式データ(reported)と再構築された漁獲データ(reconstructed)の差を示すグラフ
なんでこんなことが起きてるのでしょうか。国連食糧農業機関(FAO)は海洋漁業に関する統計データを毎年集めていますが、そのデータは加盟国から送られた公式のデータに基づいています。しかし多くの国は小規模のものや自給のための漁業はデータに入れていないそうです。大規模な商業漁業に関しても、獲ろうとしてなかったが獲れてしまった別の種類の魚や非合法な漁業に関しては統計に含まれないとのこと。
発表された研究では、実態を知るためデータが不足している部分を科学論文や地元の専門家が提供する数字で埋めていきました。これを「漁獲の再構築(catch reconstruction)」と呼んでいます。その結果、公式に発表されているデータは極めて不正確だとわかりました。
国連食糧農業機関(FAO)によって集められたデータによると世界での海洋漁獲量は1996年には8600万トンまで増えたあと、そこから減少しているとなっています。しかし私達は実際は1億3000万トンが本当のピークだったと考えます。
FAOの発表する漁獲量って実際よりもすっごく少ないよ、ってことですね...。
...まだ読んでます? 気が重くなる発表ばかりですが、PaulyさんとZellerさんの調査の結果わかったことには良いものもありました。国連食糧農業機関(FAO)のデータでは毎年海での漁獲量は38万トンずつ減ってきているとされていますが、彼らの調査では実際は毎年120万トンのペースで減少していると考えられるそうです。ただこの傾向が続くかどうかはわかりません。
プラスチックの生産が増え、海の中のプラスチックが増え、プラスチック生産が石油消費に占める割合が増え、プラスチックの二酸化炭素排出要因における割合が増えることを示しています(出典:World Economic Forum)
また、1つ目の研究を発表したJackie Savitzさんは次のように言っています。
大きく印象に残っていることの1つは、私達がより良い選択ができる機会を与えた場合、人々はそちらを選ぶということです。
昔はプラスチックのリサイクルというと埋立地の処理場に車でわざわざ行かないといけなかったですが、今では全ての家にリサイクル用のコンテナが設置されている地域も増えてきました。より良い選択を与えたら、人々はそれを選ぶ。それを目にしたJackieさんは、希望を持っているようです。
少なくとも先進国においてはプラスチックのリサイクル・システムは普及しつつありますし、業界のスタンダードも改善されていっています。大規模な商業漁船では徐々に「持続可能な漁獲量」を測定するテクノロジーが導入されてきています。そういった対策をしている地域では見事に魚の量は回復しているそうです。ではどういった地域が対策をしないといけないか?
世界の総漁獲量のうち約90%はたった30カ国によって占められているそうです。Jackieさんは次のように述べています。
その30カ国で、持続可能な良識ある政策ができれば、私達は多くの漁場を回復することができます。
30カ国、もちろん日本も含まれてます。
Top image via Shutterstock
source: Nature Communications | World Economic Forum
Maddie Stone - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)