社員を自殺に追い込んだ場合の策を指南する社労士や、成年後見人となって高齢者の虎の子を吸い上げる弁護士、大手を振って脱税指南する税理士など、モラルや法律の一線を軽々と越えて振る舞う「ブラック士業」が増えている。
「社員をうつ病にさせる方法」というブログ記事を書いた社労士が典型的だが、「あれは過激に書きすぎた感じですが、方向性自体はブラック社労士の典型といえるものです」とブラック企業問題に長らく取り組んでいるNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は語る。
企業に違法な入れ知恵をするブラック社労士は、社労士試験の合格者が増加した’00年前後から見られるようになったそうだ。
「企業の保険業務を担う社労士はすでにベテランでいっぱいなので、新しい人は開拓分野といえる労使紛争アドバイスのほうに流れていきました。もちろん真面目な人が大半ですが、そこに手段を選ばないブラックな人材も紛れ込んでいるんです」
それがここ数年で急増した。
「最近は、労働基準監督署が会社に来るとなったとき、『応じる必要がない』という違法な主張をしない社労士は見かけないくらいですよ(苦笑)」
では、彼らはどんな手口で稼いでいるのだろう。
「彼らは企業から顧問料を受け取れさえすればいいんです。労使間で問題が起きて自分の出番が生まれればいい。だから、『残業代なんか払わなくていい』みたいなあからさまに違法なことも平気で言うわけです」
そこで従業員が手を引けば社長に感謝されて万々歳。裁判になって会社側が負けても顧問料はもらえるから問題ないというわけだ。
「どちらに転んでもオイシイんです。以前、労使紛争の話し合いの場で、相手側の社労士からこっそりと『今回も揉めてくれてありがとう』なんて言われたこともありました」
ただ、そんな無茶なやり方では、企業側と揉めないのだろうか。
「信頼関係が崩れたとしても、彼らはいろんな会社を渡り歩くのを前提で動いているので、そこは気にする必要がないんです。だからこそ、ブログなどで過激なことを書いて経営者に検索されるようにしているわけですから。おかしなことに裁判で負けても『俺の言いたいことを言ってくれてありがとう』と感謝する社長すらいます」
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